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読書好きが始めるVRMMO(仮)  作者: 天 トオル
1.彼がゲームをする動機
21/268

18.お留守番と賄い

 俺は総合ギルドの壁に貼ってあるクエストを物色する。


「これならできそうだな」


お留守番  依頼者 ケンティ

 急に家を空けることになったんだが、荷物が届くはずだから受け取ってほしいんだ。

報酬 100ラーン


 報酬は安いがほとんど動かなくてよさそうなのでこれを受ける。

 依頼者の家に向かうと依頼者らしき男性がそわそわしながら家の前に立っていた。

 近づいてきた俺を確認するとほっとしたように声をかけてくる。 


「よかった。急いでいるから手短に説明させてもらうよ」


 依頼の詳細だがもともと今日引っ越してきたらしいのだが、新しい職場の手続きが不十分だったらしく急いで行かなければならなくなった。

 しかし、引っ越し業者に依頼した荷物がもうすぐ届くはずなので家も空けるわけにはいかない。

 職場の人に頼んで依頼を出してもらったというわけだそうだ。


「この紙を業者に渡してもらえれば手続きは完了だ。荷物を部屋に運び入れ終わった時に業者に渡してほしい。家の鍵をギルドに渡しておけばそれでクエストも終わるようにしてもらった」


 俺に紙と鍵を渡し言うが早いか、男は飛び出していった。かなり、ぎりぎりだったのだろう。俺は玄関に一番近い部屋に行く。

 木漏れ日差す部屋にテーブルとイスしかない。引っ越ししたばかりというのは本当のようだ。あまり詮索するのも失礼なのでイスに座って引っ越し業者とやらを待つことにした。

 ハーメルはテーブルに飛び乗り昼寝をし始めた。


「チュウzzzz、チュウzzz」


 俺が昼寝をするわけにはいかないのだが、やることがないので先ほど手に入れた料理セット(初)の内訳を確認する。

 

 料理セット(初) 

まな板

包丁

ボウル

ざる

フライパン


 本当に基本セットという感じだ。最初受けとったときはスキルもないのにと思ったが、アップデートにより満腹度が追加されたのだから今後のことを考えれば、あながち外れというわけでもないだろう。

 というか全然ありだったな。

 そこまで考えて自分たちの満腹度が気になったので確認してみた。


NAME「ウイング」 

満腹度  70/100


NAME「ハーメル」

満腹度  100/100


 ログインしてからあまり時間はたっていないのに俺の満腹度がかなり減っていた。

 おそらくMPを全消費したことで満腹度的にも消費したのだろう。

 全消費を繰り返せても3回くらいか。これが終わったら食べ物でも買いに行こう。


 …………………


 しばらくしてドアベルが鳴る。

 俺が玄関に向かい扉を開けると。

 

「引っ越し業者のものです。荷物をお届けに上がりました」


 そう言って荷物を運び入れる。

 少しして最後の荷物を運び入れた業者は


「作業が終わりましたので完了確認書をください」

 そういわれたので依頼主から預かっていた紙を渡す。

 すると紙が輝きだし跡形もなく消えたので俺は驚く。


「おや、魔法契約書を見るのは初めてですか?」


 簡単に説明してもらったが、何かの決め事か契約などに使うもので、契約の内容が完了すると紙が消滅するようにエンチャントした契約書なのだそうだ。

 俺はお礼を言い業者の人を見送った。

 部屋に戻り、昼寝しているハーメルを回収して家に鍵をかけて出る。

 ほどなく総合ギルドについたのでカウンターに向かう。レーナさんがいたので声をかける。

 もうほとんどの人が迷宮都市に行ってしまったので並ぶ必要もない。


「すいません。クエスト報告に来ました」

「あら、ウイングさんお久しぶりです」


 そんな会話をしながら鍵を渡す。

 

≪町中クエスト お留守番 をクリアしました。報酬 100ラーン をお受け取りください。≫

≪貢献ポイントが1溜まりました。≫


 ハーメルを休ませていた時に資料室の本はほとんど読んでしまったので、続けてクエストを受けようと思う。

 再び総合ギルドでクエストを物色する。

 できれば、満腹度の為にも食べ物を買いに行きながらできるクエストが好ましい。

 すると、面白そうなクエストを見つける。

 

お店の掃除  依頼者 トーン

 お店の中の掃除 ※お店で賄いが出ます。

報酬 150ラーン


 ちょうどよさそうなのでこれを受けて向かう。すると、お店に着いたと同時にMPが満タンになったので、俺は再びモンスターエッグに最大で魔力を供給した。

 

モンスターエッグ   500/1000 


満腹度  40/100


 半分を割ったからか先ほどよりもさらに体が重く感じる。機敏な動きはきついが掃除ぐらいは大丈夫そうだ。

 お店の前まで来ると店主らしき初老の男が出てくる。


「君が依頼を受けてきてくれたのかい?来た時点で疲れているようだけど大丈夫かい?」


 依頼主に心配されてしまった。


「大丈夫です。掃除くらいなら問題ないです。体調が悪いわけではありません」

「そうかい?それじゃあお願いしようかね」


 掃除を始めるが、お客さんはいない。中からおいしそうな匂いは届いているので今は準備中のようだ。空腹状態の俺にはかなり厳しい。

 ちなみに、ログインした時点では朝8時くらいで今はもうすぐ正午といったところか。

 Fランククエストは頑張れば1日で5つくらいクリアできそうだ。

 本当に初心者用のクエストなんだな。

 そんなことを考えながら掃除を進める。


 ……………………

 

 ひと段落したところで、店主から声がかかる。


「おやおや、こんなに丁寧にやってもらってすまないね。クエストは完了にしておくから、これでも食べて休憩していくといい」

そういってごった煮のようなものを出される。


 賄いスープ  様々な材料の切れ端が入ったスープ。熟練の技か、統一感のない材料が見事に調和した一品。特別な効果は無いがおなかは膨らむ。


満腹度  70回復


 店主……。こんないいもの金を払わないといけないレベルじゃないか。

 俺がそう言うと


「いいんだよ。もともと無駄な部分を寄せ集めたようなごった煮じゃからな」


 俺は店主に感謝しながら食べ始める。

 なんとも形容しがたいが、確かにおいしい。様々な野菜やお肉が絶妙に味のバランスを保っている。俺は残らず完食した。


 満腹度  100/100


 ちなみにハーメルだが一応お昼時だったのでまだ残っているエイコンの実を取り出したのだが、寝てばかりいたからか全然食べなかった。


「これが完了報告書じゃ。うけとるといい」


 クエストの報告には指定されたものの現物をカウンターに渡すか、このように完了報告書を依頼者から渡されるのでそれをギルドのカウンターに届ければクエスト完了となる。

 溝掃除やナンカ、ケンティのクエストは特殊な部類に入るだろう。

 ……まともなクリアは初めてかもしれない。



 俺は最後にある質問を店主にぶつけることにした。


「そのしゃべり方は地ですか?」

「威厳付けじゃよ」

…………………

…………………


≪町中クエスト お店の掃除 をクリアしました。報酬 150ラーン をお受け取りください。≫

≪貢献ポイントが1溜まりました。≫


聞かなきゃよかった。


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[一言] 店主w 威厳付けに笑った
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