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読書好きが始めるVRMMO(仮)  作者: 天 トオル
6.魔物使いの国
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148.物語の中(破)

 ミーシャからハーメルの装備を受け取ってから数日たった。

 冬期休暇も残すところあとわずかとなったある日。

 俺は大図書館で馴染みとなったギルド職員から紹介状を受け取っていた。


 代わりに資料整理をする人がいなくなると残念がられたが、快く紹介状を書いてくれた。

 大図書館資料整理のクエストを受け続けたおかげで司書の職業レベルと魔物知識のスキルレベルが大幅に上っている。

 資金も大分貯まってきたので、当初の目的を果たそうと思う。


 ちなみに今回貯めた資金で、ハーメル以外のメンバーの装備も新調する予定だ。

 もちろん俺の装備についても新しいものをイトス達に注文中である。

 次に向かう地域が治安的に不安らしいので、できるだけ準備はしておきたい。

 紹介状を受け取った俺はギルド職員に地下室へと案内される。


 薄暗い石造りの階段を降りた先には鉄格子で封鎖された部屋があった。

 イニシリー王国の大図書館にあった危険図書の保管室は単純に隔離された部屋だったが、ここは何かを閉じ込めている牢獄のようだ。

 俺は図書館に似合わない兵士のような恰好をした職員に紹介状を見せる。


「紹介状は確認した。わかっているとは思うが、ここには危険な本が多く所蔵されている。何かトラブルが発生しても自己責任でお願いする」

「わかりました。一つ確認したいのですが、ここはとても厳重に保管されているんですね。以前、別の図書館で保管室に入った事があるのですがここまで堅牢な部屋ではありませんでした」


 兵士の格好をした職員は俺の質問に一つ頷き。


「ほう、別の図書館の紹介状も持っているのか。君は司書ギルドに協力的な人物のようだね。……おっと、どうしてここが牢獄のようになっているかだったかな? 一つ言えることは拘束された本は開けないほうがいい」

「本を拘束しているんですか? ……わかりました。心に留めておきます」


 本を拘束しているとはどういうことだろうか?

 イニシリー王国の図書館で見た危険図書は触れたり開けなければ問題はなかった。

 グリモのように本型のモンスターがいるのなら職員が討伐しているはずだ。

 しかし、ここを管理している人からのありがたい忠告だ。注意しておくとしよう。


 兵士の格好をした職員に鉄格子を開けてもらい中へ入る。

 鉄格子の中はひんやりとした空気に包まれており、仄かにランタンの明かりが通路を照らしていた。

 石造りの通路には左右に鉄の扉があり、それぞれの個室に本が保管されているそうだ。


 扉には部屋に保管されている本の注意事項が書かれている。

 俺は注意書きを確認しながらチェーンクエストの本を探す。

 拘束された本があるという事だったので何かしら物音がするかと思っていたが、余程強固に拘束しているのか壁や扉が重厚なのか辺りを静寂が包んでいる。


 全ての部屋を確認した俺はチェーンクエストの本が所蔵されている部屋の前に来ている。

 他の部屋には入っていない。

 ここにある本は厳重に保管されているだけあってイニシリー王国にあったものに比べてはるかに危険なものが多かった。


 本を開いた人が今まで出会った中で最強のモンスターを再現する本や、読むと発狂する本、触ると同時に超上空に転移させられる本なんてものもある。

 拘束されている本を見てみたいと思っていたが、本のラインナップを見て目的だけ完遂することにした。


 “読む人で内容が変わる本”と書かれた扉を開く。

 中へ入ると狭い部屋の中、中央の机に見覚えのある本が置かれていた。

 俺は以前そうしたように本を手に取ってページを開く。


 ある村でモンスターのスタンピードに襲われる悲劇が起こった。

 そのスタンピードで愛する家族を失った少年……アルフ。

 彼は自分の村が襲われた原因を調べるために剣士ギルドで修業を始める。

 数年後、自分の力だけでは調査も難しい事を痛感した彼は協力してくれる仲間を探すべく世話になった剣士ギルドを後にするのだった。“



≪条件を満たしました。チェーンクエスト あなたの選択は? (2) を受けますか?

 YES/NO≫


 冒頭は俺が王都で選んだストーリーから始まり、白紙のページまでやってくるとチェーンクエストのウインドウが現れる。

 俺は懐かしさを覚えながらウインドウのYESをタップした。

 YESを選択すると同時に本が輝きだし、俺の視界はブラックアウトする。


 目を開けると以前のように青年……アルフの背中を視界にとらえる。

 どうやら、前回と同じように背後霊のような状態でついていくスタイルのようだ。

 青年は町中を歩いている最中のようで、食処らしき看板を掲げる建物に入っていく。


「おーい。こっちだ、こっち!」

「待っていましたよ」

「もー! 遅ーい! 勝手に始めちゃってるよー」


 アルフがお店に入ると、大きなテーブルで飲み食いしている3人組の男女に声をかけられる。

 どうやら、すでに仲間がいるようだ。

 声をかけられたアルフは男女のいるテーブルに向かい、イスに座る。


「おー、アルフ! 今日はお疲れ様! いやーオルトロスを狩れる日が来るとはな~。ランクAになれる日も近いか~」


≪彼は何と返答する?

1.お前の盾で守ってもらえたから楽に攻撃できたよ。

2.お前が先に相手の位置を捕捉してくれていたからだ。

3.お前の拳にオルトロスも怯みっぱなしだったな。 ≫


 ここで前と同じように選択肢が出る。

 どうやら強敵を狩り終えた後で、戦勝パーティーのような事しているようだ。

 俺は現れた選択肢を確認する。


 選択肢を見るとこの男が先の戦いで何をしていたかを選ぶらしい。

 参考として男の容姿を確認するが、装備を外しておりラフな服装なためかどの選択肢でもありえそうな見た目をしている。

 髪は短髪、細身ではあるが鍛えているようでそこそこ筋肉がついている。

 他の女性2名もラフな服装でパーティー内での役割がわからない。

 片方は小柄で快活そうなショートカットの少女でもう片方は長身で大人しそうな金髪のサイドテールの女性だ。


 この選択肢が出てくるという事は今後、戦闘シーンが出てくるという事だろう。

 選択によって戦闘の結果が変わるのだろうが、この時点ではどれが正しいのかわからない。

 ひとまずアルフの目的が調査という事で斥候系の職業と思わしき2番を選択する。


「おっ? そうだろう、そうだろう。目一杯俺に感謝してくれてもいいぜ~」

「ダメよ、アルフ! こいつを調子に乗らせるとうるさいわよ」

「あんだと!」

「何よ!」

「まあまあ。お二人とも落ち着いて」


≪彼は何と言う?

1.二人の火魔法と治癒魔法にも助けられてるよ。

2.二人の水魔法と付与魔法にも助けられてるよ。

3.二人の闇魔法と光魔法にも助けられてるよ。 

4.二人の風と水の魔法によるコンビネーションも素晴らしいよね。 ≫


 女性2人は魔法職のようで得意魔法についての選択肢が現れる。

 最初の本には読んだ時に火の手が上がっていたと書いてあった。

 それがモンスターによって引き起こされたものだとしたら、選択肢は2か4である。

 しかし、アルフの外出理由的に炊事の手伝いをしていた可能性があるので決定的ではない。


 俺は悩んだ末、4を選択した。

 決定的ではないとはいえそれ以外に手掛かりがない事、4だけ表現が微妙に違ったので気になった事が決め手となった。


「ふふーん。そうでしょう、そうでしょう。こっちのなんちゃって斥候と違って正統派魔法使いだからね。それに私たちの合体技ならどんな巨大な敵でもイチコロよ!」

「お前だって調子乗ってんじゃねーかよ!」

「……似た者同士」


 その後も、パーティーメンバーで騒いでいたが話している内容が興味深かった。

 どうやら今回達成したクエストが何かの節目だったらしく、パーティー結成までの流れを語っていた。


 アルフがこの町にやってきてから最初に受けたクエストで魔法職の女性2人と知り合い、その後も同じクエストを受けることが多く3人でパーティーを結成するに至った。

 斥候の男の出会いは女性陣に対するナンパだった。

 ギルドの前でアルフを待っていた女性陣に斥候の男が声をかけたらしい。

 2人に軽くあしらわれるも、後から来たアルフと意気投合しパーティーに加わることとなったようだ。


 しばらく飲み食いが続いていたが、アルフが思いつめたように俯く。

 他のメンバーもアルフのただならぬ様子に心配そうにアルフを見つめる。

 静寂を破ったのは小柄な女性だった。


「もう! 急にどうしたの? アルフ!」

「そうだぜ! こんなめでたい席でしけた顔してんじゃねーよ!」

「大丈夫ですか? どこか体調でも?」


≪彼は何と返した?

1.前に話したと思うんだが……。

2.実は俺が冒険者になったのには理由があるんだが……。

3.ああ、気分が悪いからここでお暇することにするよ。 

4.実はこのパーティーを抜けたいと考えているんだ。

5.……。 ≫


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