22.ようやく司書ギルドへ
一仕事終えた俺はレーナさんに別れを告げて総合ギルドを出る。
とんだ災難に見舞われたが、ついにこのゲームを始めた目的である図書館に入ることができるかと思うと足どりも軽やかになる。
現在、肩にハーメルを乗せ、ヌエを連れて司書ギルドに向かっている。
俺はワクワクしながら図書館のある方へ向かう。
司書ギルドは図書館に併設された建物に支部がある。
仕事内容を考えれば当然といえよう。
司書ギルドの前に立ち外観を眺める。
質素なつくりだが看板に本棚があり、とても清潔感のある建物だ。
中に入ると、いかにも司書ですといった風貌の眼鏡女子がいた。
「司書ギルドに何か御用でしょうか?」
「はい、司書ギルドに登録するために来ました」
俺がそう言うと、相手は珍しいものを見るような顔をしたかと思うと、はっとしてコホンとごまかすように咳払いした。
「司書ギルドへの登録ですね? それでは入会条件の確認から始めさせていただきます。あと私は司書ギルドファースト支部副支部長のカーナと申します」
「俺はプレイヤーのウイングです。今日はよろしくお願いします」
「まず、ギルドカードと司書の目録を提出してください」
そう言われたのでギルドカードと司書の目録を渡す。
司書の目録をまともに使うのは初めてかもしれない。
「総合ギルドで職業司書のレベルが入会条件と聞いたのですが間違えていましたか?」
「意味的には近いですが、厳密にいえばここに来るまでに読んだ本の数が条件です。合格ラインになるまで読んでいれば自然と司書レベルも上がるので、対外的にはその解釈でかまいません」
ギトスさんの説明でも間違ってはいないけど正確でもないということか。
カーナさんは俺の目録の中身を見て驚いた顔をする。
「こんなに読んでから登録に来た人は初めてかもしれません。総合ギルドのランクも問題ないようですね。司書ギルドでは図書館の管理や古い本の復元など、デリケートな仕事が多い関係で他のギルドより条件が厳しめです。ですが、恩恵として図書館の利用時の保険を自動的に立て替えてくれる等、本に関わることで優遇処置などがあります。それでは登録した際の注意点をお話しします」
カーナさんが話してくれた内容は以下の通りである。
1.司書ギルドのメンバーは図書館の利用の時の保険を司書ギルドが立て替えてくれるが、何かトラブルを起こした場合は後から徴収されてペナルティを受ける。
2.図書館にある本以外にも司書ギルドが管理している本を汚す、傷つけるなどした場合もペナルティを受ける。
3.ペナルティは称号に「読書家の敵」という称号が付き、更生プログラムを受けて称号を消しても司書ギルドに復帰することはできない。ただし、図書館は利用できるようになる。
4.司書ギルドのメンバーは珍しい本を見つけた場合、手に入れて提出するか、手に入らない場合は名前を控えて報告すること。手に入れるときにかかった費用については、立て替えてもらえれば後で司書ギルドから返金される。
5.テイマー等が図書館を利用する場合、司書ギルドの隣に一時預かり所があるのでそこに従魔を預けること。ただし、大きすぎる従魔はテイマーギルドの預り所または自分の拠点に置いていくこと。
6.本の作者に対して敬意を払い書籍は大切に扱いましょう。
だいたいこんな感じだろうか。
他にも細かいところもあるが、本を大切に扱っていれば大丈夫なことばかりだったので割愛する。
「イニシリー王国、「始まりの町」ファースト。司書ギルド副支部長カーナがプレイヤー、ウイングの入会を認めます」
カーナさんがいつもの紙を取り出して宣言する。
≪司書ギルドに入会しました。ギルドカードを確認してください。≫
ギルドカード
総合ギルド E 5P
テイマーギルド F
司書ギルド F
所持金 5350ラーン
これでいつでも図書館を利用できるな。
俺は早速とばかりに図書館に向かおうとしてハタと気づく。
・・・ヌエの従魔登録を忘れていた。
すまないヌエ、ようやく目的が果たせそうだから気が急いていたようだ。
俺が申し訳なさそうにヌエに目を向けると。
「クーーーー?」
何のことかわからないというように首を傾げる。
胸を締め付けられるような思いをしながら司書ギルドを出て、テイマーギルドに向かうのだった。
やっと主人公の目的までたどり着けましたね。
話的にはまだまだ続きます。




