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読書好きが始めるVRMMO(仮)  作者: 天 トオル
7.エルフの皇国
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151.生産クランにて

 冬期休暇も終わり授業が再開されて数日。

 学校では一部の生徒を除いて受験モードに突入しており、クラスにピリピリとした空気が漂っていた。


 そんな中、俺はと言えば少しずつAO入試の準備を進めつつゲーム内で読書を楽しんでいた。

 すでにスクラムたちのクランからは脱退しており、トルトゥーラの大図書館で魔物に関する書物を読みながらイトス達に依頼している装備の完成を待っている。

 従魔達とともにテイマーギルドのクエストを受けたり素材集めを行う事もあったが、基本的には読書に費やす日々を過ごしていた。


 ウィンターイベントの影響で予定以上に従魔達のレベルが上がってしまい、この辺りのモンスターではあまり経験値を得ることができなくなってきているためだ。

 一番レベルの低いジェイミーも逆に低すぎるがゆえに経験値を得づらい状態なので、もはやこの辺りで戦闘するメリットはほとんどない状態である。


 そんなある日、ミーシャから装備が完成したと連絡が来た。

 メールには細工師の紹介もしたいと書かれており、いくつか日時が指定されている。

 どうやらこの日時なら細工師と顔合わせができるようだったので、その中でも一番早い明日を指定しておくことにした。

 返信を終えた俺は読みかけの本を再び開き読書に戻る。


 次の日、学校から帰宅した俺はゲームにログインする。

 ログインして数十分後、ミーシャから生産クランのクランルームへの招待が来たので、従魔達を連れて転移の門を潜った。


 以前と同じように生産クランのホールにやってきた俺は辺りを見渡す。

 すると壁際にイトスとミーシャ、それに加えて裁縫の国で出会ったコットンが談笑しているのが見えた。

 俺は近づきながら3人に声をかける。


「イトス、ミーシャ。それとコットン! 久しぶりだな」

「お久しぶりっす。ウイングさん」

「お久しぶりでーす」


 生産職2人からはすぐ返事が来たが、コットンは俺の従魔が気になるようで少し遅れて返事が返ってきた。


「…………おっおー、久しぶりだな。ウイング。後ろにいるのがお前の従魔ということでいいんだよな? なかなか個性的なメンツを連れてるな」

「はは、確かに俺と同じようなモンスター連れているプレイヤーは少ないかもな。コットンはまた毛刈りの依頼か?」

「まぁ、そんなところだ」


 挨拶もそこそこに今日紹介されるはずの細工師について聞いてみる。

 今日紹介してもらう予定の細工師はリアルの予定が押しているらしく少し遅れるらしい。

 こういう時は体感時間の延長が裏目に出るな。リアルで数十分の誤差でもゲーム内では1時間以上待たせることになってしまう。


 細工師の人がログインするまで、イトス達と雑談に花を咲かせる。

 コットンは俺の従魔紹介を聞き流しつつ、感触を確かめるように従魔たちを撫でていく。

 さすがというべきか、普段撫でられることを嫌うハーメルさえも撫でられて心地よさそうにしていた。


「コットンさん。次は私にハーメルちゃんを撫でさせてくださーい」


 おとなしくなでられるハーメルを見て自分も撫でたくなったのか、ミーシャがコットンに代わってほしいと要求する。

 その発言を聞いた途端、ハーメルは忍術スキルを発動して俺のコートに潜り込んできた。

 いきなりのことに一瞬唖然としたコットンだが、ハーメルの行動から何か思い当ったようでミーシャに非難の目を向ける。


「ミーシャ……。お前、ハーメルを愛でるときに好き勝手に撫でまわしてるだけだろう? お前が発言した途端私の前からハーメルが消えたぞ!」

「えー、そんなことないですよー。ただ、撫でまわした後、ちょっと疲れてたような気はしますけどー。しっかり愛情込めてかわいがってますよー」


 ミーシャの発言にコットンはやれやれといった顔になる。


「あのなー。一方的な愛情の押し売りは相手を疲れさせるだけだぞ。このゲームにはモンスター1体1体に感情AIを積んでいて意思の疎通も可能なんだから、リアルの動物と対する時以上に注意が必要なこともある。ウイングもハーメルが嫌がっているならちゃんと止めてやらないと信頼関係に罅が入るぞ!」


 コットンのミーシャに対する説教は俺にも飛び火した。

 ハーメルは基本的に戦闘以外では食べるか寝るかの二択なのだが、それを邪魔されることをひどく嫌う。

 俺の場合は読書の邪魔にさえならなければ従魔に好き勝手させる方針なので相性はいいと思う。

 逆に構いたいタイプであるミーシャのような人とは相性が悪い。

 コットンは俺に相手がそういうタイプの人だからと諦めずに、しっかり注意すべきだという。


「チュウ、チュウ!」


 コットンの発言に反応したハーメルが俺の首元あたりから顔を覗かせる。

 視線を向けるとそうだ、そうだといわんばかりに首を上下に振っていた。


「でもでもー。採寸とかでハーメルちゃんを触っていると、やっぱり撫でたくなっちゃうんですよー」

「だから、撫で方を気をつけろと言っているんだ! かーいー、かーいーで撫でられるのを嫌う従魔もいるんだから」


 ミーシャの反論になってない反論をコットンがバッサリと切り捨てる。

 切り捨てられたミーシャがすがるような目をこちらに向けるが、俺は首を横に振った。

 なあなあにしていた俺も悪いので強くは言えないが、改善してもらう良い機会だろう。

 それにミーシャは従魔の装備をそれなりに請け負っているようなので、これをきっかけに撫でまわす癖を直すことは良いことである。


 ガックリと膝をついているミーシャを後目にイトスから新装備を受け取る。

 今回はハーメルとカレルを除く全員分の装備を新調することにした。

 最初はカレル用の装備も作ってもらう予定だったが、急激に体が大きくなったため装備を作るのに時間とお金がかかるということで、他の従魔たちを優先させてもらった。

 今回作ってもらった装備はこんな感じである。


ウイング



魔鉄鋼の軽鎧  魔力を帯びた鉄で作られた軽鎧


 耐久値 2000

 耐久力 +50

 魔法力 +5

 重量  15



魔鉄鋼の脛当て  魔力を帯びた鉄で作られた脛当て


 耐久値 2000

 耐久力 +20

 魔法力 +5

 重量  5



魔鉄鋼の小手  魔力を帯びた鉄で作られた小手


 耐久値 2000

 耐久力 +20

 魔法力 +5

 重量  5



ヌエ



漆黒のスカーフ  黒いスカーフ。魔物由来の素材を使うことで丈夫に仕上がっている。


 耐久値 150

 耐久力 +7

 重量  2



雪結晶のペンダント  雪の結晶を象った宝石のついたペンダント。使用された宝石には魔法・氷の適性がある


 耐久値 150

 魔法力 +15 

 重量  1

 氷系統のスキルを使用時、攻撃力を+20する。



黒いアンクレット  鉄でできたアンクレットを黒く塗装した物。


 耐久値 150

 耐久力 +12

 重量  3



エラゼム



魔鉄鋼の巨斧きょふ  魔力を帯びた鉄で作られた巨大な斧


 耐久値 2000

 ダメージ量 350

 魔法力 +10

 重量  80



雪結晶のペンダント

 ※ヌエと同様の物


グリモ



白クマのブックカバー  寒い地方に生息する白いクマの毛皮で作られたブックカバー。


 耐久値 300

 耐久力 +10

 重量  1

 耐寒(中)



ジェイミー



 青い水泳帽  防水性のある素材で作られた青い水泳帽。


 耐久値 70

 耐久力 +5

 重量  1

 水泳スキルを所持している場合は俊敏力に+5する。



 今回ようやく俺の戦闘用装備を作ってもらった。

 これだけでもかなりの戦力強化につながるだろう。

 戦闘時のみ装備する予定なので、着脱しやすいように司書のコートの上から装備できる仕様にしてもらっている。


「イトスーー! ミーシャー!」

「おっ! 来たみたいっすね!」


 受け取った装備を従魔たちに装備させていると転移の扉あたりから声が聞こえてきた。

 イトスの反応から俺たちが待っていた細工師のプレイヤーであるようだ。

 声の主に視線を向けると、快活そうな笑顔をこちらに向けるエルフの青年が手を振りながらこちらに歩いてきていた。




魔鉄鋼はやや黒ずんだ鉄のような見た目です。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] AO入試って12月には終わってるイメージなんだけどどうなんだろうか?
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