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読書好きが始めるVRMMO(仮)  作者: 天 トオル
9.旅路と図書館ダンジョン
236/268

218.TRPG? ②

 女性に案内され、洋館の2階へと昇る。

 ゲームやパーティーという事で大きな会場へ案内されるかと思いきや、先ほど俺が案内された客室サイズの扉へ案内された。


 扉をノックして中へと入っていく女性に続く形で俺も中へ入る。

 左右に天井まで高さがある本棚が並び、目の前には何かの資料が数枚散らばった机があった。

 その奥に中性的な美青年が座っている。


「やぁ、やぁ。よく来てくれた。私はクラン『オネイロイ』のパンタソスっていうんだ。今回のゲームの運営を任されている。一応裏方はいるけど、ゲームの進行は僕が進めさせてもらうよ」


 入って来た俺を確認した美青年は立ち上がり俺に握手を求めてきた。

 俺は勢いに押されるまま差し出された手を握り返す。

 握った手を離したところで、パンタソスと名乗った青年は困ったような表情になる。


「本来ならパーティー会場へ案内して、参加者全員の前で挨拶する予定だったんだけどね。今回我々の招待を受けてくれたのが君だけだったんだ。その為、急遽予定を変更する事にしたんだ」


 成程、確かに参加者が俺だけなのに大きな会場で挨拶されるのはシュールかもしれない。

 現実世界なら、来てくれた人に参加賞を渡して終わりそうな状況だ。

 俺の考えが伝わったのか、パンタソスは心外そうな顔になった。


「自分達で招待しておいてそんな不義理はしないよ! まぁ、不特定多数を招待するのにこんな森の奥地を選んだのは失敗だったかもしれないけどね。この失敗は次に生かす事にするよ」


 お道化たポーズをとったパンタソスは、この話は終わりとばかりに手を叩く。


「さて、それじゃあ今回のゲームについて説明させてもらうね。今回のゲームは借り物競争に近いかな? そんなに難しくないから簡単に説明するね」


 パンタソスが説明した内容は以下の通り。


①進行役であるパンタソスに館内のアイテムを持っていく。

②明確な指定は無い為、何を持ってきてもいい。

③ただし、館内にはギミックやクイズが隠されており、それらをクリアして手に入れた物の方が良い景品を手に入れられる。


「大体こんな感じかな。洋館内の物は極力破損させないでね。一応、全てのギミックは暴力行為なしでクリアできるはずだから。それとサービスとして2つのアイテムを持ってきたら、2つの景品をプレゼントしよう!」

「いいんですか?」

「良いの。良いの。僕らとしてもせっかく用意した景品が日の目を見てくれた方がうれしいからね」


 話は終わったとばかりにパンタソスは再び手を叩く。


「さぁ、それではゲーム開始としようか。僕はここに残って君たちの帰りを待っているよ。君にはアテーをつけるから、何かあれば彼女に聞いてくれ。館の掃除をしているメンバーもいるから、気軽に声をかけていいよ」


 俺はパンタソスに促される形で部屋を後にする。

 先程話に出たアテーとは、案内してくれていた中年女性だったようで引き続き俺と行動を共にする事となった。

 適当に探し始めると、どこを探したかわからなくなりそうだったので最初に案内された客室に引き返す事にする。


 客室へと引き返した俺は、一先ず部屋の確認をする事にした。

 ハンガーポールは裏などを探してみるが、特に目ぼしい物は見つからず。

 一番怪しいクローゼットを開けてみるも、それらしい物は見当たらなかった。

 一応、ギミックのような物があるかもしれないので、中へ入り床や天井を調べてみても特に何も出てこない。


 最後に使わないであろうベッドを調べる。

 アテーさんに許可を取り、シーツなどを剥がしていく。


「……おっと」


 ベッドのマットを持ち上げると、2つの封筒が出て来た。

 それぞれの封筒には別の動物が描かれている。

 片方は立派な牙を持つ象が正面に描かれており、もう片方にはこれまた立派な角を持ったサイが描かれていた。

 俺は両方の封筒を手に取り、中身を確認する。


 象の封筒には ‟客室の扉 内側 石” と、サイの封筒には ‟客室の扉 外側 石” と書かれていた。

 俺は封筒の内容をもとに、客室の扉を確認する。

 というより何のことか、見当はついていた。

 俺が案内された客室の扉には、両面の取手にペンダントのようなものがかけてあったのだ。


 両方のペンダントには灰色の石が一つ取り付けてあり、内側には象の牙、外側にはサイの角と思われるモノが彫られていた。

 状況から考えるに、片方が正解のアイテムでもう片方がダミーという事だろう。

 さて何か判断基準になるモノは無いだろうか?


『判定 封筒の絵柄について 神学 1d100 80以上で成功』

『判定結果 99 成功 牙は偽り 角は真実』


 ……もしかしたらとは思っていたが、思った通りダイスによる判定が表示された。

 それはともかく、判定が神学か。

 招待したクランがオネイロイで副マスターがモルペウス、進行役がパンタソス。

 アテーについてはよくわからないが、間違いなくギリシャ神話をモチーフにしている。

 アールヴヘイムの件があるので、そのままの関係や性質を持っているわけでは無いだろうがある程度参考にはなるはずだ。


 とはいっても、そこまでギリシャ神話に詳しいわけでは無い。

 今回出て来た名前が夢や眠りに関わっている事を知っている程度だ。

 また、絵柄やレリーフが出てきたら確認するくらいだろう。


 部屋の探索を終えた俺は、客室を後にする。

 ペンダントについては、両方持っていく事にした。

 おそらく外側のペンダントの方が良い物をもらえるのだろうが、2つ提出してもいいとの事なので比べてみるのもいいと考えたのだ。

 

 廊下へと出た俺は隣の部屋へと向かう。

 扉を確認してみると、俺の客室と同じようなペンダントがぶら下がっていた。


「アテーさん。この部屋も客室ですよね?」

「そうですね。……これは話してしまってかまわないでしょう。この廊下は全て客室になります。室内は‟全て”一緒となっています」


 アテーさんは‟全て”という部分を強調していた。

 おそらく室内の調度品だけでなく、ギミックの類も一緒という意味もあるのだろう。

 その言葉を聞いた俺は、そのまま次のフロアへ移動する事にした。



『判定 動物の彫刻 雑学・動物懐柔 1d100 30以上で成功』

『判定結果 23 失敗 何か鳥のような物 材質不明』


『判定 本棚 情報処理 1d100 60以上で成功』

『判定結果 77 成功 何か細工されている本がある 』


『判定 文献 知識・雑学 1d100 30以上で成功』

『判定結果 53 成功 ある神話を元にした小説。ただし、挿絵は関係ない物が挟まれている』


 本来のパーティー会場や会場の隣にある倉庫を巡りながら、気になる物を確認していく。

 倉庫で本棚を見つけた時は一つ一つ手に取ってみたが、ご丁寧に本棚に入っている本は同じもので統一してあった。

 流石にゲーム以外の事で時間を潰す事は、許されないらしい。

 アテーさんに許可を取り、挿絵の違うものと他と全く同じものを1冊ずつ持っていく事にした。

 そのまま先にある調理場や裏口なども確認していく。


『判定 裏口のトラップ 身体能力 1d100 80以上で成功』

『判定結果 22 失敗 所持品を1つロスト』

『ロストする所持品 1d6 』

『判定結果 2 象牙の石』


 俺が裏口の扉を開け一歩踏み出した時、何かの判定が入った。

 その判定を確認する間もなく、俺の足は何か異質な出っ張りを踏み込むような感覚を覚える。

 直後、クイズで間違えた時のような音が鳴り響く。

 間を置かず、アテーさんが俺の足元を確認する。


「残念ですが、この罠に引っかかったウイングさんは持っている物を一つ預からなければなりませんね。それでは失礼して」


 アテーさんがそう言うと腰につけていた袋に手を突っ込んだ。

 しばらくして手を引き抜くと見覚えのあるペンダントが握られていた。

 自分のポケットを確認してみると、ペンダントが1個になっている。

 ……サイの方のペンダントしか残っていなかった。


「こちらのペンダントは私が預からせていただきます。もちろん最後に提出する事は出来ません」


 そういうイベントもあるのか。

 ……隣の客室から拝借できるかもしれないが、それは負けた気がする。

 まだまだ未探索の部屋があるので、それらを回ってから考えよう。


『判定 読書 1d100 80以上で成功』

『判定結果 38 失敗 取り立てて気になるものは見当たらない』


『判定 身体能力 1d100 70以上で成功』

『判定結果 47 失敗 置物に手が届かない』


『判定 読書 1d100 50以上で成功』

『判定結果 93 成功 書籍の並びに規則性あり 規則性の最初の書籍が鍵』


『判定 読書・情報処理 1d100 50以上で成功』

『判定結果 76 成功 本棚の中に金庫あり どこかで暗号を入手する必要があり』

一応、ダイスを振って進行しています。

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― 新着の感想 ―
主人公の進行ゆっくりではあるけど、Bランクの司書で、知識系スキルも結構持ってるのに、読書の判定1d100で80以上はキツくないですか? 身体ステータスが低めだから、トラップ回避判定がキツイのは分かるん…
[一言] これはなかなか面白いギミックだ……いいなーこういうゲームやりたいなぁ
[一言] クリファン(((o(*゜▽゜*)o)))
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