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読書好きが始めるVRMMO(仮)  作者: 天 トオル
6.魔物使いの国
153/268

143.いろいろ確認

「キューー!」

「Σ(・ω・ノ)ノ!」


 ハーマンさんのお店から従魔達を引き取った俺は、マイエリアへ来ていた。

 従魔達にアザラシ親子の事と、それに伴う予定の変更を伝えるためである。

 時間制限のあるアザラシ親子のクエストをクリアすることを最優先として、送り届けた後は金策の為にモンスター狩りをしていく予定だ。


 アザラシ親子を発見した場所から大体の送り届け先は予想できる。

 パラティについて調べた時に、首都の水堀が大河から水を引いているのはわかっているのでおそらくそこから迷い込んだのだろう。


 予想通りならこの街から首都の水堀まで向かい、外側を歩いていくのが最も近道だろうがそれは難しいだろう。

 最短ルートを進むには消費アイテムのストックが心もとないうえ、それを買い足すだけのお金もないのだ。

 よって首都経由で比較的人通りの多く、戦闘回数が少ないだろうルートを選択するしかない。

 

「という予定にな……何やってるんだ?」

「キュ! キューー!」

「( ;∀;)」

「……」

「ギューー!」


 俺が予定を説明している最中に好奇心を抑えられなくなったのか、子供アザラシが俺の横に置いてあったグリモをヒレで触りだした。

 子供アザラシは先ほどまでため池の中にいたので、当然そのヒレは濡れておりグリモのページに水滴が付く。

 グリモがページが濡れた悲しみを顔文字で表現していると、エラゼムが子供アザラシからグリモを引き離す。

 親アザラシは子供アザラシに近づき説教をし始めた。


 グリモのページは現実の本のように濡れて皺ができることは無いので自然乾燥してもらうとして、このまま話を続ける雰囲気ではなくなってしまった。

 最低限伝える事は伝えたので、ひとまずお開きにすることにした俺は1人マイルームへ向かう。

 マイルームに来た俺は所持品の整理をしつつ、ステータスから称号と職業スキルの確認をする。



「シャーロットの弟子」   上位職テイマー シャーロットに弟子入りしたことで取得した称号。

効果 ・・・この称号を持っている時、転移の扉より「シャーロットの工房」に転移することができる。

      この称号はオラズ・テイマーから転職してしまうと消失する。



 シャーロットさんが言っていた工房を使えるというのはこういう事か……。

 これを使えばいつでもドヴェルグ連邦国にあるシャーロットさんの工房に転移できる様だ。

 オラズ・テイマーに成りたてで、自分の拠点に鉱石を加工する設備の無い俺にはとてもありがたい。


 一定レベルの鉱石は他のプレイヤーに依頼することになるとしても、簡単な切り替え用のフォローオラズは自分で用意したい。

 そうしなければ、あっという間に金欠になり読書の妨げになる可能性があるからな。

 続いて、職業スキルを確認する。



「魔石晶従魔術」  職業スキル

※自分・自分の従魔を対象にできる。


 アーツ  

・エンチャント 消費MP3000 ・・・鉱石・宝石・魔石に種族特性、魔法スキルを付与する。このスキルによりエンチャントされた宝玉はフォローオラズと呼ばれ、魔石晶従魔術のアーツであるコネクトにより従魔に装着することができる。


・コネクト 消費MP1500 ・・・フォローオラズを自らの従魔に装着する。

装着された従魔はフォローオラズにエンチャントされている種族特性や魔法スキルを獲得し、使用することができる。ただし、装着対象の従魔に不適切な種族特性のエンチャントがあるフォローオラズを装着させてしまった場合、装着したフォローオラズはロストして従魔はリスポーンする。


・リムーヴ 消費MP1500 ・・・自らの従魔に装着されているフォローオラズを外すことができる。



 大体シャーロットさんに説明された通りの効果だ。

 職業スキルにはレベルが存在せず、プレイヤーのステータスに依存する面が大きいとシャーロットさんは言っていたが、このスキルはMP量で間違いないだろう。

 最終試験がMPの総量というだけあって一つ一つのアーツが大量のMPを消費するスキルだ。


 俺はアイテムボックスから自分で研磨した鉱石を一つ取り出す。

 シャーロットさんから第2の課題で研磨した鉱石は自分で使っていいと言われていたので、合格をもらった鉱石は全てアイテムボックスにしまってある。


 今日はこれ以上ログインする予定は無いので、一度エンチャントを試してみる事にした。

 丸くカットされた鉱石に対して、魔石晶従魔術のアーツ、エンチャントを発動する。

 すると、ウインドウが現れてエンチャントできる項目の一覧が表示された。


 どうやら本当に最低限のエンチャントができる品質のようで、エンチャントできるのがレベル1の魔法スキル1つだけだった。

 一覧の羅列から見るにレベル5の魔法スキルをエンチャントできる鉱石以上でなければ、種族特性をエンチャントできないようだ。


 今回はテストという事で光魔法のレベル1をエンチャントしてみる事にした。

 一覧から光魔法を選択して鉱石にエンチャントを発動する。

 MPを大量に消費したことによる虚脱感を感じながら、鉱石に目を向けると薄い膜のような光を帯びていた。

 しばらくしてその光が消えると、元の黒い鉱石だけが残った。



 フォローオラズ 小 (オブシディアン)(カボションカット)

 エンチャント ・・・光魔法LV1

※他プレイヤーに譲渡不可



 俺は鑑定スキルを持っていないので、元の状態がわからないがエンチャント自体は成功しているようだ。

 どうやらエンチャントでフォローオラズにしてしまうと他人への譲渡はできなくなってしまうらしい。

 フォローオラズを使用するのはオラズ・テイマーだけなので無用の心配だと思うが……。


 しかし、あの修行の日々を考えると自分で替えを用意するのはしばらく無理そうである。

 その辺りはミーシャに細工師を紹介してもらってから相談だな。

 読書の邪魔にならない程度にコツコツ修行するしかないだろう。


 スキルの確認を終えた俺は、いまだにじゃれ合っている従魔達とアザラシ親子に声をかけてからログアウトした。


 ……………………。


 夕飯の支度をしていると、ゲームを終えたらしい春花が声をかけてきた。


「お兄ちゃん。明日お父さんたちが帰ってくるって連絡があったよ!」

「そうか。何とか年末には帰って来られそうで何よりだな」

「それでね……。お兄ちゃんに進路の件を確認したいんだって? お兄ちゃんにも連絡したけど返信が無いってぼやいてたよ!」


 濡れた手を拭いて端末を確認すると確かに父親から連絡が来ており、進路について話し合いがしたいので明日の予定は開けておくようにとあった。

 俺は了解と返信した後、再び夕食の支度に戻る。


「お兄ちゃんは結構ゲーム内にいるようだけど、大学受験の準備はどうなの?」

「ああ、その辺は抜かりはない。成績は目指している大学のAO入試の基準を超えているし、課題についても着実に準備は進めているよ」

「うがーー! 本当にうらやましい……。なんで! 兄妹で! こんなに頭の出来が違うのか! 私なんて受験シーズンになったら勉強漬けの日々確定なのに!」


 それはもう目標を定めて、コツコツ準備してきた結果としか言えないだろう。

 かなり早い段階から目指す大学を決めていたので、準備を始めるのが早かったのも良かったかもしれない。


 両親も俺の意思を尊重すると言ってくれているので、今回の確認は俺の意思が変わっていないか最終確認したいといったところか……。

 俺は春花を宥めながら、夕食の準備を進めるのだった。


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