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読書好きが始めるVRMMO(仮)  作者: 天 トオル
9.旅路と図書館ダンジョン
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213.ドリュアデス共和国④

 森の中を進むこと数日。


 林業の関係者が利用する休憩所でログアウトを挟みつつ、けもの道を進む。

 けもの道と言っても丸太を運ぶだけの道幅は確保されており、時々木材を置いておくためのスペースもある。

 街道ほど整備されてはいないものの、悪路というわけでは無い。

 戦闘の際、地形を心配する必要は無いだろう。


 出現するモンスターはクモ・カマキリ・バッタなどの虫系やクマ・シカ・イノシシなどの哺乳類系が多く、雨が降った日にはカエル・ナメクジ・アメンボなども姿を見せた。

 俺はテイマーギルドで受け取った地図に出現したモンスターを書き込んでいく。

 どの辺りで見かけたかはもちろん、地図を2枚使って晴れの日と雨の日で分けて資料を作成する。両方で見かけた場合は両方に書き込んだ。


 そして、従魔達が出て来たモンスターを片っ端から討伐していく。

 クエスト的には草食モンスターを討伐すればいいのだが、襲ってくるのは基本的に肉食系ないし雑食系が圧倒的に多い。

 結果、自発的に襲う草食モンスターと勝手にやってくる肉食モンスターの討伐数が同じくらいとなっている。

 


「クー!」


 地図に情報を書き込みながら深追いしそうになっているシラノを抑えていると、上空を偵察しているヌエが声をかけて来た。

 ヌエの先導に従い、少し道を逸れる。

 少し、進むと1本の木が目に着いた。これがヌエの見つけた物だろう。


 木そのものは周りの木と同じ品種だと思われる。

 大体十数メートル。黒っぽい表皮。ハーメルの好物であるエイコン……現実世界でコナラ(ドングリ)の木に近い。

 その中ほどに大きな影ができているのが遠目に見えた。


 肌色の層と茶色の層が交互に積み重なったストライプ。

 半球状の底面には六角形が敷き詰められたハニカム構造が見える。

 そして、その近くを小さな黒い影が複数飛び回っていた。


 俺はそれを確認した段階で回れ右をする。

 ヌエが見つけた物は間違いなく蜂の巣だろう。

 蜂系モンスターの1匹1匹は弱い。

 しかし、蜂の巣が絡むと途端に面倒くさい事になる。


 蜂の巣を駆除するだけなら簡単だ。

 焼却するか、調薬スキルで作成できる殺虫剤を用いて一網打尽にすればよい。

 ただし、これらの方法は余程の事が無い限り使われないという。

 何故かと言えば、ドロップ品が大幅に減るからだ。


 前述の方法で蜂の巣を排除した場合は、蜂のモンスターを倒した時のドロップ品しか手に入らない。

 しかし、蜂の巣周りのモンスターを戦闘で殲滅すると、蜂の巣を採取する事ができる。

 蜂の巣を採取するとその規模に応じて、ハチミツや蜂の子、モンスターの卵はもちろん、蜂の巣そのものもアイテムとして獲得できるという。

 よって、蜂の巣を見つけた時、討伐できる用意が無い場合はスルーする事が推奨されているのだ。


 ヌエが見つけた蜂の巣はかなりの大きさがある。

 以前読んだ魔物関係の本に記載されていた基準から考えると、千に迫る蜂モンスターが出てくるはずだ。

 1パーティーで対応できる規模ではない。レイドを組んで挑むレベルだったはずだ。

 気づかれないうちに退散するしかない。

 俺はカレルに指示し、相手が警戒する範囲に入る前に急いで離れる。


 一時的なものだろうが、一応地図に書き込んでおく

 それと俺の居場所を知っているハルや蜂の巣の素材がほしい人を知ってそうなドンハールさん、イトス、アートに連絡を入れておいた。

 彼らが討伐に動いた際、情報料代わりにお零れをもらえればラッキーだろう。

 けもの道に引き返した俺はヌエを労いつつ、元のコースを再び進み始める。


 ……………………。


「うむ。状態は悪くねぇな。むしろ良いくらいだぜ。あんがとよ、あんちゃん」


 目的の街に辿り着いた俺はオクシュロス工房で丸太を下ろしている。

 道中の取得物のせいでカレルの体内空間はいっぱいになっており、奥にしまってあった丸太へ辿り着くのも一苦労な状態だった。

 一度、手前にあるものを取り出してから丸太を下ろしていたのだが、取り出した丸太を見た工房の職人と思われる人物のセリフがこれだ。


 一緒に積んでいた物の影響か、カレルの体内空間の環境の問題か。

 俺の運んできた丸太の状態が、職人たちの予想より良いらしい。

 運ぶ前にカレルの体内空間を確認してもらっているので、この事も織り込み済みなのか。

 一応クエストを受ける前に注意するべき点は確認してあったのだが……。

 今回は良い方へ転んだから良いが、次に運送系のクエストを受ける時はもう少し慎重に行動しよう。


 オクシュロス工房へ丸太を運び込んだ俺はその足でテイマーギルドに来ていた。

 カウンターへ向かい、モンスターの情報を書き込んだ地図とドロップ品が入った袋を提出する。


「お疲れさまでした。地図の情報と袋に入った素材を確認いたしますので、しばらくお待ちください」


 2つとも査定に時間がかかるそうで、ギルド内で待機する事になった。

 十日程の旅路で得た成果はすぐに査定が終わらない様で、それなりの時間待たされる。

 しばらくするとカウンターの奥から先ほどの職員と共に、いかにも上司ですというような初老の女性がやって来た。


「私は副ギルド長を務めている者です。先程提出された資料に気になる記述がありましたので、お話を伺いたいのですがお時間よろしいでしょうか?」

「はい。大丈夫ですよ」


 俺は2人に案内されてカウンター近くのテーブルに腰を下ろす。

 職員の方は一礼した後、カウンターへ戻っていく。

 副ギルド長だという女性が気になったのは、やはりというか蜂の巣についてだった。


「この蜂の巣についてですが、書いてある規模に間違いはありませんか?」

「間違いありません。蜂の種類については遠目で見ただけですので、詳しくは分かりません。後知り合いのプレイヤーには情報を伝えてあります」

「そうですか……。今のところ大きな集団が森に入ったという情報はありません。他のギルドに問い合わせてみますが、テイマーギルドと木工ギルドの連名で討伐クエストが発行されるでしょう」


 もし、俺の知り合いが蜂の巣を討伐していたら、テイマー・木工ないし総合ギルドに報告するよう伝えてほしいと頼まれた。

 今のところ返信はあったものの討伐しようという人はいないが、一応クエストについても連絡を入れておく。

 

 話が終わり、クエストの報酬を受け取る。

 広範囲の調査及び討伐をしていたおかげでかなりのボーナスが付いた。

 道中手に入れた素材も返却されたので、またミーシャたちに防具の作成を頼もう。


 この街での目的を達成した俺はマイエリアへ帰還し、一度ログアウトする事にした。


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