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読書好きが始めるVRMMO(仮)  作者: 天 トオル
1.彼がゲームをする動機
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24.図書館の初利用と今後の予定

 テイマーギルドを出ると辺りは暗くなっていた。俺は急ぎ足で図書館に引き返す。やっと図書館に戻り受付に向かう。

 カウンターにいる男性に声をかける。


「すいません、図書館を利用したいのですが……」

「わかりました。ギルドカードを提示してください」


 俺はメニューからギルドカードを選択し相手に見せた。


「司書ギルド所属の方でしたか。それでしたら料金はいりません。従魔を一時預かり所に預けてから利用してください。閉館時間は午後11時です」


 カーナさんの説明に閉館時間なるものは無かったはずだがどういうことだろうか?

 俺が受付の男に確認を取ると。


「またですか。あの人は自分がいつでも入れるからよく説明を忘れるんですよね」


 そう言って教えてもらったのがこの図書館には利用可能時間が有り、一般人と司書ギルド低ランクの人たちは朝の6時から夜の11時まで利用できるらしい。

 だが、利用時間を過ぎても司書ギルドDランク以上については管理の名目で入館が可能らしい。ならば、目指さなければなるまい。

 今はとりあえず普通に利用するとしよう。

 俺は司書ギルドそばにある一時預かり所に向かう。 


「それじゃ、ハーメルを頼むぞ、ヌエ」

「クーーーー!」


 俺は寝ているハーメルをヌエの背中に乗せてヌエを送り出す。

 後輩に迷惑が掛かってるぞ、ハーメル。

 しかしヌエは気にした様子もなく預り所の奥まで行って器用にハーメルを起こさないように体を折り曲げて寝始めた。大丈夫そうだな。

 俺は満足気に頷いて図書館に向かうのだった。


 ……………………


 図書館に入った俺はひとまず深呼吸をした。

 鼻いっぱいに広がる紙のにおい、眼前には数えきれない本の数々。

 ここまで頑張った甲斐があったというもの。


 とりあえず図書館をグルッと周ってみることにした。

 武術指南書、料理指南書、技術指南書、モンスターについて、外に泊まるときの心得

等、冒険に役立つ種類の本が並ぶ中、俺はついにそのエリアを見つける。

 伝記・伝奇、小説・物語。

 俺は歓喜した、このためにこのゲームを始めたと言っても過言ではない。

 しかも、かなりの本が並んでいた。その中から1冊手に取ってみる。


 ファーストでのんびり暮らし     著者 コーネン


 タイトルも作者も聞いたことないものだ。

 このゲームを作り、運営している財団はそれこそ手広い業界に手を出している。

 ゲーム、料理、建築、機械・・・それはもういろいろやっているがその一つに本の出版も当然ある。そういうノウハウがある財団がここまで時間・金・人材を惜しみなく投資したゲームであまり利用者がいないとしても図書館、もっと言えば本の内容に手を抜くだろうか?

 いやない。

 このゲームを調べたりしながら、いろいろな可能性を考えてはいたがどうやらNPCに書かせる方針を取ったようだ。

 つまりここにある本たちはこのゲームをやってないと読めないということだ。俺は口が緩むのを止められなかった。このゲームを始めて本当によかった。

 早速今持っている本から読んでみることにした。


 ……………………


 何冊目かの本を読み終わり本を閉じようとしたとき気になるものを見つけた。

 ここの本は全て最後のページが白紙で終わっていた。

 しかし、この本には何やら模様みたいなものがあった。

 汚れかと思ってじっと眺めているとだんだんその文字の意味が分かるようになってきた。


 ≪・・・・・・・・5・・、・・しゃ・・・・・6・・≫


 と自分の目には見えるようになった。

 どういうことだろうか?俺は考えを巡らしているとあることを思いだす。

 「言語」スキルの効果は確か理解不能扱いの文字が一部見えることだったはず。

 おそらく俺が汚れと勘違いして凝視したことでスキルが発動したのだろう。

 何か意味があるはずなので、「読書」スキルのアーツ メモで記録を取っておこう。

 ちなみに本はこんな感じだ。


 ショルダータックルウゥゥ    著者  クモン


 こんなタイトルだが恋愛小説だった。・・・主人公が曲がり角から飛び出てきた学園のマドンナをショルダータックルで突き飛ばすところから始まる。出落ち感丸出しの本だった。

 「面白い設定を思いついたので、小説にしてみました」という作者の声が聞こえてきそうだ。


 ……………………。


≪司書のレベルが上がりました。≫


「そろそろ閉館時間になります。今読んでる本を元あった場所にしまってから、退館してください」

 先ほどの男性職員の声がする。

 俺は慌てて今持っている本を棚にしまい図書館の出口に向かう。


 ここで出口を抜けるときに何か通り抜ける感覚を覚える。

 これはカーナさんから聞いていた問題行動をとらなかったかチェックする魔法結界だろう。

 それなら入るときも同じようにやってくれればとも思うが。

 預り所に向かうとハーメルとヌエが鼻先を突き合って遊んでいた。

 絵面は完全に捕食現場だ。


 「ハーメル、ヌエ帰るぞ!」


 俺がそう言うと、ハーメルがヌエの体をよじ登り背中に落ち着くのを確認してヌエが寄ってきた。

 ヌエたちと町中を歩きながら、図書館でのことを考える。

 あそこにある小説はどれも素人か初心者が書いたようなものばかりだった。

 最初の町だから蔵書も初心者や新人の出版物に偏っているのだろうか?

 まだまだ序の口なので初心者ゾーンから選んでいただけの可能性もある。

 まぁ全て読破してみればわかることだろう。


 今後の予定としては図書館を利用しながらクエストをこなしていくとしよう。

 さすがに1日ハーメルとヌエを放置するのは気が引けるし、何よりモーフラさんに頼まれたクエストもある。急いで無いからのんびりとこなしていくとしよう。

 そんなことを考えながら商店街に向かう。

 目的はヌエのごはん調達だ。モーフラさんの話だと基本雑食なのだが個体ごとに好みがあるので、それを調べるために様々なものが置いてある商店街に来たというわけだ。

 もうほとんど閉店しているが、少数のプレイヤーと幾人かの住人は残っていた。また明日にしようかとブラブラしながら少数の露店を冷かしていると、急にヌエがものすごい勢いで反応するものがあった。

 

テンサイの根   20ラーン

 確かテンサイはサトウキビと同じように砂糖の取れる植物だったか?

 ヌエが物欲しそうに眺めていたので、この前のお詫びを込めて10個ほど購入する。


 5150ラーン


 ヌエにテンサイの根を1本与えると、ものすごい勢いで食べ始める。どうやらかなりの甘党のようだ。

 それに合わせてハーメルにエイコンの実を1つ渡す。

 ハーメルは寝てばかりなのでエネルギー効率がいいのかあまり食べ物を欲しがらない。

 しいて言うならナンカのクエストで泥固めを連発した時にお腹をぽっこり膨らませたくらいだろう。


 ちなみにあの時ハーメルは「満腹」という状態になったがプレイヤーにそのような状態異常のようなものは無い。どうやら各方面から「効果は無くていいからご飯を沢山楽しみたいんだ!」のような要望を山ほど受けたことで、プレイヤーには実装しないというところで落ち着いたようだ。

 2匹が食べ終わるのを確認すると、俺は総合ギルド傍の噴水前で立ち止まる。

 今後の予定も決まったところで今日はここまでにするとしよう。


「じゃあまたな、ハーメル! ヌエ!」

「チュウーーーー!」

「クーーーーーー!」


 俺は2匹に別れを告げてログアウトした。


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めっちゃ好きだな、いい感じ(๑•̀ㅂ•́)و✧
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