212.ドリュアデス共和国③
本日2話目です。
絡んできたおじさん達を撃退した俺は、絡まれた側とはいえ店の前で騒いだ事を謝罪する。
店主の人は問題ないと言い、彼らについては衛兵に伝えて指名手配してもらうと言ってくれた。
もしかしたら、既に指名手配されているかもしれないが……。
あの牛達の事を考えると、テイマーギルドに相談した方が良いかもしれない。
……思い返してみれば、先程のトラブルはゲームやファンタジー小説でよく出てくるシーンだった。
ああいう住人が賞金首になったりするのだろう。
PKありにしているプレイヤーが請け負うクエストは、こういった手合いを相手にするのかもしれない。
店を離れた俺は先程の一件を報告する為、テイマーギルドへと足を運ぶ。
ここのテイマーギルドは運送に関わる従魔を預かる為か、仕事の被る運送ギルドと共に街の外れに大きな建物を構えている。
俺はカウンターへと向かい、先程のトラブルについて相談する。
俺の説明を聞いた受付の男性は何かに思い当たったらしく、俺に詳細な人相を聞いてきた。
どうやら初犯では無かったようで、他にも相談が来ていたらしい。
今回の様に衛兵役と難癖をつける担当に分かれて、示談金を巻き上げる手口を繰り返していたそうだ。
気になったので牛達の処遇を聞いてみる。
ひどい場合は従魔を討伐する事もあるそうだが、今回の男たちは従魔に悪事を働かせていないので従魔達に処罰は無いという。
男たちが捕縛された際は、強制的に契約を解除してテイマーギルド預りになるだろうという事だ。
トラブルについてひと段落した俺は、ついでにクエストを確認してみる事にした。
……テイマーギルドのクエストを見るのはいつぶりだろうか?
少なくともアールヴ皇国ではテイマーギルドのクエストを受けていないと思う。
現実世界で半年、ゲーム内で1年半くらい受けていない事になる。
大小さまざまな紙が貼られた掲示板へ向かい、クエストを確認していく。
運送ギルドと合同で運営されているだけあって、資材の運搬に関わるクエストが多い。
他には運び込んだ丸太・木材の加工や植林地での害虫・害獣退治なんかもある。
特に害虫退治などは樹木を傷つけないようにする為か、従魔の種類を指定されているものもあった。
吟味した結果、いくつかのクエストを受注する事にした。
選んだクエストは俺が旅する経路で達成できるもので、中継地で報告できるものを3つ程選んだ。
モンスターの間引き 依頼者 テイマー・木工ギルド
一定区域の草食系モンスターを討伐。
討伐したモンスターのドロップアイテムを入れておく専用の魔道具を貸与。
※ドロップ品は最終的に討伐者の物になります。
報酬 魔道具内のドロップ品で決定
モンスターの生態調査 依頼者 テイマーギルド
一定区域内でモンスターの分布を調査。
大まかな地図を貸与。
どこにどのようなモンスターがいるか記入する事。
報酬 一定区画ごとに1000R 記入された情報によってはボーナスあり
丸太の運搬 依頼者 ニュムペー
複数の丸太をオクシュロス工房に運んでほしい。
10種類 総計30本
報酬 10000R
最初の2つは常設のクエストらしく報酬は安いものの融通が利き、クエストを受けたギルドで完了報告する必要が無い。
クエストの達成条件を満たした状態で、最寄りのテイマーギルドに報告すればいいようだ。
3つ目のクエストについても丸太を持って行った先の町で報告すればいいそうなので、旅のついでで達成できる。
この3つのクエストを受注した俺は、ギルドのカウンターで必要なアイテムを受け取る。
魔道具は何時ぞやのゴミを入れておく袋に似た袋だった。
この袋を持った状態でモンスターを倒すと、ドロップアイテムが自動的にこの袋に入っていくらしい。
この袋からドロップアイテムを取り出す事が出来ず、俺が何か入れる事も出来ないそうだ。
もう一つは何の変哲もない地図である。
A3くらいの紙に大まかなに道と森の位置が書かれていた。
そんな地図を10枚ほど渡される。
書き込みすぎて見づらくなる前に新しい地図に書き込むようにしてほしいそうだ。
そして最後。
これは受注書を持って依頼者の元へ向かう必要がある。
俺はギルドの職員に依頼者の居場所を教えてもらい、そちらへ向かう事にした。
「オレイオス林業のニュムペーだ。早速だが親戚の営んでいる工房に俺んとこの丸太を運んでもらいたい」
丸太の運搬についてだが30本もの丸太をアイテムボックスで運ぼうとすると、旅に必要なアイテムを入れるスペースを圧迫する。
そこで依頼者の許可を取り、厩から街の外周を通りカレルを連れて来た。
カレルに大口を開けてもらい、1本ずつ丸太を運び入れる。
30本もの丸太を入れ終わると、流石の体内空間もかなり圧迫されていた。
それでも俺たちが休憩できるスペースがあるので、改めて体内空間の容量の大きさに驚く。
丸太を運び終わった俺はログイン時間を考慮して一度ログアウトする事にした。
……………………。
一時間後ログインした俺は街を出発した。
メンバーはカレル、シラノ、グリモ、ハーメル、ヌエそしてジェイミーだ。
最初はジェイミーにお留守番をしてもらう予定だったが、一匹で待機しているのが嫌らしくかなりゴネられてしまった。
最終的にのんびり屋のベルジュがお留守番を買って出てくれた。
……改めて思うと、ベルジュの留守番率が高い気がする。
今、戦闘用のパーティーに参加する従魔は7匹と1冊。
絆のペンダントの効果で連れていける従魔の枠は6つ。
グリモは俺のステータス補強の為、外す事が無い。
フィールドワーク中は移動の足としてカレルも必須である。
後のメンバーはその時に応じて入れ替えているが、治癒魔法を持っているジェイミーはほとんど外す事が無かった。
今回は道中に俺達の脅威となるモンスターが出てこないのは調査済みだ。
それに途中でオクシュロス工房のある町で消耗品を補給できるので、治癒魔法の重要度は低い。
こういう余裕のある時に違う組み合わせを試したかったのだが、想定していたのと違う問題が出てきてしまった。
ジェイミーの特性的にアールヴ皇国の屋敷に置いておくのも難しい。
リア達の誰かをマイエリアに連れてくる事も考えたが、霊象モンスターはジェイミーと性格が合わないし、人形系のモンスター達も降雪の中で待機する事に難色を示されてしまった。
従魔は増やしていくだろうが、ジェイミーの相手をさせる為だけにテイムするのは違う。
何らかの機会、目的を持ってテイムしたい。
漠然とこういう従魔を増やしたいという思いはあるが、今は知識の国を目指す事を優先しようと思っている。
この問題は従魔が増えていけば自然と解決するはずなので、ひとまず棚上げする事にした。
今のところパーティーからジェイミーを外さなければならない事案は発生していない。
必要になった時にまた考える事にする。
考えもまとまったところで従魔たちに指示を飛ばす。
俺達はオクシュロス工房のある町を目指して出発するのだった。




