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252.旅立ち

 連絡できるメンバーにレイド戦への参加要請を出した次の日。

 転職クエストに関わる資料をトーザさん達から受け取った。

 大まかなところは予定を組んだ話し合いで確認していたが、いくつか差し変わっているクエストがある。


 どうやら予定を作っている間に他の人が解決したものや、事情が変わったクエストは変更されているらしい。

 この辺りは誤差の範囲だろう。

 問題というか、イレギュラーは他のところから起きた。


 現実世界では初秋に入った頃、『abundant feasibility online』ではオータムイベントの告知があった。

 俺がジェイミーと出会ったウィンターイベントのような長期間に及ぶクエストが開催される。


 今回は国、地域ごとに起こるイベントが違うようで、イベントの種類と開催される地域は事前告知されている。

 その中で俺が是が非でも参加したい『読書の秋』関連のイベント。

 対象地区は知識の国ノーレッジをメインとして、他数国が該当している。

 本来ならノーレッジに常駐していたいところだが、他のプレイヤー達に予定を伝えてしまっているので日程の変更はできない。


 今回の道中にもイベント対象地域があるので、予定が狂わない程度に参加するしかないだろう。

 ノーレッジ以外で発生するイベントに期待するしかない。

 最悪、司書クラン『文芸部』のメンバーにどんなイベントがあったか聞いてみよう。

 イベントで手に入った本があれば、拝借したいところだ。


 他にこのイベントで懸念事項があるとすれば、プレイヤーの大移動が予想される関係で通常のクエストにも影響が出る可能性だ。

 特に素材収集系のクエストでは出現モンスターの変更もあるので、本来の難易度より高くなっている事もあり得る。


 一応資料や許可証を受け取った時に懸念事項を確認してみたが、特段気にするような変化は無いとの事。

 まぁ、住人がイベント関係による異変をどこまで認識しているかはわからない。

 それ以前にまだ告知があっただけだ。

 アバンデント内で感じ取れるほどの変化はないのだろう。


「ウイングさん! 1日でも早く帰ってきてくださいね! 」



≪転職クエスト ビブリオフィリア? ビブリオマニアの間違いだろう? を受諾しました。≫



 トーザさんに見送られて大図書館を出たところで転職クエストのアナウンスが流れる。

 ……今までアナウンスは無かったと思うより前に、クエストの名前に突っ込みを入れたくなった。


 能力的な話はともかく、この職業の逸話を考えるとクエスト名にも納得できるのがなんとも言えない。

 俺は微妙顔になりながら、マイルームへ移動した。


 マイルームでアイテムを整理した俺は、ノーレッジの外周にやってきていた。

 今回のメンバーはハーメル、グリモ、カレル、シラノ、マリア、フローラである。

 逐一メンバーは変えていく予定だが、基本的にはレベルの低い従魔を優先していくつもりだ。


「さて。久しぶりの長旅だな。最初は昔通った道を戻る形になるが、トラブルは突然やってくるものだ。油断はせずに行こう」


 声をかけ終わったところで、従魔達に今回の陣形を指示する。

 俺がカレルの上に乗り、ハーメルとシラノがその周囲を警戒。

 マリアは俺の周りで待機。

 フローラはカレルから離れすぎない程度に偵察とした。

 全員が配置についた事を確認した俺はカレルに出発の指示を出す。



≪従魔フローラの練度が一定に達したため、スキル「突撃」がレベルアップしました。≫

≪従魔フローラがレベルアップしました。≫

≪従魔シラノがレベルアップしました。≫

≪従魔マリアがレベルアップしました。≫

≪従魔マリアの練度が一定に達したため、スキル「風魔法」がレベルアップしました。≫

≪従魔フローラとマリアの習得度が一定に達したため、スキル「抗毒」「抗病」を習得しました。≫

≪従魔フローラがレベルアップしました。≫

≪熟練度が一定に達したため、スキル「抗毒」「抗病」がレベルアップしました。≫

≪従魔マリアがレベルアップしました。≫



 変わらず体に悪そうな環境である空白地帯。

 本来ならここはスルーしたいところだが、指定されたクエストの一つがこのエリアに関わるので仕方ない。

 クエスト内容自体は難しいものではなく、この地域に住む住人たちへの聞き取り調査である。


 調査内容はこの地域に読書、執筆活動がどの程度行われているかの確認である。

 大図書館の創成期に根こそぎ本を回収した事で廃れた文化がどれほど再生しているかの調査だ。

 定期的に行われている調査のようだが、劣悪な環境とこれまでの調査結果からとても不人気なクエストらしい。


 実際、住人に話を聞く限り、それらしい活動の痕跡はあまり聞こえてこない。

 日々の日記くらいは書いている人物はチラホラいるようだが、これを執筆活動と言い張るのは無理がある。

 空白地帯の日常は貴重な情報と言えるが、提出してもらうのは難しいだろう。


 調査報告としては読書、執筆活動はほとんど行われていないと書くほかない。

 ただプレイヤーの流入で治安は良くなっているので、今後に期待といったところだ。

 以前より物流は盛んになっているようなので、そこから発展する事を祈ろう。


「ギルドカードの確認は取れた。言っては悪いがなんもないところからよく来たな? あの一帯を抜けてきたなら、この辺りの快適さにビックリするだろう。ようこそ。ドリュアデス共和国へ」


 点在する都市で聞き込み調査をしながら、ドリュアデス共和国の国境までやってきた。

 衛兵とのやり取りを終え、街道を進んでいく。


 偽衛兵が絡んできた街までやってきた俺は司書ギルドの支部へ向かい、空白地帯の調査報告を提出する。

 報告内容は芳しくなかったが、そこそこの報酬をもらえた。

 ただ、調査にかかる時間と費用を考えれば効率が良いとは言えない。

 不人気なクエストには、それ相応の理由があるのだと実感する。


 ドリュアデス共和国で指定されたクエストを受注した後、支部を後にした。

 前回と同じ道筋を辿るなら、この後は剣闘士の国へ向かうのだが今回は違う。

 以前の経路より南下する方角にある街道を進む。

 目指すは医学の国メディティア。


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― 新着の感想 ―
『読書の秋』イベント、参加したいですよね。 読書用ライト、読書用の椅子などがあったら欲しい気がします。 マイルームやマイエリアを秋にするオブジェクトでもいいですけど。 庭は冬のイベント以来、ずっと雪な…
ビブリオフィリア…というより、中毒者ジャンキーだったりして(笑) 医学の国… 実はマッドサイエンティストの巣窟で、裏で非合法な人体実験とかしていたりする? 攫ってきた被験者に色々な薬物を投与したり…
大切な調査ですよね(・_・;)人気無いのも納得ですが(^_^;)
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