表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
252/268

234.坑道ダンジョン①

 久しぶりの戦闘をするため、やってきたのはドヴェルグ連合国。

 最初は図書館ダンジョンでわざとギミックを踏むことを考えたのだが、戦闘の起こる本を探す必要があり、他のパーティーが来た場合に迷惑をかける可能性があったのでやめた。


 他に自由に飛べる場所としてアールヴ皇国も考えたが、あの辺りは一通り戦ったうえに手に入る素材にうまみが少ない。

 そこで思い当たったのがドヴェルグ連合国である。


 目的は首都の地下にある坑道ダンジョン。

 それなりにドヴェルグ連合国に来ているが、ほとんど引きこもっているか素通りしていたので来るのは初めてだ。

 それもそのはず、ここが解放されたのは俺がAO入試の為にゲームから離れている最中だったらしい。

 解放されていなかった理由は明白で、人様に言えない方法で作られた疑似ダンジョンだったからだ。


 以前、転職クエストで利用した炭鉱が廃坑同然の状態になってしばらく後の事。

 このままでは都市が衰退すると危惧した当時のドヴェルグ連合国上層部。

 どうにか炭鉱に代わる興業がないと考えたが、鍛冶やモノづくりばかり注力してきた面々であったため、すぐに他の事が思い浮かばなかった。

 

 そこで天啓が下りたというか、魔が差した。

 上層部の誰が思い当たったか、図書館ダンジョンの再現をしようという提案がなされたのだ。

 いわくつきの宝石や鉱石を坑道に集めて、鉱石をドロップするダンジョンを作れないかと。


 行き詰まっていた上層部はこの提案を了承し、実行に移した。

 場所は廃坑になった炭鉱の最深部。

 廃坑目前の時期に苦し紛れで掘り進めた先に大きなスペースを確保し、そこへ特殊な力を持った宝石、鉱石を詰め込む形で行われた。


 結果、ダンジョンを作る試みは成功。ただし、本来の目的としては失敗といえた。

 ダンジョンを発生させる事には成功したが、上層部が思ったようなダンジョンにならなかったからだ。


 理由は明白であり、集められた宝石が原因だ。

 国全体でいわくつきの宝石を集めた際、ここぞとばかりに処分に困るような物ばかり提出された。

 手にした人物が不幸な目に合う宝石。加工しようとすると削っている人物にダメージが入る原石など、嫌な話が絶えない物ばかりが提出された。

 もしかしたら、そういった物の処分も兼ねていたのかもしれないが、そんなものを元に作られたダンジョンが良いものになるはずがない。


 意図的にダンジョンを作ろうとした天罰が下ったかのように、出来上がったダンジョンはひどいものとなった。

 狙い通り鉱物をドロップするモンスターもいるが、心霊系のモンスターも多く発生する。

 そのどれもが好戦的であり、ドロップしたアイテムの多くがデメリット効果を付与されているらしい。


 上層部は明らかな失態を隠すため、出来上がったダンジョンを閉鎖。

 人々の記憶から消えるまでだんまりを決め込もうとしたそうだ。

 まぁ、そんな面白そうなものをプレイヤーが見逃すはずもなく、細かい経過は分からないがこの坑道ダンジョンを解放するに至った。

 

 しかもこのダンジョンを攻略する事で、ドヴェルグ連合国からユグドラシルへ行く事ができるそうだ。

 俺はアールヴ皇国からユグドラシルへ行けるので、進んで攻略しようとは思っていない。

 今回は戦闘メインで、あわよくば鉱石系のドロップ品が手に入ればいいというスタンスだ。


 前に降りた場所からさらに降下し、ただの洞窟と見紛うばかりの坑道を進んでいく。

 メンバーはハーメル、グリモ、ジェイミー、シラノ、ベルジュ、そしてヌエの6匹。

 普通なら坑道のような狭い場所なら、ヌエではなくエラゼムを連れていくところだ。

 しかし、坑道ダンジョン内はダンジョン化に伴い、空間が拡張されているらしく中に入ってしまえばヌエも十全に活躍できる。


 ヌエとしては図書館ダンジョンまでが大変だったので気にしていないようだが、かなりブランクが開いていた。

 感覚が鈍るかはわからないが、確認しておくに越したことはないだろう。


 しばらく歩いていると徐々に人影を見かけるようになる。

 未だユグドラシルに行けていないプレイヤーがダンジョンを攻略するべくパーティー募集をしているようだ。

 聞いた話によると、デメリットが付与されたアイテムを集めている集団もいるらしい。

 パーティー募集をしているプレイヤーたちはチラリとこちら確認するが、俺が“5匹”の従魔を連れている事を確認するとすぐに興味をなくして他のプレイヤーを探し始める。


 そんな人たちの脇をすり抜けると、低身長で豊かな髭を蓄えたドワーフと思われる衛兵十数人が道を塞いでいた。

 まさに皆が想像するドワーフの姿をしているが、アバンデントのドワーフが皆この姿をしているかというとそうでもない。

 

 人族よりは低身長らしいが、それ以外はかなり幅がある。

 髭を蓄えているドワーフは多いが、必ずしも髭があるわけではなくガッシリした体形からスリムな体系まで個人差は大きい。

 

 ここにいるドワーフはプレイヤーへのサービスとして、プレイヤーたちがイメージするドワーフらしい恰好をしているらしい。

 この辺りは現在のドヴェルグ連合国の上層部が忖度した結果だそうだ。

 そんなドワーフの衛兵たちに声をかける。


「……許可証、もしくは入場許可が下りる身分を証明するものを提示してください」


 その言葉に以前アールヴ皇国でもらった勲章を取り出す。

 衛兵は珍しいものを見たようにあらゆる方向から勲章を確認した後、他の衛兵にも確認させるという話になり、近くいた数人を呼び寄せて確認をとった。


「……確認が取れました。アールヴ皇国での勲章で間違いありません。入場は問題ありませんが、忖度などはありませんのでダンジョン攻略は自力でお願いします」

「わかりました」


 このあたりは事前に確認済みだ。

 坑道ダンジョンはドヴェルグ連合国からの許可証の他に、アールヴ皇国からユグドラシルへの渡航許可が出ているプレイヤーも入場することができる。

 最初は誰でも入場できるようにする方針だったらしいが、アールヴ皇国から待ったがかかったそうだ。


 アールヴ皇国でのプレイヤーの動きから、坑道ダンジョンにプレイヤーがあふれかえる可能性が高い。

 アールヴヘイムのハイエルフにも迷惑がかかる可能性があるので、ある程度ふるいにかけてほしいなど、多くの要望があったらしい。

 結果、アールヴ皇国よりも緩い条件ではあるものの、入場は許可制の形をとることになったそうだ。


 衛兵から勲章を返還された俺は従魔達を引き連れ、坑道ダンジョンへと向かう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
人様に言えない方法で作られたダンジョンというから、洞窟に大量の人間を焚べて怨嗟の呪詛でダンジョンを作ったのかと思った。若しくは宝石に人間の魂を封じてダンジョンシードを作ってダンジョンコアにしたり、えげ…
デメリットアイテム……ダンジョン……地下……うっ脳に瞳が 魔法使いとかテイマーなら筋力低下みたいなデメリットは意味がないだろうし意外と有用なのありそうだなぁ
国に利益を齎すことと在庫処分は=ではないですからね 違うことを一度にやろうとするとうまくいかないっていう例ですな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ