48.最終目的地?
話の流れが読みやすいからか感想で先回りされてしまうことがある今日この頃
いつの間にか日・週のランキングで1位をいただいていました。
みなさんには本当に感謝です。
≪司書の目録(中)の記録が一定まで達しました。司書ギルドに提出してください。≫
ギルドカード
司書ギルド C
ファーストに舞い戻ってまた読書の日々だ。お金は結構溜まっているのでそこまで急ぐほどではない。
一応イベント前には初級ダンジョンをクリアするつもりなのでまたしばらくしたら戻るつもりだ。
今、伝記エリアをほとんど読み終わったところだが気になる話が出てきた。
どうやらこのゲーム内のどこかに大図書館を擁する知識の国なるものが存在するようなのだ。
司書ギルドの本部もそこにあり、世界中のありとあらゆる本がそこに集まってくるらしい。
ここの図書館も大きいが本の割合は圧倒的に技能本が多い。全ての本が集まるというならあまり偏りは無いはずなのでじっくり読んでみたいところだ。
どれくらい先の話になるかわからないが、ここにたどり着くことは俺の中では決定事項だ。
確実にクローレンのような人物のメッセージがあるはずだ。
俺はカーナさんにこの知識の国へ行くにはどうすればいいか聞いてみた。
「カーナさん。知識の国にはどうやって行けばいいのでしょうか?」
「先に言っておきますが、知識の国の大図書館が目的でしたら、最低でも司書ギルドAランクがなければ入れませんよ。その手前の模写した本を置いてある、ここと同じくらいの図書館には入れますが。ちなみにAランクになるには、今あなたが持っている司書の目録(中)をもう一度更新して上級を手に入れ、満杯まで埋める必要があります」
ラビンスの資料室とここの伝記をほとんど読破してようやく3分の2まで来た目録のさらに上を満杯にする、か。読書自体は苦ではないがいつになるかは想像もできないな。
実はこの目録、シリーズ物は一つの作品としてまとめられてしまうのだ。
1,2,3となっている本はもちろんのこと、技能本の初、中、上も同じ作品扱いになってしまうため、此処の図書館では思ったより目録が埋まらないのだ。技能本の方は水魔法を覚えようとしたときに知った。
「知識の国へは、一応本を安全に持っていくためのルートも存在しますが、このルートについては司書ギルドでも一部の者以外は知りません。一般の人が向かうためには戦闘ギルドのランク、もしくはダンジョンランクがBランクは最低でも必要だと思います。もちろんフルパーティーでですよ」
な、なんだと。現在俺のテイマーギルドはE、ダンジョンランクに至ってはFだぞ。
カーナさんの話だと別にそのランクが必要というわけでは無いが、それくらいの強さがないとそこにたどり着けないという事か。
……今のままでは一生たどり着けないぞ。もう少しゲームに力を入れないとダメか?
だが、まだ見ぬ本のために読書をおろそかにするとまた禁断症状が出そうだ。
どちらにしろ今はイベントが迫っているからこれ以上の予定を変更することはできない。
それに旅の道中で新たな本を見つけていけば司書ランクがAに上がり、安全なルートを教えてもらえるかもしれない。
俺がそんなことを考えていると。
「どのギルドもそうですが、Aランクへの昇格は本部でないとやってもらえませんよ?支部にそこまでの権限は与えられませんから」
俺は考えを見透かしたかのようなカーナさんのセリフに絶望するのだった。
カーナさんと別れて図書館に戻った俺は今後の予定を考える。
このペースでここの本を読んでいってしまうと読破してしばらく本が読めない時間が続いてしまうかもしれない。
強さにこだわりは無いが、目的地にたどり着くまでお預け状態が続いてしまうとゲームをやめてしまうかもしれない。うまいペース配分が必要だ。
ただ、何日もダンジョン攻略に力を入れすぎると今回みたいにログイン時間いっぱいまで読書してないと気が済まなくなる。それでは先に読破の方が早く終わってしまうだろう。
……少しお金はかかるが1回のログインごとに馬車で移動するか。
本当はラビンスの方に図書館があればよかったのだが、司書ギルドの支部しかなかった。
その支部もモンスターやダンジョンの情報をまとめた本を、この図書館に送るためだけにあるような場所だった。
伝記エリアを制覇したことでだいぶ欲求不満も解消されたので、またダンジョン攻略に向かうとしよう。
このゲームを続けていく上での大きな目標も決まったことだし、何とかそこにたどり着けるようにしないとな。
気持ちを新たに初級ダンジョン攻略準備の為、商店街で買い物に向かうのだった。
消耗品の買い出しをしていると、遠目にシートに本や巻物を並べている人を見つけた。
……初めて本が売られているのを見た気がした。慌てて向かう。
俺が露店の前まで来ると店主が語り掛けてきた。
「おう、どうだい兄ちゃん。作家の卵が書いた本たちだよ。まだまだつたない練習品だがもしかしたらこの中から大文豪が誕生するかもしれないよ」
店主に了承を得ていくつか手に取ってみる。
そうするとなんで今までこの露店がなかったか何となくわかった。
本を手に取ったときに著者の名前の上にもう一つ名前が出てくる。
どうやら財団のバックアップを受けている新人作家さんの新作であるようだ。
図書館で読んでいたものと重複している物もあったので新作の方を買っていく。
消耗品以外に買いものをしていなかったおかげで何とか全部買うことができた。
「毎度ありーー! またのご利用を待ってるぞ」
店主に代金を払い露店を出る。また金策に走らねば消耗品と馬車の料金も考えるとギリギリだ。
しばらく歩いていてふと思い出す。珍しい本は司書ギルドに提出する必要があるとあったはず。
できれば手放したくないが、司書ギルドを除名されるのも困る。
俺はしぶしぶ司書ギルドに向かい報告してみる。
「すいません。この図書館で見なかった本があったのですが確認してください」
「わかりました。このトレーの上にのせてください」
持っていかれる本を悲しい目で追っているとそれに気づいた職員が声をかけてくる。
「あの本を自分で持っていたいというのであれば可能ではあります。その代わり料金の支払いはありません。それにその場合、写本されて図書館に並ぶことになるのであなたにとっては損になってしまいますが」
それでもいい。ラビンスに図書館が無い以上、あれは俺のオアシスになるはずだ。
俺がそう伝えると、職員はトレーを持って行った人に声をかけていた。
しばらくすると、職員が戻ってくる。
「確認しました。何冊かは先に報告がありましたので既に寄贈してありましたが、未報告の本もありましたので写本しておきます。本は自分で所持していたいとのことだったので原本は返却させていただきます」
寄贈されているものがあったという事だが、俺がいなかった間にNPCが報告でもしたんだろうか?
何はともあれこれで準備万端だ。
知識の国に向かえるようにまずは初級ダンジョンの攻略だ。




