73.王都図書館の利用方法
古本屋を後にした俺は図書館の前にまで来ていた。
王都の図書館というだけあってファーストの図書館より大きい。大体倍くらいの大きさか。
例によってそばにもう一つ建物がある。おそらく司書ギルドだろう。
俺はハーメルたちを預けるために、司書ギルドに向かう。
司書ギルドに入り、カウンターにいた職員に声をかけた。
「すいません。預り所を利用したいのですが」
「おや?ここの図書館を利用するのは初めてですか?ここの司書ギルドには預り所は有りませんよ」
な、何!俺は詳しく聞いてみることにした。
「自分はプレイヤーのウイングというんですが、今までファーストの図書館を利用していたんですが、ここでは預り所は無いんですか?」
「ああ、そういうことですか。ここの図書館は王都の中心に近い場所にあります。そのため地価が高く、本に関わるスペース以外に土地を用意することができなかったんです」
……バックストーリーなんだろうがずいぶん世知辛いな。
俺は職員の人に総合ギルドの位置を聞いた。
どうやら、先ほど入ってきた王都の入り口付近にあるらしい。
俺は仕方なく元来た道を引き返すことにした。
総合ギルドに向かった俺は転移の扉を使い、マイルームに転移した。おやつを用意しておき、ハーメルたちに待機してもらうことにした。
王都の総合ギルドはファーストの総合ギルドより大きいのはもちろんだが、もう一つ違いがあった。
クエストの張り紙がかなりきれいに張り付けられていた。どうやらパーティー単位で行くものとレイド・クラン単位で受ける遠征クエストで分けて貼ってあるらしい。
王都周辺では戦闘系のクエストは少ないようだ。しかし、国の中心という事で、各地からの大規模依頼が集まってくるらしい。
今は関係ないので、クエストを素通りして総合ギルドを出る。足早に図書館へ向かう。
早速、図書館を利用したいところだが、先ほどの預り所の件もある。
一度、司書ギルドでルールを確認しておいた方がいいだろう。
司書ギルドに入った俺は先ほど声をかけた職員を見つけた。
「すいません。先ほどは助かりました」
「先ほどの方ですか。どうやら総合ギルドに行けたようですね」
「はい。それでここの図書館を利用するにあたってのルールを確認したいと思いまして」
「わかりました。それでは説明させていただきます」
その後、王都の図書館を利用するにあたっての注意事項を説明してもらう。
ほとんどがファーストの図書館と一緒だが、いくつか違いがあった。
1.ここの司書ギルドに預り所は無い。
2.図書館を利用する時に受付の職員に声をかける事。入場の時に料金を払い、帰るときに返金される。無断で入ろうとした場合は衛兵に連行される。
3.さらに2階の奥にある部屋に入室する際はギルド職員の紹介状が必要になる。
4.奥の部屋については紹介状を持っていない者には教えられない。
違う点は大体このくらいか。
手続きがファーストの時と違うのは、おそらくシークレットクエストの関係だろう。
それと気になるのは奥の部屋についてだ。ギルド職員の紹介状が必要だという事だが、ここで書いてもらえないのだろうか?
俺は説明してくれていた職員に聞いてみたのだが。
「これについては紹介状を書いた職員にも責任が発生してしまうから、信頼関係が無いとなかなか書いてもらえないと思うよ。しばらくは図書館に通って仲良くなるか、司書ギルドからの依頼を受け続ける事だね」
司書ギルドからの依頼?そんな話聞いたことないんだが?
俺が首を傾げたことにギルド職員も首を傾げた。
「おや? ファーストの図書館で説明を受けなかったのかい? 君のランクはEランクなのかな? 確かDランクに上がったときに説明があったはずだが……」
俺はカーナさんからの説明を思い返してみたが、特にそれっぽいことを言っていなかったはずだが……。
そこまで考えてあることを思い出す。確かファーストのギルド職員に夜の図書館を利用する方法を聞いたときだ。
確か夜に図書館に入るのは、管理の名目で入館ができると言っていたはずだ。
そう管理だ!それはつまり、図書館の管理を司書ギルドのメンバーに頼む場合があるという事だ。
……もしかして、カーナさんはその辺も説明し忘れていたのか?
俺は素直に教えてもらっていないことを伝えて、司書ギルドの依頼について説明を受けることにした。
1.
司書ギルドの依頼は総合ギルドに貼られておらず、司書ギルドの職員に聞かないと確認できない。
2.司書ランクがDランクになってからクエストを受けることができるようになる。
3.司書ギルドの職員にクエストを受けることを伝えると一覧を渡されるので、そこから受注することができる。
4.クエストの達成はギルドランク上昇には関係しない。
5.ただし、クエスト達成数はギルドカードに記録されるので職員からの心証が良くなりやすくなったり、特別な依頼をされる場合がある。
司書ギルドのクエストについてはこんな感じらしい。
どうやら読む専門の人と本についての仕事もしたいという人を分けるための処置という事らしい。
俺も読む専門なのだが、奥の部屋に何があるか気になる。
ぼちぼちとクエストを受けながら、ギルド職員とコミュニケーションをとっていこうかな。
今回は図書館に入ることが目的なのでクエストは見送る。
説明してくれた職員にお礼を言った後、司書ギルドを出た。
今度こそ、図書館に入ることができそうだ。




