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読書好きが始めるVRMMO(仮)  作者: 天 トオル
6.魔物使いの国
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137.従魔道場とスキル習得ラッシュ

 シャーロットさんに紹介状を書いてもらった俺は、従魔達を連れて勧めてもらった従魔道場に来ていた。

 見た目は老舗の喫茶店みたいな風体で、あまり道場という雰囲気ではない。

 確かに来る途中見かけた庭のようなエリアは広かったが、魔物使いの国であるパラティではそれほど珍しくもないが……。

 特にこれといって道場らしい特徴が無いので、先に説明されてないとわからないだろう。


「すいません! シャーロットさんの紹介で来ました! どなたかいませんか?」


 俺がノックしながら声をかけると、ドアベルを鳴らしながら扉は開く。

 中から出てきたのはこれまた道場主という言葉が似合わない、執事のような恰好をした細身の老紳士だった。


「いらっしゃい。立ち話もあれだから、中に入ると良い。ただ、入り口から入れない子は裏に庭があるからそこで待っていてもらえるかな?」

「わかりました」


 ヌエとエラゼムが喫茶店の入り口から入れなかったので、裏庭で待機してもらう。

 中へと上げてもらい室内を見渡すが、やはり中も喫茶店のような内装になっていた。

 俺は老紳士に案内されるままにカウンターのイスに腰かける。

 老紳士はカウンターへと向かい、棚からティーセットを取り出して紅茶を2人分用意する。


「さて、まずは自己紹介から始めるとしよう。私の名はハーマン。ここでしがない喫茶店を営んでいるよ。まぁ、君はお茶を飲みに来たわけでは無いようだがね。ああ、これはサービスだよ」


 老紳士ことハーマンさんは苦笑しながら、俺の前に紅茶を置く。


「そうなりますね。というよりシャーロットさんには個人の従魔道場として紹介されたので、ここが喫茶店であるなんて知らずに来てしまいました」

「そうだろうね。……あの子は必要以上のことは言わない子だからね」


 俺は用意してもらった紅茶を飲みながら、ここへと来た経緯を説明する。

 シャーロットさんの弟子になったので修行をしている間、従魔を鍛えてほしい旨を伝える。

 ハーマンさんは俺の話を聞き終えた後、ゆっくり口を開いた。


「他ならぬシャーロットからの紹介だからね、その話は引き受けよう」

「本当ですか!」

「料金も格安でやってあげよう……ただし」


 ハーマンさんは一度話を切り、自分用に用意していた紅茶を一口啜る。


「これまでも何度かシャーロットの弟子といっていたテイマーの従魔を預かったが、その誰もが途中放棄して従魔を引き取っていったよ。君がそうなるとは言わないが、そうなった場合は法外な料金を請求するとしよう」


 これまでシャーロットさんの弟子になったテイマーは転職できずに諦めていった。

 ハーマンさんも従魔を預かっている身としては、修行をやり遂げて従魔を迎えに来てほしいのだろう。

 あとは意気消沈したシャーロットさんを何度も見ているから、今度もそうなるのを危惧しているのかもしれない。


「大丈夫です。少なくとも今日から始めている修行は、俺にとって日常とさして変わりありませんから」

「ほほ、最初の修行が日常と変わらないとは……。大体最初の修行で半分以上はやめていくそうなのだが、そこまで言うならいいだろう。君の従魔達は責任を持って私が面倒を見よう」


 ハーマンさんは面白いものを見たという顔をしながら、快く従魔達の修行を引き受けてくれた。

 俺が修行している間、従魔達もしっかりと鍛えてもらえそうだ。


 俺とハーマンさんは従魔達を連れて裏庭へと移動した。

 待機していたヌエとエラゼムも含めて、従魔達をハーマンさんに預ける手続きを済ませる。

 手続きを終えた俺は、従魔達に声をかけた。


「俺が修行している間、ハーマンさんがお前たちを鍛えてくれることになった。皆ハーマンさんに迷惑かけないようするんだぞ」

「チュウーー!」

「クーー!」

「……」

「(`・ω・´)」

「ガーー!」

「ほほ、元気な子たちですね。これは鍛えがいがありそうだ」


 ハーマンさんに従魔達を預けた俺は、ログイン時間が限界だったこともあり一度ログアウトする。

 これからは集中してスキル習得の名目で読書を楽し……スキル習得に努めるとしよう。


 ……………………。



≪従魔カレルがレベルアップしました。≫

≪従魔グリモがレベルアップしました。≫

≪従魔エラゼムがレベルアップしました。≫

≪従魔ヌエがレベルアップしました。≫

≪従魔ハーメルがレベルアップしました。≫

≪従魔ヌエの練度が一定に達したため、スキル「嘴術」がレベルアップしました。≫

≪従魔ハーメルの練度が一定に達したため、スキル「睡眠」がレベルアップしました。≫

≪鶴系統の種族である従魔ヌエが「指揮」「咆哮」スキルを使用しました。「指揮」スキルの派生アーツ「鶴の一声」を習得しました。≫


≪熟練度が一定に達したため、スキル「読書」がレベルアップしました。≫

≪熟練度が一定に達したため、スキル「魔物知識」がレベルアップしました。≫

≪司書のレベルが上がりました。≫

≪習得度が一定に達したため、スキル「細工」を習得しました。≫

≪習得度が一定に達したため、スキル「採掘」を習得しました。≫

≪習得度が一定に達したため、スキル「魔法知識」を習得しました。≫

≪習得度が一定に達したため、スキル「鉱物知識」を習得しました。≫



 それから数日、俺は必要スキルを粗方習得していた。

 ログを見てもわかるように、本当に戦闘職の転職クエストか疑いたくなるようなラインナップである。


 ちなみに魔法知識というのは魔法教本とは違い、魔法の歴史や魔法がどのように発動するか解説した本を読んで習得した。

 読書した時の量から、魔法教本では習得度を稼げていなかったようだ。

 魔法スキルとは全く別の分野という事らしい。


 従魔達の方は旅に出ていた時ほどではないにしろ、着実にレベルアップしている。

 スキルの習得はしていないものの、ヌエが面白い派生アーツを発現させていた。

 この派生アーツは使用後、最初に使用した声を使うスキルが無効化されることは無いという効果だ。


 あくまで無効化されることは無いなので、咆哮などの確率で状態異常を発生させるものが確実に発生するというものではない。

 声を遮ったり無音空間を作り出してもスキルが使用できるといったものだ。


 ただ、このアーツに注目したのはログに残っていた通知の表記だ。

 普段は従魔がスキルなどを習得した時は「従魔のヌエがーーーー」で始まるところを「鶴系統の種族である従魔のヌエがーーーー」となっている。

 つまり、この派生アーツは種族も取得条件に入っているのだ。

 思えば、ハルが取得条件を隠していた狐火というアーツも種族が取得条件に入っていたのかもしれない。


 明日のログインで第1段階の修行も終わりを迎えるので、久しぶりに従魔達に会いに行くことにしよう。

 どうしても、一つ気になったことがある。

 ハーメルが修行中のはずなのに、睡眠スキルのレベルが上がっているのだ。

 まさか、修行をさぼっているなんてことは無いよな?

 ハーメル、俺は信じてるぞ! 


 主人公のスキル増えてまいりましたので、今後ステータスを表記する時は普段使わないスキルは

未使用スキル枠に入れたとして表記を控えようかと考えています。

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