240.エピローグクエストに向けて①
≪ 司書ギルドのランクがAランクに昇格しました。ギルドカードをご確認ください。≫
ギルドカード
司書ギルド A
昇格試験が終わった次の日。
大図書館に向かうと職員に声をかけられ、そのままランクアップの手続きをしてもらった。
加えて試験官からの言伝を伝えられる。
“こんな事で手古摺らせるつもりは無い”
この言葉を聞いた時、試験中の疑念が確信に変わった。
あの試験官は現実世界の人物だ。
しかもプレイヤーではなく、運営側の人間と思われる。
ただ、なんの目的で試験官として俺の前に現れたのかは不明だ。
試験は住人にやらせても問題ない内容だったし、わざわざ1プレイヤーの試験官を買って出る理由がわからない。
そんな事をしていたら、人手がいくらあっても足りないはずだ。
もしかしたらという事はあるが、あの人はあんなしゃべり方をしない。
演技しているような雰囲気はなかったし、他人に任せるならそれこそ住人に代弁させればいいだろう。
何はともあれ第一目標である司書ギルドをランクAにすることはできた。
あとは地道にクエストを達成しながら、司書ギルドの信頼を得つつ上層部の伝手を作る事でエピローグの条件はほぼ揃う。
この辺りはトーザさんが作った攻略チャートを参考にしていきたい。
それと並行して従魔達の強化もしていきたいと思っている。
新しい従魔が入ったからというのもあるが、来たるべきレイド戦の用意は少しずつ進めた方がいいだろう。
……………………。
現在、俺がいるのはアールヴ皇都近くの森。
それなりにプレイ時間が長いプレイヤーには、狩場としておいしくはないエリアだ。
ただし、テイマーにはそこそこ人気のスポットとなっている。
理由は簡単で新しく従魔が増えた時、レベル上げに手ごろなモンスターが出てくるからだ。
特に卵から孵化した従魔を鍛えるのに丁度いいくらいのレベル帯が出てくるうえ、他の国からのアクセスが比較的良い。
先のワールドクエストだった内乱も終わってしばらく経過した頃から、従魔のレベル上げに来たプレイヤー達が交流の場にしているそうだ。
そんなところで鍛えるのは、ハル達から購入した卵から孵ったフローラとマリア、そしてメリーである。
最初はフォレストワスプの2匹だけを育成する予定だったが、メリーも連れていく事にした。
レベル上げするために館へ転移した時、メリー達のステータスを確認したのだが、メリーがそろそろ進化できるレベルになっていた。
ついでなので2匹が上げづらくなるまで、一緒にレベル上げをする事にしたのだ。
≪従魔メリーがレベルアップしました。≫
≪従魔メリーのレベルが一定に達しました。種族進化ができます。≫
≪従魔フローラがレベルアップしました。≫
≪従魔マリアがレベルアップしました。≫
≪従魔マリアの練度が一定に達したため、スキル「牙術」がレベルアップしました。≫
≪従魔フローラの練度が一定に達したため、スキル「牙術」がレベルアップしました。≫
≪熟練度が一定に達したため、スキル「指揮」がレベルアップしました。≫
≪従魔フローラがレベルアップしました。≫
≪従魔マリアがレベルアップしました。≫
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戦闘を始めてすぐにメリーが進化可能レベルに到達したので、進化先を確認する。
館の管理をする中で獲得していたスキルのおかげでいくつか進化先が増えていたが、劣化版シルキーのような能力だった。
リアがいるうえ、人手不足でもないのでわざわざ選ぶものでもない。
今の選択肢の中でピンとくるものがなかったので、いくつかフォローオラズを使って検証することにする。
NAME「メリー」 ウイングの従魔
種族「マジックドール(ベージュ)」LV20 種族特性「魔法生物」
スキル
「呪術 LV1」「念動力 LV5」2UP 「闇魔法 LV1」 NEW「読書 LV1」 NEW「掃除LV5」 NEW「指揮LV2」 NEW「空間魔法LV1」
3個くらいフォローオラズを付け替えた結果、今後の期待を込めて進化先を選択した。
このマジックドールは、昔グリモの進化先にあったマジシャンズブックに近い。
所持している魔法の数だけ分岐する進化先であり、体色によってメインの魔法が変わる種族である。
今回選んだベージュは、空間魔法を付与したフォローオラズを装着した時に現れた進化先だ。
見た目は服装の水色だった部分がベージュに変わった以外は変化がない。
ただ、色合いがよりアンティークのビスクドールのようになった。
この進化先を選んだ理由は、端的にいうと二匹目のドジョウ狙いである。
カレルは空間魔法を持つことで、とても便利な能力を持ったマンダー・トレーラーに進化した。
絶対ではないだろうが空間魔法を持つ事で増える進化先は、便利な能力を発現させる可能性を秘めている。
その可能性を追うなら毎回フォローオラズで空間魔法を付与するより、空間魔法を持った種族に進化しておいた方が、後の融通が利くと踏んだのだ。
そうしてメリーの進化が終わったところで、本来の2匹の育成を再開する。
フォレストワスプである2匹は、俺が司書ギルドの昇格試験を受けている間に幼虫を卒業し成虫になっていた。
見た目は手のひらに乗る程度の大きさがある深緑色の蜂だ。
もちろんデフォルメされてはいるが、童話に出てくるようなかわいらしい見た目ではなく、RPGの敵モンスターで出てくるようなイメージである。
虫が苦手なプレイヤーには、これの集団と戦う事になるレイド戦は無理だろう。
戦い方としては、それぞれフォローオラズで付与した魔法を駆使して遠距離攻撃に終始してもらっている。
一応トドメを刺す時に牙術を使用したりしているが、普段の戦闘中で使うには2匹の耐久力に不安があるので控えさせている状態だ。
そのほか、周囲の偵察や木の棒を持って敵を叩くなどしてもらっている。
せっかく種族特性の『器用貧乏』を持っている種族なので、いろんな経験をさせて自力でスキルを覚えてもらうのが狙いだ。
これまでの経験を活かし、狙ってスキルを取らせていきたいと思う。
できれば最初の進化で、ある程度差別化を図っていきたい。
俺は従魔達の未来の姿に思いを馳せながら、次の指示を飛ばす。




