43.再会と選んだスキル
顔を上げると前に俺に質問してきたプレイヤーのコロがいた。
「いや、今初めて初級ダンジョンに挑戦したところなんだが、結構難しいんだな」
「ああーー、やっぱそうですよね。初級と言いながらかなり難しい設定になっていますよね」
「何とか2階層の転送陣で戻ってこられたが、危なかったよ」
「初めてで2階層走破はなかなかだと思いますよ。初めの頃なんて2階層までたどり着けないことも多かったらしいですからね」
確かに1階層から砂漠などの条件が厳しいフロアが来たらいきなり全滅もあるかもな。
「お金がなかったから準備もままならなかった状態で入っていったからな」
「なるほど、それは難しいでしょうね」
俺とコロがしゃべっているとこちらに近づいてくる人影があった。
「オーイ。清算終わったから武器を買いに行こうぜ」
近づいてきながら声をかけてきたのは端的に言えば燃えている人だった。おそらく火人だ。
以前コロが言っていたうまくプレイできていなかったプレイヤーだろう。
「あっ、ネンちゃん!」
「うん? 誰と話しているんだ?会ったことないよな?」
「うん。以前に種族特性について教えてもらった人だよ!」
「そうなのか! そのことについては礼を言いたかったんだ!ありがとう!」
そう言って頭を下げてきた。
「気にするな。こっちもたまたま知っていただけだ」
「いえいえ、たまたまだったとしてもそれで助かったので礼を言わせてください」
そこまで言われたら仕方ない。
「それなら今度はこっちが聞きたいことがあるのだがいいか?」
「はい。僕たちが答えられることならば」
俺が聞きたいのはモンスターからドロップしたアイテムの売却と武具・防具をどこで買えばいいかだ。
やはり準備不足は否めない。
できるだけ金銭を稼ぐのとダナンディーさんに教えてもらう武術スキルのために装備も購入したい。
「そうですねー。初級ダンジョンのドロップ品については総合ギルドのカウンターに売却したほうが高く買い取ってくれますよ。装備も金銭に余裕がなければNPCのお店で売っている量産品とかから買った方がいいかもしれません」
「そうだな。他のダンジョンのドロップ品ならプレイヤーに売る方が高いことが多いが、初級ダンジョンのドロップ品だと買いたたかれるからな。カウンターで売却すれば定価で買い取ってくれるからいいと思う」
なるほど、最終的に誰でも攻略できるようになっているだろう初級ダンジョンのドロップ品を買ってもプレイヤーにうまみは少ないだろう。
「初級ダンジョンのドロップ品の売却したお金だとプレイヤーメイドの装備を買うのは難しいかもしれないから、とりあえずNPCが売っているものを買っていく方がいいと思います。少しずつグレードを上げていって初級ダンジョンのクリアを目指した方がいいと思います」
ふむ、コロたちの言うニュアンスだとプレイヤーメイドの装備は初級ダンジョンの素材を使っていないから高いと。
だから初級ダンジョンの攻略が終わるまではNPCの売っている装備で進めた方がいいという事か。
この感じだと順調にレベルアップしていけばNPC装備でも攻略は可能という事だろう。
「わかった。確かに金銭の余裕がないから高い装備は買えないし、参考にさせてもらうよ」
「参考になったのなら幸いです。それでは僕たちはこれで」
「種族特性の件は本当に助かった。ありがとう。それと俺ともフレンド登録をしてほしい」
ネンとフレンド登録した俺は2人と別れて総合ギルドに戻ることにした。
カウンターに向かい、ドロップ品を売却する。
迷路や砂漠でそれなりに戦闘したのでそこそこドロップ品がある。
「すいません。ダンジョンで手に入れたドロップ品の売却に来ました」
「そうですか。それでしたらアイテムボックスより売却するアイテムの種類と数を選択してください」
俺は初級ダンジョンで手に入れたドロップ品をすべて売却する。
生産用のスキルが料理しかないので使えるものがない。
それなら今後のための資金にした方がいいだろう。
選択を終えると≪売却しますか?≫と出たのでYESを押す。
≪アイテムを売却しました。5200ラーンをお受け取りください。≫
5200ラーン +5200
な、なんか高くないか?Fランククエストの何回分なんだろうか。
受け取ってから詳細を確認する。
どうやらモンスターのドロップ品は最低100ラーンで買い取ってくれるようだ。
そして何回か集団を相手にしたことで数があったため、この金額なようだ。
……Fランクって本当にお手伝いレベルなんだな。
というか町中クエストだとモンスターのドロップ品がないから手に入るお金が少ないという事か。
これなら何とか目当ての装備を買えそうだ。
総合ギルドを後にして商店街に向かうのだった。
商店街に向かうと様々なものが売っていた。
プレイヤーが混じっているからかファーストほど統一感は無い。
どうやら露店はシートを敷いたところに商品を置いているスタイルのようだ。
泥棒しようものならすぐに頭上に称号が出るのでできるスタイルだろう。
俺が露店を物色していると目当てのものを見つけた。
店主と話してみるとどうやらNPCのようなので値段を確認すると、無理せず買えそうなので購入する。
3200ラーン -2000
これでダナンディーさんにスキルを教えてもらえそうだ。
俺は総合ギルドに引き返すのだった。
総合ギルドに着いた俺はギルド職員に声をかけてダナンディーさんを呼び出してもらう。
しばらく待っているとカウンターの裏からダナンディーさんが出てくる。
「やあ、どうやら何のスキルを習得するか決まったようだね。それじゃあ、修練場に行こうか」
地下に降りた俺はダナンディーさんに向かい合う。
「俺が覚えたいスキルはこれです」
そう言って先ほど露店で購入した物を見せる。
銅の丸盾 何の変哲もない銅でできた丸い盾。
耐久値 500
耐久力 +8
重量 1
2000ラーン
「ほう。どうして盾なんだい?」
そう、俺が覚えたいのは盾術だ。
迷宮での戦闘で感じたが俺は近接戦闘のセンスは無い。
確かに鞭は難しいがそれでもとっさの判断が要求される場面でも考え込んでしまうのは問題だろう。
そんなやつが剣や槍による戦闘は難しいだろう。
それにずっと前衛をやるつもりのない俺が武器のスキルを持ってても、最後は不使用スキル行きになるのは目に見えている。
それなら後衛でも身を守ることに使えるし、先ほどの場面では間に割って入るだけでいい盾が1番いいと判断したのだ。
俺がそう説明すると、ダナンディーさんは頷き。
「わかった。それじゃあ、初心者コースの訓練を始めようか」
そう言って腰に差した剣を抜くのだった。




