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読書好きが始めるVRMMO(仮)  作者: 天 トオル
6.魔物使いの国
152/268

142.転職

「………………うん、全部問題ないね。……合格だよ」

「しゃーーーー!」


 シャーロットさんから合格の言葉を聞いた俺はいつになくテンションの高い声を上げる。

 長編小説を読み終えた時とは、また違った達成感を得ながら最近の事を思い返す。

 ここ数日はゲーム内で読書ができず、現実の方で読書をするという本末転倒な状態が続いていた。

 しかし、ようやくその状態を抜けだせそうである。


「……びっくりした。……そんなにうれしかったの?」

「あっ、すいません。思ったより時間がかかっていたので……」

「……そう? ……比較的早い方だと思うよ」


 どうやら俺が突然叫んだので、シャーロットさんを驚かせてしまったようだ。

 謝罪しつつ理由を話すと、比較的早いと言われてしまった。

 これで早い方という事は不器用な人はどれだけ時間がかかるんだろうか?


 オラズ・テイマーは特性上、商人とテイマーの組み合わせが優れているだろう。

 高品質の鉱石を手に入れるのも、腕のいい細工師に鉱石の加工を依頼するのにもお金がかかるからだ。


 しかし、オラズ・テイマーの修行を考えると商人とテイマーの組み合わせのプレイヤーが転職するのは難しいかもしれない。

 ハルに言えば、廃人プレイヤーを甘く見ていると言われそうだが……。


「……それじゃあ、最終試験のためにパラティに戻ろうか」

「わかりました」


 第2の課題を達成した余韻に浸っていると、シャーロットさんに声をかけられて思考を引き戻される。

 高校の冬期休暇も半分を過ぎようとしているので、そろそろクリアして転職を完了しておきたい。

 最終試験の為、シャーロットさんに連れられてパラティに帰還する。


 パラティにあるシャーロットさんの家へと戻ってきた俺は第1の課題で使用していた部屋で待機するように指示される。

 しばらく待っていると、総合ギルド等でよく見かける水晶の魔道具を持ってシャーロットさんがやってきた。

 最終“試験”と言っていたので、時間的にはそこまでかからないと思っていたが何かの検査をするようだ。


 シャーロットさんに水晶を差し出されたので手を乗せる。

 水晶が少し光った後、シャーロットさんが首を傾げた。


「……テイマーの職業レベルが低い?」

「そうですね……。あまり戦闘を積極的にやってきたわけでは無いので、順調にレベルアップしてきたとは言い難いです」

「……そうだとしてもこれは低すぎるような気がする」


 まさか、ここまで来て不合格なんてことは無いよな?

 話から推測すると職業テイマーのレベルが足りないらしいので、ここからレベル上げという事になるのだろうか?

 俺がそんな推測をしているとシャーロットさんが続けて聞いてくる。


「……この水晶で確認したかったのはあなたのMP量だよ。……ある程度MP量が無いと魔石晶従魔術が使えないからね。……君は近接系のステータスを優先的に上げているの?」

「いえ、そこまで近接メインではありませんのでステータスは満遍なく上げています」


 そういうとシャーロットさんは再び首を傾げた。


「……そうだよね。……あれだけの種類、魔法系のスキルを持っていて近接メインで戦っているはずはないよね。……けど、それだとこのMP量はすこし少ないと思うよ」

「あーー。MPに関していえば、従魔であるグリモが担っていたので俺自身のMP量はそこまででは無いかもしれません」


 必要なのはMP量という事なので、シャーロットさんに許可を取ってハーマンさんに預けている従魔達を引き取りに向かう。

 最終試験は単純にMPの総量確認という事なのでグリモを装備しても足りない場合はレベル上げに勤しむことになるそうだ。


「おや? ウイングさん。お久しぶりですね」

「お久しぶりです。ハーマンさん。従魔達を引き取りたいのですが……」

「ほほ。転職は済んだという事ですかな?」

「いえ、それが……」


 俺は最終試験でMPが不足している事を伝えて、従魔達が必要になったことを話す。


「なるほど……。そこまできているのでしたら、追加料金の請求はしなくても済みそうですね。わかりました。預かっていた従魔達をお返しします」

「預かっていただきありがとうございました」

「いえいえ。最近は喫茶店の方もお客様が少なく暇を持て余していたので、こちらとしても楽しくやらせていただきました」


 ハーマンさんにお礼を言いつつ、従魔達を引き取る。

 どうやら最後までハーマンさんに歯が立たなかったようで、従魔達は一様に悔しそうな雰囲気を漂わせている。

 それを見たハーマンさんは「また、遊びに来てくださいね」とにこやかにほほ笑むのだった。


 従魔達を引き取った俺は再びシャーロットさんの家でMP量の測定に挑んでいた。

 今度はグリモを装備して挑んでいるので、俺のMP量は3000を超えている。

 もし、これで足りなければMP量を増やすためにレベル上げに行かなければならない。

 水晶に手を置いたまま緊張していると、シャーロットさんはにっこりとほほ笑む。


「……ギリギリだけど、規定値以上に到達しているね。……オラズ・テイマーへの転職を認めます」

「ありがとうございます」


 第2の課題をクリアした時にテンションのまま叫んで、シャーロットさんを驚かしてしまったので今回は平静を装う。

 しかし、シャーロットさんの表情を見るに、俺の顔にうれしさがにじみ出ていることだろう。


「……それじゃあ、ギルドカードを取り出して」

「わかりました」


 俺はシャーロットさんに言われたとおりにギルドカードを取り出す。

 シャーロットさんもギルドカードを取り出し、俺のギルドカードに重ねた。


「……ウイングは私、シャーロットの弟子としてすべての修行を完遂した事を認めます。……よってここにウイングをオラズ・テイマーとして認定し、技術の継承を行います」


≪特殊転職クエスト 先輩テイマーに弟子入り を完了しました。

プレイヤー ウイングの戦闘職がテイマーからオラズ・テイマーになりました。

 称号 シャーロットの弟子 の効果が変更されました。

 ステータスをご確認ください。≫


「……お疲れ様。……私も久しぶりに弟子が転職までたどり着けたことをうれしく思います。……今後はオラズ・テイマーの力を十二分に引き出せるように頑張ってください。……それとあなたがオラズ・テイマーである限り、私の工房に自由に行けるようにしておいたよ」

「ありがとうございます! お世話になりました」


 俺はシャーロットさんにお礼を言い、頭を下げる。

 長い期間シャーロットさんの家に通い詰めていたが、それも今日で終わりかと思うと感慨深いものがある。

 しかし、修行が終わった後も予定は目白押しなので気持ちを切り替える。

 シャーロットさんの家を後にした俺は従魔達に現在の状況を説明するためにマイエリアへと転移するのだった。



NAME「ウイング」

種族「人族」 種族特性「器用貧乏」

 HP 750 《+?》   100UP

 MP 2710 《+?》  510UP


筋力 40 《+?》    2UP

耐久力 65(+72) 《+?》 5UP

俊敏力 55(10)《+?》 2UP

知力 180《+?》   20UP

魔法力 100《+?》  15UP


※グリモのステータス補正は《 》内の数値。


戦闘職 NEW「オラズ・テイマー」LV40  4UP

生産職・特殊職「司書」LV34  4UP  


職業スキル

 NEW「魔石晶従魔術」

戦闘スキル

「調教術LV5」「隠密LV5」「盾術LV7」「杖術LV4」「指揮LV1」


魔法スキル

「闇魔法LV8」1UP「水魔法LV5」「火魔法LV5」「土魔法LV5」「光魔法LV3」「風魔法LV2」「無属性魔法LV1」「空間魔法LV2」「付与魔法LV2」1UP


知識スキル

「言語LV3」「読書LV9」1UP 「魔物知識LV6」3UP 「種族知識LV2」1UP 「医療知識LV1」 「気候知識LV2」 「迷宮知識LV4」「植物知識LV1」「風土知識LV1」

NEW「魔法知識LV1」 NEW「鉱物知識LV3」


生産スキル

「掃除LV7」「料理LV3」 NEW「細工LV4」 NEW「採掘LV3」


装備品


グリモ(インテリジェンスブック・リスト)

甲殻類のタワーシールド

黒司書のコート

黒の靴

司書の目録(上)

文豪のローブ

絆のペンダント


総重量 24


称号

「才能を示す者」「ナビさんのお気に入り」「用意周到」「物語の旅人」 NEW「シャーロットの弟子」


 135.最初の講義で上級職に関する説明が不足していたので修正しています。

 最後に記載されている主人公のステータスの総SP量が多いのはそれが理由です。

 グリモのステータスが?になっているは、この後すぐにステータスが変動するためです。

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