147.司書クエストとハーメルの装備
首都トルトゥーラを目指しながらアイテムボックスがいっぱいになる度に、最寄りの総合ギルドで素材の売却を繰り返す。
最初はミーシャやイトスに売ろうかと考えていたのだが、現在各地でイベントモンスターの素材が溢れかえっておりプレイヤー間の売買では相当な値崩れを起こしているらしい。
金銭に変えるのであれば最低価格が設定されている総合ギルドがいいというわけだ。
トルトゥーラに戻った俺は当初の目的地だった大図書館にむかう。
理由は蔵書と司書ギルドのクエストを確認するためだ。
イベントモンスターの素材が思ったより高く売れなかったため、司書ギルドで受けられるクエストの報酬によってはそちらを優先してもいいかと考えたのだ。
それに司書ギルドのクエストをクリアするのにはもう一つ利点がある。
チェーンクエストの本は大図書館の危険図書が納められている部屋に所蔵されている。
危険認定された本が保管されている部屋に入るには司書ギルドの職員から信頼を得て、紹介状をもらう必要があるのだ。
俺が持っている紹介状はあくまでイニシリー王国の王都にある大図書館でしか適用されない。
ここの大図書館の危険図書がある部屋に入るには新たに紹介状をもらわなければならないのだ。
一番確実なのは司書ギルドのクエストをクリアしていき職員から信頼を得る方法だ。
前回の古本屋のお婆ちゃんの件が例外なのであって、本来はこの方法が王道である。
金策をしつつ司書ギルドの職員からの信用を得られるので一石二鳥というわけだ。
俺は大図書館の一角にある司書ギルドのカウンターへ向かう。
……………………。
≪司書のレベルが上がりました。≫
≪熟練度が一定に達したため、スキル「魔物知識」がレベルアップしました。≫
≪熟練度が一定に達したため、スキル「種族知識」がレベルアップしました。≫
≪司書のレベルが上がりました。≫
≪熟練度が一定に達したため、スキル「魔物知識」がレベルアップしました。≫
≪司書のレベルが上がりました。≫
≪熟練度が一定に達したため、スキル「魔物知識」がレベルアップしました。≫
≪オラズ・テイマーのレベルが上がりました。≫
≪従魔ハーメルがレベルアップしました。≫
≪従魔ヌエがレベルアップしました。≫
≪従魔エラゼムがレベルアップしました。≫
≪従魔グリモがレベルアップしました。≫
≪従魔カレルがレベルアップしました。≫
≪従魔ジェイミーがレベルアップしました。≫
≪熟練度が一定に達したため、スキル「土魔法」がレベルアップしました。≫
≪従魔エラゼムの練度が一定に達したため、スキル「歩行術」がレベルアップしました。≫
≪イベントポイントが66ポイント加算されます。≫
結局トルトゥーラを拠点として大図書館で司書ギルドのクエストとイベントモンスターの殲滅を交互に繰り返すことにした。
金策だけ考えたのであれば司書ギルドのクエストを受けた方が良いのだが、イベントのポイントとイベントモンスターの素材を確保しておく必要もあるだろう。
それにあまりマイエリアに放置しておくと従魔達もストレスが溜まるかもしれない。
魔物使いの国にある大図書館というだけあって司書ギルドのクエストもそれにちなんだものが多かった。
各地のテイマーギルドから報告されたモンスターのステータス情報を整理し、重複していない情報があれば職員に報告して資料に追加する。
報告される情報のほとんどがすでに報告済みの情報ばかりであるためか、職員の人たちは代わりに整理する人の登場をかなり喜んでいた。
時々クエストとして受けるならいいが、日常業務で変わり映えの無い作業は苦痛だろう。
俺としても報告書の整理をするだけでかなりの報酬をもらえるので、まさにWIN-WINである。
おかげで司書ギルドの職員からは覚えが良く、何とか冬期休暇の間には紹介状をもらえそうだ。
……………………。
しばらく同じルーティーンを繰り返していたある日、ついにミーシャに頼んでいた装備が出来上がったという事で取りに来てほしいと連絡が入った。
ミーシャに生産クランのクランルームへの招待をしてもらった俺は総合ギルドの転移の扉へと向かう。
生産ギルドのクランルームにやってきた俺は最初来る場所を間違えたのではないかと思った。
真ん中にギルドで見かけるような円いカウンターがあり受付らしき人達がプレイヤーたちと話している
周りの壁には扉と看板しかない。
転移の扉の前で立ち止まっていても仕方ないので、カウンターで受付をしている人に話しかけてみる。
話しかけてみて分かったが、カウンターにいる人たちはほとんどがNPCだった。
生産系のギルドでは助手を雇う制度があるらしく、ここで受付をしている人たちは生産クランで雇われているらしい。
受付の人に要件を伝えた俺はミーシャのいる部屋に案内してもらう。
どうやらドンハールさんたちはクランルームをショッピングモールに見立てた構造にしているらしい。
鍛冶や調薬など様々な生産物を部屋ごとに区分けして、メンバーがそこに納品するシステムを取っているらしい。
俺は数ある部屋の中でも、個人的な取引の時に使用するらしい個別相談室なる場所へ通された。
部屋の中は沢山のテーブルとイス、そしてテーブル同士を分ける仕切りが並んでいた。
その様は大きな銀行のようにも見える。
俺は部屋の中央くらいのテーブルに案内された。
「お久しぶりでーす。ウイングさーん! しっかりハーメルちゃんを連れてきてくれましたか?」
「久しぶりだな、ミーシャ。一応ハーメルも連れて来たぞ」
「チュウ……」
これから何が起こるか予想できてしまったハーメルは最初から諦めの境地のような顔をしている。
一応フォローとしてミーシャにはほどほどにしてやってくれと言っておく。
ミーシャがハーメルを可愛がっている間にミーシャに作ってもらった装備の性能を確認する。
忍者の上衣・壱(ネズミ用) 真っ黒な布で作られた上衣。暗闇に紛れやすい。
耐久値 250
耐久力 +14
重量 1
隠密系スキルに補正(小)
忍者の袴・壱(ネズミ用) 真っ黒な布で作られた袴。暗闇に紛れやすい。
耐久値 250
俊敏力 +10
重量 1
隠密系スキルに補正(小)
忍者の頭巾・壱(ネズミ用) 真っ黒な布で作られた頭巾。暗闇に紛れやすい。
耐久値 150
耐久力 +6
重量 1
隠密系スキルに補正(小)
小さな上質わらじ(ネズミ用) 藁で編まれた小さなわらじ。
耐久値 110
俊敏力 +11
重量 1
説明文的には前回と違いがみられないが、性能は以前の物よりも高い。
ミーシャの話では素材が以前より良く、技術力も上がっているのでそれが性能に反映されているとの事だ。
しかし、詳しい違いを見たい場合は鑑定スキルで見なければいけないらしい。
俺はミーシャの手からハーメルを救出すると、新装備を装備させる。
以前の物より着心地は良いようで、ハーメルも満足げに頷く。
「ハーメルも喜んでいるみたいだな。ありがとうミーシャ」
「私もあれから腕を上げましたからねー。お礼は受け取りますけどー、それならもう少しくらいハーメルちゃんと遊ばせてくださいよー」
「悪いな、ハーメルも可愛がられるのが好きじゃないみたいでな……。それより前に相談していた細工師の件はどうなってるか聞いてもいいか?」
俺は話題を逸らすために以前頼んでいたことを聞いてみる。
「ん? あー、ハーメルちゃんの装備を依頼した後に別件で頼まれた話ですね。一応ドンハールさんにも話を通してあるのでそろそろ紹介できそうです」
「そうなのか。……ちなみに基本的な料金ってどれくらいかわかるか?」
「うーん、そうですねー。私も専門では無いので詳しくはわからないですが……」
ミーシャも専門外なのでアクセサリーは完成品の値段しか知らないようだが、十数万から数十万くらいはするらしい。
有名なプレイヤーの場合はさらに増えるそうだ。
あくまで頼みたいのは宝石や鉱石の加工なので、完成品ほど値段は張らないだろう。
一応、初心者から中級者辺りで紹介してほしいことと宝石・鉱石の加工を依頼したいことは頼んでいる。
ドンハールさんは俺のスタンスについても知っているはずなので任せておけば大丈夫だろう。
俺はミーシャにお礼を言った後、クランルームを後にした。




