表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読書好きが始めるVRMMO(仮)  作者: 天 トオル
3.第一回イベント
66/268

62.館攻略への光明

 次はキルナの部屋と反対にある部屋だ。

 扉を開けた俺は思わず目を疑った。

 どうやらここは様々な本が納められた書斎のようだ。

 そう書斎だ!

 これだけの本が読めればこのイベント中、読書だけで終わっても悔いは無いな。

 というか、ここで読めないと永遠に読めない可能性もある。

 今はラピスさんたちがいるのでじっくり読めないのが惜しいが、今度は一人でここに来ようと固く誓う。


「お兄ちゃん、わかっているとは思うけど……」

「大丈夫だ。さすがに他の人には迷惑をかけるわけにはいかないからな」

「ここの書斎はあまりに蔵書が多い為、少し調べてすぐ退散したパーティーがほとんどです。調べるにしても後回しにしましょう」


 ラピスさんの提案に皆、同意するが、俺は違う意見だった。

 これだけの蔵書を用意しておいて無意味なんてことはないだろう。

 ラピスさんの話では少し調べたと言っていたので、本の内容もしっかり書いてあったんだと思われる。

 それなら、どれかしらこの館の攻略に役立つ情報が書いてある本があるのではないかと思う。

 ただ、調べるのに時間がかかるのも間違いない。

 俺もできれば、速読術を使わずにゆっくり読書したい。

 そこまで考えた俺はあることをひらめく。


「すまないが、ここを調べさせてもらえないだろうか?」

「お兄ちゃん……。さっきも言ったけど時間がかかりすぎるよ。それに調査に託けて読書したいだけじゃない?」

「読書したいのは認めるが、今回は読書に時間を割けないのもわかっている。だが、秘策がある」

「秘策?」


 ドンハールさんが聞いてきたので実際やって見せながら説明することにした。

 俺は本棚に近づいて1冊の背表紙に触れる。

 その状態でメニューからログ画面を開く。

 そして絶対使う事は無いと思っていたアーツを発動する。


「速読!」


 すると本がわずかに輝く。

 ハルたちも固唾をのんで見守る中、光が収まる。

 俺はすかさずログを確認する。

 ログには読書スキルの熟練度が上がったことが追加されていた。

 狙い通りの結果に思わずほくそ笑む。


 俺が考えたのはログと速読を応用した検索だ。

 ログには得た経験値や熟練度の記録が残るのは溝掃除の時に確認済みだ。

 未習得のスキルの習得度は記録として残らないが今回に関しては問題ない。

 俺が探しているのはこの館の情報だ。

 この館はダンジョンとなっている。

 つまりこの館の情報が書かれた本を速読で読み解けば、迷宮知識スキルの熟練度が上がるはずなのだ。

 そうすればこの館の攻略法もわかるかもしれないというわけだ。

 俺がこのことを説明すると皆驚きながらも、実行の許可をくれた。

 そしてポーションでMPを回復しながら本の検索をかけていく。


 ……………………。


 しばらく速読による検索をしているがいまだ、お目当ての本は見つけられていない。

 イベント効果か、速読で得た経験値で司書と読書スキルのレベルはいくつか上がった。

 他のメンバーには違う部屋の捜索をしてもらっている。

 そろそろこの書斎にある本の半分を調べ終わろうというときにようやく迷宮知識スキルの熟練度が上がった。


 俺はその本を取り出し、内容を確認する。

 どうやらこの館を建てている時の様子を記録した本のようだ。

 そしてパラパラとページを捲っていると、建設途中ではあるが見取り図のようなものが出てきた。

 その見取り図を見た俺は慌てて全員を呼び戻す。

全員近くの部屋を捜索していたらしくすぐに戻ってきた。


「お兄ちゃん! この館の攻略法がわかったかもしれないって本当!」

「わかったというか、もしかしたら俺たちは間違えていたのかもしれないという事だ」

「ん? どういうことだ?」

「これを見てほしい」


 俺は先ほど見つけた見取り図のあるページを見せる。

 この見取り図は建設途中、しかも2階をくみ上げる前のものだ。

 俺がこれを見つけて慌てたのには理由があった。


「ここおかしくないか?」

「え。どこどこ?」

「私もピンときませんが」


 俺が差したのは階段の部分。

 他のメンバーが首を傾げる中、ドンハールさんが気づく。


「なるほど! そういう事か!」

「どうゆう事ですか? ドンさん」

「ラピス! この階段は間違いなく俺たちが上がってきた階段だよな!」

「はい。そうですね」

「そして階段まで一直線で進んできたわけだがおかしくないか?」

「そうですね……。少し階段辺りの空間が広いように感じます」

「そうだ。これはおそらくダンジョンになる前の見取り図だ。つまり罠のためのスペースではない。では何のスペースだ?」

「あっ」


 そう俺が見つけた見取り図には階段辺りのスペースが大きめに取られていたのに対し、今の館はそれほど大きくない階段が上へ伸びているだけだ。

 ダンジョンになった影響か、はたまた建てた時の目的か、もう一つの階段は隠されてしまっている状態なのだろう。


「つまり、地下がある可能性があるってことだね、お兄ちゃん」

「そういう事ですか。つまり2階はダミーで本命は地下の可能性が高いわけですね」

「そうだ。どうやって行くかは謎だが、この建物には地下がある可能性が高い。この資料には書いてないようだが、もう少し探してみれば何かわかるかもしれない。すこし待っててくれないか?」


俺の提案に全員が頷くのだった。


 ……………………。


 皆からポーションを譲り受け、引き続き書斎の調査を続ける。

 そしていくつか迷宮知識のレベルを上げる本を見つける。

 その本をハルたちに預け調べてもらう。

 俺はまた本棚に向かい検索を再開する。

 しばらく続けていると、とうとう書斎の本を全て調べ終わった。

 俺はハルたちとともに先ほど検索に引っかかった資料から情報を洗い出す。

 そしてあることを突き止める。


 どうやら構造的にあのキルナの部屋の下にこの階段はあるようだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ