25.委員長のお願い
修正しました。
ログアウトした俺は、一足先にログアウトしていた妹とともに夕食の準備。
「お兄ちゃんのほうはどうだった? やっぱりというかプレイヤーの大移動があったみたいだけど」
「そのことなんだが、…………(中略…………
な感じでとりあえず事なきを得た感じだな」
「そうなんだ。何とかなったならいいけど、あんまり無理はしないでよね! ゲームをやるのも初めてなんだから」
そんな会話をしながら夕食の準備を終える。
「お兄ちゃんはこの後ログインするの?」
「どうするかな」
この食事の後にログインしてもすぐには図書館を利用できない。
利用時間になるまでやったら、明日の朝がつらい。
今日は少し買い溜めしておいた本を少し読み進めたらそのまま寝るとしよう。
「俺は今日はもうログインはしないよ。お前もあまり夜更かししないで明日に備えておけよ」
「いやなことは後回しだよ。お兄ちゃん!とりあえず、明日は帰りが少―――――し遅くなるかもしれないから先に帰ったら洗濯物ほしておいてね!」
春花は冷や汗を流しながらそんなことを言う。どうやら明日のテスト返却される教科に苦手科目があるようだ。……テスト勉強を見たときは何とか大丈夫かと思ったが少しまずいらしい。ヤマを張っていたが外したところでもあったのだろう。
「俺が勉強を見てやったんだから赤点とったらわかってるよな」
「お、お兄ちゃんの鬼―――――――――――!」
次の日、またテスト返却だけの日程で授業が続く。
今日も何事もなく終わるかと思われたがそうでもないらしい。
1限目のテスト返却が終わった後の休憩時間、我らが委員長 冨士崎 凜香が声をかけてきた。
「少しいいかしら?少し込み入った事情があるの。放課後の図書館で待ってるわ」
彼女はそう言うと踵を返す。なにやら思わせぶりなことを言っているが、雰囲気から告白とかの類ではないだろう。
どちらかというと困っているというか、申し訳なさそうという感じだった。とりあえず、彼女の言う通り放課後に図書館に向かうとしよう。
……………………
ホームルームを終えた俺たちは今、図書館の一角を占領している。テーブルをはさんでお互い向き合っている状態だ。
そうしていると冨士崎が切り出した。
「あなた、前にabundant feasibility onlineをやっているって言っていたわよね?」
「ああ、目的は他のやつとだいぶ違うがやっているぞ!」
「それで、ちょっとしたお願いがあるんだけど……私たちとそのゲームをやってほしいの!」
「どういうことだ? 話が見えないぞ」
「それが実は……」
長々と語ったので、ざっと要約すると、
親戚の旅行中、そこの子供を彼女の家で預かることになった。その子はabundant feasibility onlineをやっているが、保護者同伴でないとできない年齢なので、保護者の代わりになる人が必要になった。機器はその子の父親の分を借りれるようだ。
その子の父親は忙しすぎて買ってから一度もログインできなかったようで、使ってくれるならそのままくれるとかなり豪儀なことを言っているらしい。
そこまで言われては断ることも申し訳ないので受けることにしたそうだ。しかし冨士崎家にゲームに明るいものがおらず、一番若いからゲームに慣れるのも早いだろうという理由で冨士崎・・・凜香さんが選ばれたようだ。
「俺より適任者なんていくらでもいるだろう。それこそ前に話した通り、ゲームそのものが目的では無い俺みたいのでは力不足だ」
こう言っては何だが、冨士崎は結構美人な方だ。眼鏡美人というやつだろう。
それこそお近づきになりたい奴は多いはずだ。しかし、彼女は言う。
「初心者も初心者の私がいきなりそれなりにやっている人たちの中に入ってうまくやれる自信はないわ。それなら、ゲームに明るくなく目的もズレているとはいえ、最初のころからやってる北条寺と一緒にやった方が気が楽だわ」
なるほどそういう考えもあるか。しかし。
「その親戚の子供はどこまで進んでいるんだ? こう言っては何だが、俺はいまだに最初の町から出たこともないぞ」
自慢ではないが、本当に町中クエストしかやっていないし、もっと言うならまともに戦闘もしたことがない。
「あまりわからないけどダンジョン? にようやく入れるようになったらしいわよ」
ダンジョンにようやく入れるということは、おそらくデメリットの強い種族を選んでいたんだろう。それならそこまで離されてはいないか。
いや、一度も戦闘をしてない奴と比べてしまうのはかわいそうか。
「で、冨士崎はいつから始められるんだ」
「そうね。夏休みが始まって直ぐには準備が整っていないでしょうから。……8月の頭くらいでどうかしら? そのくらいにあちらも旅行に行くので、その後くらいから必要ってことだから」
とすると今から大体10日後くらいか。……それくらいなら何とか最初の町の本の中で小説系の本は読み切れているかな。
技術指南書や冒険の心得みたいな本は後回しだな。
そこまで考えて俺は提案する。
「とりあえず、スタートから迷宮都市までは付き合おう。そのあとはおそらく読書のために始まりの町に帰るから、そのあとはその時に考えよう」
「それで問題ないわ。無理を聞いてくれてありがとう。ふふ、本当に読書一筋なのね」
「ああ、そのために始めたようなもんだからな。今ようやく図書館に入れるようになったから、なおさらな」
詳細については明日話すことにした俺たちは図書室から出て帰宅することにした。
「じゃ、ゲームのことはよろしくお願いするわ」
「ああ、役に立つかわからないけど協力はするよ」
そう言ってそれぞれの家へ帰宅した。
……………………。
妹の靴はちゃんと玄関にあったので赤点は免れたようである。
さぁ、俺もログインするとしようか。




