146.金策と進化ラッシュ
親アザラシを見送ったところで、受け取った結晶を確認する。
大きさは手で握りしめるギリギリの大きさで、見た目は透明な六角柱で中に薄っすらと雪の結晶があった。
雪の魔法結晶
ホームオブジェクト。
マイエリア・マイルームに設置すると、マイエリアの天候を雪に変更することができる。
マイルームの時は冬景色と室温低下が発生し、マイエリアでは積雪、気温低下が発生するが池や川の凍結は起こらない。
※他プレイヤーに譲渡不可及び破棄不可
まさにウィンタークエストにふさわしい報酬と言える。
特にテイマーは今回のウィンターイベントで発生しているモンスターをテイムしたならば、持っていると従魔が喜ぶかもしれない。
俺の従魔ではヌエとジェイミーが寒い地域に生息しているモンスターだし、カレルも大丈夫なはずだ。
エラゼムとグリモにも関係は無いので、マイエリアで使ってみてもいいかもしれない。
唯一ハーメルが心配ではあるが、基本的に俺から離れることが無いので問題は無いだろう。
ジェイミーをリュックサックに戻し、総合ギルドから親アザラシの事を報告した俺はマイエリアに転移する。
雪の魔法結晶を試したいのもあるが、カレルをパーティーに加えるためだ。
第1回のイベントで絆のペンダントを手に入れてしばらく経つが、ようやく真価を発揮することができそうだ。
マイエリアに着いた俺は雪の魔法結晶を取り出したところで気づく。
今、俺のマイエリアにはマイルームへ移動する小屋とため池しかない。
この広い草原に手で握りしめることができるくらいの結晶を設置するのに適した場所がないのだ。
俺は第2回イベントで手に入れていた家具の引換券を取り出す。
本棚にでも使おうかと思っていたのだが、ここで使ってもいいだろう。
家具引き換え券を使用した俺は一覧の中から結晶を置くのにちょうど良さそうなものを探す。
最終的に選んだのは木製のテーブルセットだ。
丸いテーブルにウッドチェアが2つ着いたもので、よく喫茶店の外に設置してあるようなものを選んだ。
これならば従魔の様子を見ながら読書する時も便利なのでちょうどいいと考えたのだ。
早速マイエリアにある小屋の前にテーブルセットを設置した。
設置の終わったテーブルの中央に雪の魔法結晶を置く。
すると、先ほどまで雲一つなかった空に暗い影が差す。
雨雲とは明らかに違う、深いというか暗いというか一目で雪雲とわかる雲が空一面を覆いつくす。
そして、チラつくように雪が降り始めた。
どうやらシステムのように一瞬で雪原に切り替わるのでは無く、ちゃんと時間をかけて降り積もる仕様のようだ。
浜辺で時間を使っていたのでそろそろログイン時間の限界に来ていた俺はカレルをパーティーに戻した後、一度ログアウトする。
休憩の後、再びログインするとゲレンデのような雪景色が目に飛び込んでくる。
俺がログアウトしている間にしっかりと雪が降り積もり、雪原を作り出したようだ。
ハーメルは寒さから逃げるように俺のローブの中に潜るが、他の従魔達は特に問題ないようだ。
俺は従魔達を連れてマイエリアを出て首都トルトゥーラへ引き返す。
≪オラズ・テイマーのレベルが上がりました。≫
≪従魔グリモがレベルアップしました。≫
≪従魔エラゼムがレベルアップしました。≫
≪従魔カレルがレベルアップしました。≫
≪従魔ハーメルがレベルアップしました。≫
≪従魔ヌエがレベルアップしました。≫
≪従魔ジェイミーがレベルアップしました。≫
≪熟練度が一定に達したため、スキル「付与魔法」がレベルアップしました。≫
≪従魔ジェイミーの練度が一定に達したため、スキル「治癒魔法」がレベルアップしました。≫
≪従魔グリモのレベルが一定に達しました。種族進化ができます。≫
≪従魔カレルのレベルが一定に達しました。種族進化ができます。≫
≪従魔エラゼムのレベルが一定に達しました。種族進化ができます。≫
≪イベントポイントが177ポイント加算されます。≫
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来た道を引き返しながら、視界にとらえた敵を全て殲滅していく。
強敵とのエンカウントを避けるために途中の町で休憩を挟みながらトルトゥーラを目指す。
急に殲滅戦を行い、俺にしては大量のポイントをゲットしたからか、しばらくしてスクラムから連絡が来た。
スクラムは俺がポイントを集められてないことを気にして大量にモンスターを倒していたと思ったようで、無理しなくていいという趣旨の内容だった。
俺はそれが誤解であることと、こちらの事情(金欠)で戦闘をしていることを伝える。
スクラムから納得したという内容の連絡が来たが、一応クランを脱退する時にもう一度説明しておこう。
イベントモンスターとの戦闘も慣れたもので効率的に蹂躙していく。
しかし、ここで一つ問題が発生した。どうやらこの辺りのモンスターのレベル帯とジェイミーのレベルが離れているせいかレベルアップが遅いようなのだ。
従魔で言うなら1回は進化しているくらいのレベルが無いとだめらしい。
1度、迷宮都市ラビンスに戻った時にでもレベリングするとしよう。
逆にそれ以外の従魔達は金策の為に連戦した事で、次々と第2進化可能レベルまで到達した。
それぞれのステータス画面から進化先を確認する。
≪従魔エラゼムは進化が可能です。進化先を選択してください。≫
・夜叉
・冬将軍
・鍋奉行(料理セット消費)
≪従魔グリモは進化が可能です。進化先を選択してください。≫
・インテリジェンスブック・アーカイブ
・インフォメーションブック
≪従魔カレルは進化が可能です。進化先を選択してください。≫
・マンダー・ランナーエース
・ビッグマンダー・ランナー
・ビッグマンダー
今回進化可能レベルに到達した従魔達の進化先リストはこんな感じだった。
際立って目につくのはエラゼムの進化先リストだろう。
正統進化らしい夜叉を除いては名前からわかるイロモノ枠である。
冬将軍はどちらかというと魔法特化のようで氷系のスキルに補正が付く特性になる。
鍋奉行は料理スキルに補正が大幅に入る特性を手に入れる様だ。
グリモは正統進化と前回増えた情報スキルによる進化先が追加されている。
カレルについては全てが正統進化のようにも見えるがビッグと付いている進化先が2つもある。
どちらも体長が3mくらいに大きくなるようでランナーが付いていない方は再び淡水性に戻るようだ。
しばらく考えた後、それぞれの進化先を決定した。
NAME「エラゼム」 ウイングの従魔
種族「夜叉」LV40 10UP 種族特性「魔法生物」「鬼気」
HP 490 80UP
MP 200 40UP
筋力 87 12UP
耐久力 54 9UP
俊敏力 30 9UP
知力 12 2UP
魔法力 27 6UP
スキル
「斧術LV9」1UP 「刀術LV1」 「不動心LV4」 「筋力上昇LV7」1UP 「迷彩LV2」 「氷魔法LV2」1UP NEW「歩行術LV1」
NAME「グリモ」 ウイングの従魔
種族「インテリジェンスブック・アーカイブ」LV40 9UP 種族特性「魔法生物」「装備品」NEW「学習・上」
HP 10
MP 970 230UP
筋力 1
耐久力 1
俊敏力 1
知力 65 11UP
魔法力 93 21UP
スキル
「魔力上昇LV6」2UP 「火魔法LV7」2UP 「水魔法LV5」1UP 「土魔法LV3」1UP「闇魔法LV4」1UP 「光魔法LV2」1UP「情報LV2」NEW「魔物知識LV1」
NAME「カレル」 ウイングの従魔
種族「ビッグマンダー・ランナー ♂」LV40 12UP 種族特性「両棲」「健脚」
HP 410 50UP
MP 710 220UP
筋力 22 9UP
耐久力 30 12UP
俊敏力 61 11UP
知力 17 2UP
魔法力 47 9UP
スキル
「隠者LV2」1UP「水術LV6」1UP「水魔法LV7」2UP「水泳LV4」「疾走LV5」1UP「運搬LV1」 NEW「HP上昇LV1」NEW「睡眠LV1」
エラゼムの見た目は今までの黒い甲冑の上から、黒い生地に金色の糸で刺繍が施された羽織を着ている格好に変化した。
スキルについては足さばきに関するアーツを使用できる歩行術というスキルが追加された。
グリモは今まで茶色の皮で綴じられただけの本だった。
それが背表紙や表紙にアンティーク調の金具が追加されており、閉じた時に使うフックが付いていた。
その様は正に名前の由来であるグリモワールにふさわしい姿である。
スキルの追加は無かったが、特性の「学習」が「学習・上」に強化された。
効果は単純に取得できる習得度・熟練度の効率が上がったようだ。
最後にカレルであるが、3mの巨体になるビッグマンダー・ランナーに進化してもらった。
体の色などは変わらないが、何となく足がガッシリしたような気がする。
これだけの大きさがあれば、今まで使用できなかった運搬スキルが活かせるようになると思ったのだ。
とはいえ、今までの行動的に筋力の値が低いのでもう少し時間がかかりそうだが……。
それに今まで使っていたリュックサックは今後ジェイミーが使っていく事になるので大きくなっても問題ないと判断したわけだ。
俺は首都トルトゥーラに到着するまで金策のために戦闘を繰り返しながら、進化した従魔達の調子を確認するのだった。




