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読書好きが始めるVRMMO(仮)  作者: 天 トオル
3.第一回イベント
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裏話 運営サイド②



abundant feasibility online  運営日本支部管理センター


「何とか、第一回イベント内ランキングのための集計は終了しました」

「そうか。ではサイトを担当している者にそのデータを渡してくれ」

「わかりました。主任」


若い男は初老の男の指示で先ほどまでまとめていたデータを別の部署に転送した。


「今回のイベントは大体問題なく終了したが、反省点も多かったな」

「そうですね。レベルキャップについてのクレームは想定していましたが、ボスのビジュアルのクレームがなかなか多かったようですね」

「それは今後の参考にするしかないな。やはり宇宙からの侵略者風のモンスターを想定して決めたビジュアルとはいえ、あれは苦手な人もいるか」

「さすがに、エイリアンっぽいビジュアルはそれこそ宇宙に関わるイベントでないと使えないですしね」

「もう一つの案だったノーライフ・キング系のモンスターを出したところで同じようなクレームは避けられなかっただろう」


 初老の男はため息を吐きながら、デスクに座る。


「今後のイベントはもう少し楽しいテーマで組んでもらえるように上に提案しておく」

「お願いします。俺も最初見た時にダメな人いるだろうなと思いましたが、もう一つの案もどっこいどっこいでしたので」


 若い男は初老の男の提案に賛同する。


「それ以外に何かクレームはあったか?」

「あとはこまごまとしたものばかりなので、議題に挙げるほどのものはありません」

「そうか。ランキングやポイントについてはどうだ?」

「取得経験値ランキングで職業司書のプレイヤーが3位に入っています」

「ん? 3位なのか。そこまで読んだなら1位取れていても不思議ではないと思うが?」

「どうやら館に用意した本にすでに読んだものが含まれていたようで、想定した最大取得経験値に届かなかったようです」

「なるほど。どの職業にもランクインのチャンスを与えられるように調整したが、さすがに蔵書全てをイベント専用にするわけにはいかなかったからな」


 初老の男は若い男の答えに納得したようにうなずく。


「司書についてはレベル上げがしんどいとさんざんクレームがありましたからね。救済処置としてイベント中の取得経験値だいぶ上げました」

「自分で選んでおいてその言いがかりは何だと思わなくはないがな」

「仕方ないですよ。パーティーを組んでいる人は読書に時間を取れないんですよ」


若い男はプレイヤー側の意見を言う。


「これで最初の企画書通りだったらと考えると怖いですね」

「最初の予定では3日間読書に全身全霊を注いで、あの書斎全部の本と同じ経験値だったからな。あの書斎の量なら1日かからず読める人もいただろう?」

「実際3位の人は1日かからずくらいで読み切っています。まあ、すでに読んだ本はスルーしてですが」

「全体を見るとイベント中に読み切れなさそうに見えるが、読み始めてみると案外早く終わるよう調整したからな」


 男たちは語らいながら片づけを始める。


「さあ。アップデート担当の奴らに引き継いだら、飲み明かそう。私のおごりだ」

「本当ですか!それじゃあイベント完遂祝いと行きましょう!」


 若い男は張り切りながら入れ替わりに入ってきた人たちに、仕事の引継ぎをするのだった。


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