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読書好きが始めるVRMMO(仮)  作者: 天 トオル
3.第一回イベント
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56.砂浜の建造物

≪従魔ハーメルがレベルアップしました。≫

≪従魔ヌエがレベルアップしました。≫

≪従魔エラゼムがレベルアップしました。≫

≪テイマーのレベルが上がりました。≫

≪熟練度が一定に達したため、スキル「杖術」がレベルアップしました。≫

≪熟練度が一定に達したため、スキル「盾術」がレベルアップしました。≫

≪従魔ハーメルの練度が一定に達したため、スキル「泥術」がレベルアップしました。≫

≪従魔エラゼムの練度が一定に達したため、スキル「斧術」がレベルアップしました。≫


 戦闘を繰り返しながら海岸線沿いを、かなりの時間進んでいる。

 進むにつれて徐々にではあるがモンスターが強くなっている気がする。

 それに最初の砂浜にいたシー・ハウスはいなくなり、海からの攻撃が増えてきた。

 どうやら同じエリアでも場所に応じてモンスターの強さが違うようだ。

 今のところ引き返すほど強くなってはいないのでそのまま進む。


 イベントの開始時は太陽が真上にあったが、今は夕焼けになるかならないくらいの位置にあるので、そろそろ仮拠点になりそうな場所を探していかないといけない。

 もう少し進んでみていいところが無ければ、引き返すことも考えた方がいいかもしれない。

 だいぶドロップ品も集まってきたことだし、一度休憩したい。


 砂浜で戦闘を繰り返していると視界の端に建造物のようなものが見えた。

 ここは無人島の設定では?

 俺は疑問に思いながらもまず戦闘を終わらせるのが先だと思い、戦闘に集中する。

 

 戦闘を終わらせた俺は先ほど気になった建造物に近づいていく。

 近づいてみると、どうやらボロボロに朽ち果てた小屋のような建物の残骸のようだ。

 屋根は朽ち落ち、壁もバラバラに崩れている。

 ギリギリ部品の形状から小屋のような物であるとわかる程度のありさまだった。

 どうやら現在は無人島のようだが、昔は人がいたのかもしれない。

 何か特別なアイテムがありそうな予感がするので少し探索してみることにした。


 歩くたびに床が抜けていくのでかなり足元には注意が必要だ。

 エラゼムと協力して崩れ落ちている壁や天井をどかしながら辺りを捜索していく。

 かなり木材が痛んでいて廃材をどかすのも一苦労だ。

 だいぶ時間がかかるようなので、最悪この辺りで一夜を過ごすことになるかもしれない。


 しばらく撤去作業を続けていると一部壊れてはいるが本棚のようなものを見つける。

 逸る気持ちを抑えて慎重に本棚をどかしていく。

 すると本棚の下にバラバラになった紙や書類の束があった。

 かなり傷んでいてダメになっている物ばかりだが、一番下にあった資料はどうやら他の書類に守られて、かろうじて読める状態だった。


 俺は一度小屋を出てハーメルたちにエサを与えつつ、先ほどの書類にシークレットクエストの報酬で手に入れたアーツ復元を使用する。

戦闘で消費したMPは初級MPポーション1つで回復できる程なので回復しておく。

 どうやらこのアーツ復元は最低限、本の形を保ってないと復元の対象にできないらしい。

 今回見つけたものの中で復元が使用できたものはこの1冊だけだった。

 久しぶりの急激な虚脱感とともに手元にある書類が輝きだす。

 光が収まるとともに現れたのは紙の束をひもで綴じた簡単な日誌のようだ。

 俺は内容を確認してみる。




 ○月××日


 今日は雲一つない晴天だ。御館様が来るには絶好の航海日和だろう。

 屋敷の住人達もご家族が快適に過ごせるように庭の整備や部屋の掃除に大忙しだ。

 普段の屋敷の管理を任されているものとしてしっかり迎えられるようにしなければ。

 

 ○月×○日


 昨日より御館様一家がこの島にある別荘にて休暇を過ごしている。

 娘のキルナ様が連れてきたペットとともに砂浜で遊んでいる姿が微笑ましい。

 他の方々も思い思いに羽を伸ばしておられるようだ。

 

 

 その後、しばらくは位の高そうな家族の和やかな休暇内容や、日々の業務についての話が続いている。

 どうやらこの小屋は船の停泊するときに使用する道具をしまっておく小屋のようだった。

 この日誌はこの小屋や船の整備を任された人物の日誌か日記の類のようである。

 どんどん読み進めていくとある日から不穏な空気が流れ始めてくる。

 

 ○月○×日


 最近、キルナ様のペットの体調がすぐれないようで別荘の方で休ませているようだ。

 キルナ様の不安そうな顔を拝見する度に胸が締め付けられるような思いだ。

 館の人々もペットが早く元気になるように祈っている。


 ○月○○日

 

 どうやらキルナ様のペットだけでなくこの島にいる生物が徐々に弱ってきているようだ。

 鑑定スキルを持っている奴に弱ったペットを確認してもらったが、疫病の類ではないらしい。

 別荘の人々も徐々に不安に襲われているようだ。


 ○月○△日


 いよいよ使用人の中でも体調を崩す者が現れ始めた。

 ここまで来るともはや休暇だのと言ってられなくなったようで、御館様たちは一度領地に戻ることにしたそうだ。

 それと同時に私たちもこの島を出られるように手配してくれるとのことだ。

 ずっと暮らしてきた島だがこうなっては仕方がない。


○月△×日


 御館様方が島を離れる日になったが一つ問題が発生した。

 キルナ様のペットが行方不明になったのだ。

 まだ元気な使用人一同で探したが、捜索していた一人が体調不良になったことで御館様が捜索を打ち切った。

 我々の身を案じてくださったのはとてもうれしく思うが、キルナ様の泣きそうな顔を見るととても申し訳なくなる。

 この探索が打ち切られたところで御館様たちはこの島を離れていった。


△月×日


 いよいよ私たちもこの島を離れる日がやってきた。

 御館様達が帰っていった後も有志により捜索は続けられたがもう限界のようだ。

 無念ではあるがもはや我々が暮らしてきた島の面影はなく、何やら森の奥からうなり声のようなものまで聞こえてきた。

 さすがに命は惜しいので我々はこの島を出ていくことにした。

 


 日誌の部分はこの辺りで終わっているが最後のページに、この日誌の持ち主と思われる人物からのメッセージが綴られていた。



 この日誌とともにキルナ様から受け取っていたペンダントを小屋に置いていくことにした、もしこの島に来てこの日誌を見つけた人がいたならこのペンダントをキルナ様のペットに届けてはくれまいか。

 キルナ様とペットとの思い出の品らしい。

 何も渡せるものは無いがどうかこの願いを聞き届けてほしい。


                           舟守  ケルト


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