40.初級ダンジョンの下調べ
短めです
「よし、お前の名前はエラゼムだ」
「……」
リビングアーマーは了承したように跪く。
NAME「エラゼム」 NEW ウイングの従魔
種族「リビングアーマー」LV3
どこかの国にある、有名なお城にいる騎士の幽霊の名前が由来だ。
エラゼムが立ち上がるのを確認してからキレーファに向き直る。
キレーファもこちらが終わるのを確認して。
「これで手続きは終了になるわ。あなたは大丈夫だと思うけど、簡単に捨てるような真似をしたら承知しないわ」
「わかってる。問題ない」
テイマーギルドを出た俺は今後の予定を考える。
1.ダナンディーさんに教えてもらうスキルを決める。
2.一文無しなのでお金を稼ぐ。
3.エラゼム達、従魔との連携をどうするか考える。
この辺が今やらなければならないことだろう。
それならばまずやらなければならないことがあるな。
そう思い、俺は総合ギルドに向かうのだった。
今、俺は総合ギルドの資料室で読書している。
ラビンスの総合ギルドにも当然、資料室はあるが内容が違う。
ファーストの総合ギルドは初歩的な内容全般を取り扱っていたのに対して、ラビンスの資料室はダンジョンやモンスターの資料が中心のようだ。
ただ、今回はファーストの時みたいな読書そのものを目的にしているのではない。
今後の予定を決めるためにもまずは情報収集が大事だろう。
初級ダンジョンとは言え戦闘そのものが初めてと言っていい俺たちでは、いくら準備していても足りないかもしれない。
幸い、食料は従魔たちの分も含めて買いだめしていたので、すぐに必要になることは無いだろう。
ちなみに今の従魔たちの様子はハーメルが爆睡。
ヌエはいつも通り羽繕い。エラゼムはただ鎮座したままだった。
≪熟練度が一定に達したため、スキル「魔物知識」がレベルアップしました。≫
≪熟練度が一定に達したため、従魔ハーメルのスキル「睡眠」がレベルアップしました。≫
よし、大体初級ダンジョンの大まかなルールとモンスターの傾向はわかったかな。
初級ダンジョンの特徴をまとめるとこんな感じだ。
1.初級ダンジョンは1パーティーごとに参加でき、中で他のパーティーと会うことは無い。
2.全体で10階層からできており、フロアのどこかに下へと下る階段がある。
3.環境はフロアごとに様変わりしている。
4.モンスターの強さは階層が下であるほど強い。
5.5階に中ボスモンスターがおり、倒すことで下に降りることができる。
6.10階のボスモンスターを倒すと宝箱と共にダンジョンの入り口に戻れる魔法陣が現れる。
7.下のフロアに下りる階段のそばにリタイア用の転送陣があり、そこを使えば入り口に戻れる。
8.リタイアした場合30分は同じダンジョンに入れない。
大体こんな感じか。フロアの環境や下のフロアに降りる階段の位置はある程度法則はあるが、基本ランダムのようだ。
世界観のバックグラウンドとしては、世界の歪として各地に点在していたダンジョンを、創造神インフがこのラビンスに集約して人々に管理させるようにしたとか。ただし、ここにあるのはCランクのダンジョンまでで、それ以上のダンジョンは移動できなかったため各地に点在しているとのこと。
ただ、これを読む限りでは春花やコロが言っていたほど苦戦するようなものではないと思うんだが。
明日、春花にでも聞いてみるか。
さて、ダナンディーさんにスキルを教えてもらうのはもう少し先になるかもな。
本当は欲しいスキルがあったのだが、なにせ一文無しだから装備を買えない。
それに一度戦ってみないと本当にそのスキルでいいのかわからないだろう。
だいぶ時間が経過していたので、ここまでで今日は終わりにするとしようかな。
次の日の朝、ご飯を食べながら春花に昨日気になったことを聞いてみる。
「昨日、ラビンスの資料室で初級ダンジョンについて調べていたんだが、春花が言っていたほど難しくなさそうなんだが?」
「そのことかー、意外と答えは簡単だよ。お兄ちゃん。要するに種族特性と同じ理由だよ!」
「うん? どういうことだ?」
「つまり事前に調べることを怠ってトライ&エラー戦法をとっていたんだよ。だから必要以上に時間がかかってたみたい。今は種族特性の件もあってちゃんと調べてからダンジョンに挑むようになったんだよ。今までほどつっかえてるところはないんじゃないかな?」
なるほど、確かに俺が話を聞いた時点では総合ギルドに資料室があることは広まっていなかった。
そこに俺がコロに伝えた種族特性の情報から、迷宮都市の総合ギルドにも資料室があると考えるやつがいて当然だ。
「迷宮都市の総合ギルドに初級ダンジョンの資料があるって分かってからはトントン拍子でクリアまで行けるようになったよ。まぁ、それまで幅を利かせていた人たちは見なくなったけど」
当然だろう。今まで優位に立ってたから威張れていたが、実際はそれほど大きな差はなかったのだ。
そこに初級ダンジョンの攻略は簡単だった。という情報が流れて、実際簡単にできるようになった。
威張りたかっただけの奴らは今までの行いのせいで表舞台に立ちづらくなっただろう。
「お兄ちゃんはちゃんと調べてから行くみたいだから、そこまで立ち止まらずに行けるんじゃない?」
「いや、そうでもないぞ。今までまともに戦闘らしい戦闘はしていないからな。やってみないとわからない」
本来は迷宮都市ラビンスにつく前に何回か戦闘できるタイミングがあったはずなのだが結局、初級ダンジョンに入るまで一度も経験しないまま挑むことになる。
まぁ、資料室で調べた限りではそこまで難しくないだろうが、油断はせずに行きたい。




