236.坑道ダンジョン③
≪従魔ハーメルがレベルアップしました。≫
≪従魔ベルジュがレベルアップしました。≫
≪熟練度が一定に達したため、スキル「指揮」がレベルアップしました。≫
≪従魔ヌエがレベルアップしました。≫
≪従魔ベルジュの練度が一定に達したため、スキル「爪術」がレベルアップしました。≫
≪従魔ジェイミーがレベルアップしました。≫
≪熟練度が一定に達したため、スキル「光魔法」がレベルアップしました。≫
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先ほどより苦戦しつつも順調にモンスターを駆逐している従魔達。
むしろ苦戦している事を楽しんでいる従魔までいる。
「キュー……」
そんななかジェイミーが弱弱しい声を上げる。
どうやらMPを使い切ったらしく、できる事がなくなったようだ。
戦闘時間は休憩前と同じくらいだが、戦利品は3、4割ほど。
効率が悪くなったのもあるが、従魔達が休憩前より遊んでいたのもあるだろう。
従魔達は満足そうなので、目的は果たせたといえる。
俺は従魔達と共に坑道ダンジョンを引き返す。
広いフロアを抜けようとする度にモンスターの襲撃を受けるが、極力無視しながら進む。
上層に登っていくに従って見かけるプレイヤーの数が増えていく。
上層と下層でモンスターの強さは変わらないらしいが、プレイヤーの動きはかなり違う。
上層側は1フロアに多くのパーティーがいるので、安全性は高いが実入りは少ない。
そして、下層に行くにしたがって1フロアのパーティー数が減り、実入りは増えるが先ほどのパーティーのような事故が起こる。
自信のあるパーティーは下層、事故を起こしたくないパーティーほど上層よりのフロアで戦闘しているようだ。
坑道ダンジョンを脱出した俺はマイルームへ移動する。
グリモをテーブルの端に置くと同時に、ハーメルがテーブルの中央に陣取り昼寝を決め込む。
ジェイミーは俺の足元で大きな欠伸をしていたので、椅子の上にそっと移動する。
他の従魔はマイエリアへと移動していた。
各々自由に行動する従魔の様子を確認した俺は、空いている椅子に腰かけると今回の戦利品の整理を始める。
不和のイヤリング
耐久値 10
重量 2
装備時、従魔をパーティーに加えるときパーティー枠-1
ガーネット(プリンセスカット)
このアイテムを使用して装備品を作成した場合、種族特性「盲目」を付与する効果を得る。
ブルートパーズ(コンケーブカット)
このアイテムを使用して装備品を作成した場合、筋力 -50 を付与する効果を得る。
戦利品の中で効果が際立つアイテムは上記の通りである。
いい意味ではなく悪い効果が突き抜けているのだが……。
テイマーである俺なら『盲目』を付与するガーネットは使い道がある。
しかし、このような効果を持つ宝石をオラズ・テイマーのスキルでフォロー・オラズにしたら、効果は残るのだろうか?
装備してはいるが、装備品扱いかどうかは微妙だ。
今回手に入ったガーネット、ブルートパーズで試してみるか、誰かからデメリット付きの宝石を買い取ってみるのもいいかもしれない。
ブルートパーズはスキルではなくステータスに干渉するデメリットが付いている。
ステータスに関する進化分岐があるかは不明なので、どうするかは保留になるだろう。
不和のイヤリングなんて俺が持つ絆のペンダントと真逆の効果を持っている。
他の効果もないので、本当にデメリットしかない装備だ。
レアドロップである装備品がこのような効果ばかりなので、ユグドラシルへ行く等など別の理由がなければこのダンジョンを攻略する意味はないといえる。
今のところ、このダンジョンで出たアイテムのデメリットを消す方法は発見されていない。
その為、プレイヤー間での取引でも買いたたかれているようだ。
ドロップアイテムの確認を終えた俺は従魔達に声を掛けた後、ログアウトした。
……………………。
「春花。ゲーム内の事で相談があるんだが……」
「うーん? 珍しいね。お兄ちゃんからそんな言葉が出るなんて」
夕飯の後、食器洗いをしながらソファに転がっている春花に声をかける。
最初は寝ぼけ眼で話半分に聞いていた春花だが、チェーンクエストのレイド戦の話を始めるとソファを跳ね起き俺に駆け寄ってきた。
「あのチェーンクエストって最終的にレイド戦が発生するんだ! いいよ! 多分だけどお兄ちゃんが一番乗り……少なくとも誰かレイド戦まで発生させたって話は聞かないかな?」
「゛あの“チェーンクエストって言うって事は結構有名なのか?」
春花の話では、考察・検証を目的としているプレイヤーを中心に、このチェーンクエストを発生させているプレイヤーは一定数いる。
しかし、1人で複数の国を渡り歩き各所の図書館で司書ギルドに貢献が必要な特性上、本腰を入れて攻略しているプレイヤーは聞いたことがないそうだ。
俺みたいなあまり情報を出さない個人か秘匿しているグループはいるかもしれないが……。
「チェーンクエストについてはOKだよ。聞いた感じレアアイテムとか称号が手に入りそうだしね。受けられるようになったら、教えて! あっ。そういえばお兄ちゃんってユグドラシルに行けるテイマーだったよね?」
「厳密にはアールヴヘイムに行けるオラズ・テイマーだけど、急にどうした?」
「ちょっと確認したいから、チェーンクエストの話も含めてクランルームに来てもらってもいいかな? 招待は出しておくから、明日来てもらっても良い?」
「おそらく大丈夫だ。何かあったら……」
春花は俺の言葉を最後まで聞かないうちに、自分の部屋へ走っていた。
クランメンバーに予定を確認しに行ったのだろうが、そこまで急がなくても良いと思う。
まぁ、最後に確認してきた内容に関係して何かあるのかもしれない。
俺は今日ゲーム内でやりたいことは終わっているので、読みかけの小説を読む事にしよう。
食器洗いを終えた俺も自分の部屋に戻る事にした。




