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読書好きが始めるVRMMO(仮)  作者: 天 トオル
6.魔物使いの国
143/268

133.唐突な全滅と……

 タイトル通りにパーティーがほぼ全滅します。

 多少気分の悪い展開となっていますので、苦手な方は次の話から読んでいってください。

 出来るだけ早く投稿します(;^_^A


「(;’∀’)」

「チュウ……」

「さて、どうするべきか……」


 今、俺たちは目的地直前で足止めを食らっている

 魔物使いの国パラティの首都を目指して数日、予定としては後2回くらいのログインで首都に到着できそうなところまで来ていた。

 しかし現在、首都の手前で立ち往生している。


 俺達の視線の先では、次の街へと続く街道を塞ぐようにして、大きな影が徘徊している。

 雪降る真っ白な風景の中確認できるその姿は一見、犬のようにも見えるがそんなかわいらしいもんじゃない。

 大きさはゆうに10mを超えており、漆黒の体毛に覆われた体には3つの頭が付いている。


 おそらくウィンターイベントのモンスターではないが、ここに来る前に調べた出現モンスターのリストにもこのモンスターは載っていなかった。

 考えられるとすれば、誰かの従魔だったものが逃げ出したという事だろうか?

 おそらくそれはプレイヤーではないだろうが……。


 見た目がかっこいいのもあるが、醸しだす雰囲気から見て、1度や2度進化しただけのようなモンスターではないはずだ。

 俺がダンジョンで戦ってきたボスモンスターたちよりも強く見える。

 ダンジョンのランクで言えば、Cランク以上と見ていい。

 それほどのモンスターをプレイヤーが所持していて、手放すとは考えにくいのだ。


 件のモンスターと戦うのは避けた方がいいだろうが、迂回も戻るのも難しい。

 迂回しようが、前の街に戻ろうが1回は野営する必要がある。

 現在の天候は吹雪というほどではないが大量に雪が降ってきている。

 この状態で野営すると、次のログイン時にはテントが雪で埋もれて脱出不可能なんてことになりかねない。


 俺は考えた末、隠れながらの強行突破を選択した。

 戦って玉砕しようが、野宿して雪に埋もれようがリスポーンするのは確定事項だ。

 それならば、少しでも通過できる可能性がある方法をとる。

 というか、他の選択肢はあってないようなものだろう。


 俺は隠密スキルのアーツ潜伏を使用する。

 このアーツは同じ隠密スキルのアーツである気殺の効果を、パーティー全体に及ぼすことができるアーツだ。


 俺達はエラゼムを先頭にゆっくりと三つ首のモンスターに近づいていく。

 ヌエは安全のために上空に飛んで辺りの警戒をしてもらう。

 早く動くとエラゼムの甲冑から聞こえてくる金属のこすれる音が大きくなるため、急いで移動することができない。

 潜伏スキルも音は消してくれないため、音に反応して認識される恐れがあるのだ。


 モンスターとの距離が5mを切った時、俺の横を猛スピードで黒い物体が通り過ぎる。

 しかし何が通り過ぎたか確認することはできなかった。

 俺の目の前には先ほどまで警戒していた三つ首のモンスターが鎮座していたのだから……。


「チュウ!!」


 俺の指示を待たずしてハーメルが泥術で俺と敵モンスターの間に壁を生成する。

 相手は一度距離を置いてからあろうことか上空目掛けて火球を吐き出した。

 その火球は上空から援護しようとしていたヌエにクリーンヒットする。

 一撃で大ダメージを受けたヌエはやられはしなかったものの、そのまま飛んでいることができず墜落していく。


 助けたいところだが、迎えに行く余裕もない。

 水や土魔法で牽制を試みるが効果は無いようで、吹き飛ばされたエラゼムと積もった雪に墜落していたヌエが止めを刺されてポリゴンに変わってしまう。


「推奨ランクD以上って嘘だろ!」


 俺は悪態をつきながら魔法で牽制しながらの突破を試みる。

 調べるときに読んだ本には、ダンジョンランクD以上なら問題なく進めると書いてあった。

 俺達のパーティーはDランクダンジョンを攻略していた時より格段に強くなっている。

 それなのに、実際には手も足も出ずにパーティーを崩壊させるほどのモンスターが目の前にいる。


「チュウ!」


 後方でハーメル声が聞こえる。

 振り返ると、ハーメルが相手の攻撃を受けてポリゴンとなって消えていくところだった。

 俺のパーティー最速のハーメルをもってして、攻撃を躱すことも叶わないのか……。


「ガーー!」


 ここまで雪による行動阻害対策のために、俺が背負っているリュックの中にいたカレルが飛び出す。

 もう動けるのは俺とこいつしかいない。

 援護してやりたいが、先ほどの牽制でMPを使い切ってしまった。

 回復したくてもここまでの旅路でMPポーションの消費が激しく、アイテムボックスに残っていた分も使い切ってしまった。

 次の街で買い足そうと後回しにしていたことが悔やまれる。


「ガーッ……。ガッ!」


 水術を発動しようとしたカレルを容赦なく敵モンスターの攻撃が襲う。

 俺は意を決してカレルと敵モンスターの間に割って入る。

 もう逃げる事も叶わないなら、俺がやられてリスポーンしても一緒だ。

 これ以上カレルが傷つく必要もない。


 しかし、飛び込んだ俺をあざ笑うかのように敵の攻撃が俺を吹き飛ばす。

 それも器用に俺が持っていたグリモを狙って攻撃してきた。

 吹き飛ばされた俺はカレルも巻き込んで転がる。


「ガーー……」

「orz ( ;∀;)」


 カレルとグリモがポリゴンとなって消えたところで、ようやく相手が従魔を狙って攻撃していたことに気づく。

 思えば最初にエラゼムを攻撃してきた時に、後方にいた俺を巻き込まなかったのは不自然だ。

 つまり、主を残したまま従魔達だけ狩っていたわけだ。

 無様に雪の上に転がる俺の中で言いようのない感情がわいてくる。


 最初に全滅した時は第1回イベントの最終ボスの攻撃を受けた時だ。

 あの時は何が起こったかわからず、いつの間にかリスポーンしていた。

 第2回イベントの時にラピスさんと戦った時もほぼ全滅と言っていいだろう。

 あの時は相対した時から覚悟はできていたし、何とかパーティーの半分は生き残ることができた。


 しかし、今回の敵は圧倒的強さを持ってテイマーだけを残し、従魔達を全滅させた。

 さすがにここまでされては戦闘が二の次である俺でも怒りを覚える。

 俺は倒れたまま敵モンスターをにらみつけた。


 だが、見上げた先にあったのは弱者を蔑む目でも蹂躙してやったという口角の上がった口でもなかった。

 いつの間にか黒い靄を纏っていたそれは赤い瞳に悲しみを湛え、表情は怒りを表す3つの顔が俺をのぞき込んでくる。

 そのモンスターは悲しい目をしたまま俺に向けて前足を振り上げる。


 万事休すかと思われたその時、黒い靄を青い閃光が貫く。

 振り上げられた前足は俺を踏み潰すことなくその場にフラフラと下ろされる。

 俺が呆気に取られていると、さらに2発3発と青い閃光が敵モンスターを貫いた。

 俺達を蹂躙していた三つ首のモンスターは瞬く間にポリゴンへと変えられていく。


 ポリゴンが消えていった向こう側には、見覚えのある黒い猫が尻尾を揺らしながら欠伸をしていた。

 降り続く雪の中、その額にある青い宝石を燦然と煌めかせながら……。


 これはほぼ負け確イベントになりますが、年齢が低いプレイヤーの場合は

もう少しマイルドな展開になります。

 普通のゲームなら普通にある負け確イベントも、VRものだと大変難しいですね(;^_^A


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― 新着の感想 ―
[気になる点] VRゲームが実現出来る世の中になって、プレイヤーの行動がストーリーに縛られる事がなくなったゲームにおいて、未だに負け確イベントなんて残ってるものかなぁ? 例えばここまで一度も従魔を死…
[一言] ( ̄□ ̄;)!!オルトロス? いや、ケルベロス? いや、サイズ的にオルトロス??
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