130.テイマークエスト
ログインした俺は従魔達を連れてマイルームを出る。
現在、俺がいる魔物使いの国ではどの町や都市も道幅が大きくとられている。
その為、規格外に大きなモンスターじゃない限り問題なく連れ歩くことができるわけだ。
俺は総合ギルドから出てテイマーギルドに向かう。
首都ではないとはいえ国境付近であるため、それなりに大きな街なのでクエストも豊富ではないかと予想している。
それに岸嶋との約束もあるので、今日はこの街を出るつもりは無い。
テイマーギルドは総合ギルドの隣に併設されているが、規模がとてつもなく大きい。
建物自体は総合ギルドとそれほど変わらないが、その後ろに見える庭のようなエリア一面がテイマーギルドの敷地になっているらしい。
理由は単純で国境付近にあるこの街は自分の従魔でやってくる冒険者や商人が多い。
必然的に従魔を休ませるためのスペースが多く取られているわけだ。
テイマーギルドの中に入ると、凄まじい喧騒が聞こえてきた。
魔物使いの国というだけはあり、今まで立ち寄ったどのテイマーギルドよりも多くの人々が従魔を引きつれてカウンターやクエストボードの前にひしめき合っていた。
連れて居る従魔達も様々でウルフ系、鳥系はもちろんの事、スライム、クモ、ヘビはてはカブト虫のようなモンスターまでいた。
俺は室内の喧騒に圧倒されながら、人の少ないエリアへ移動する。
人の少ないエリアには小さなクエストボードがあったので、内容を確認してみる。
どうやら初心者向けのクエストボードらしく、ギルドランクがFからEの人向けのクエストばかり張られていた。
このクエストボードの前に人が少ないのは、魔物使いの国に行く前に初心者ランクであるFやEは卒業しているのが普通だからだろう。
俺としては好都合だったので、クエストの内容を確認してみる。
簡単なものでは自分の従魔のステータスを報告するというものがあった。
モンスターが従魔になると、自然には覚えないスキルに目覚める事もある。
そういった情報も集める事で、より完成度の高い魔物図鑑を完成させることが目的であるといった趣旨の事が書かれていた。
ご丁寧に従魔のステータスを外部に漏らすことはしない、といったことまで書かれている。
他にも裁縫の国のテイマーギルドにもあった羊毛や虫系モンスターが吐く糸の提供、エサの入手のようなクエストもあった。
ひとまず、最も簡単である従魔のステータス報告をすることにした。
このクエストは従魔のステータスを一匹報告するごとに1回の達成となるので、ギルドポイントを稼ぐのにとても都合がいい。
そのうえ今までにない報告があれば、さらに上乗せが期待できるとの事。
俺のパーティーの中で可能性があるとすれば、この前スキルスクロールで手に入れたスキルたちか図書館で時々発生するインテリジェンスブックであるグリモに関する事ぐらいだろうか?
こういったクエストは本来、ファーストのテイマーギルドで受けるべきクエストだろう。
自分がどれだけテイマーギルドに行っていなかったかがわかる。
クエストを受注した俺はそのままカウンターへと向かう。
カウンターの大きさは総合ギルドと同じくらいの規模で、大体5人くらいの職員が対応に当たっている。
俺はその中でも1番列の少ないところへ向かう。
列が少ない理由は一目瞭然で、そこにいる受付の容姿だろう。
他の受付を担当している職員は受付嬢や線の細い優男であるのに対し、そこにいるのは歴戦の戦士を思わせる風体の大男である。
何となく、ファーストで初めて総合ギルドを訪れた時のことを思い出す。
そういえば、あの時司書ギルドについて教えてくれたギトスさんはどうしているだろうか?
「おう、あんちゃんの番だぞ」
俺がゲームを始めた頃のことを思い出していると、順番が回ってきたようで受付から声をかけられる。
「従魔のステータスを報告するというクエストを受けたのですが、報告はどちらで行えばいいですか?」
「何だ? あんちゃんそんな従魔を連れて初心者なのか? みんな第1進化しているようだし普通はDランクくらいあってもおかしくないぞ……。おっと、それは今関係ないことだったな。とりあえずこちらに来てくれ」
厳つい見た目に反して気さくに話しかけてくる。
カウンターの隣にある扉を開け中に入るように促され、従魔達を連れて中へ入る。
広めの部屋ではあるが、真ん中に机がある以外は特に何も無かった。
「そんじゃ、さっそく従魔達のステータスを教えてもらおうか? とりあえず、これに触りながら従魔のステータスの確認をしていけば勝手に登録されるぞ。もし以前にこのクエストでステータスを報告している従魔がいたら、この作業をしている時にはじかれるからな!」
大柄の職員はそう言いながら、総合ギルドでおなじみの水晶のような魔法道具を取り出す。
俺は言われた通りに左手を水晶に置きながら、右手で従魔達のステータスを確認していく。
≪テイマークエスト 従魔のステータス報告 を5回クリアしました。報酬 2000ラーンをお受け取りください。≫
≪貢献ポイントがテイマーに10ポイント溜まりました。≫
≪テイマークエスト 従魔のステータス報告 において追加報酬が発生しました。200ラーンをお受け取りください。≫
≪貢献ポイントがテイマーに1ポイント溜まりました。≫
期待は薄かったが、追加報酬が発生した。
対象はカレルで、マンダー・ランナーで運搬スキルを持っていた種族は今まで報告が無かったとの事だった。
しかし、あるとしたらヌエの咆哮かエラゼムの氷魔法かと思ったんだが、予想が外れたな。
「あんちゃんは珍しい従魔を多く従えてるようだから進化したらまた報告してもらう事になるかもな? まっ、そんときゃここにはいないだろうけどな!」
どうやら進化した従魔についてはもう一度報告に行くことができるらしい。
その場合は、種族の珍しさに応じて報酬が変わるとの事。
そう考えると5体全員が1度進化しているので、かなり損しているのではないだろうか?
聞いてみたところ、今回の報酬に前回の報酬も込みだという。
水晶に手をかざしてステータスを確認した時に、進化直前のログも確認されていたそうだ。
何らかの事情によって報告前に従魔が進化してしまう事もあるので、そういった対策がとられているとの事。
俺の場合は完全に忘れていただけなのだが……。
……………………。
≪テイマークエスト エサの調達 を3回クリアしました。報酬 600ラーンをお受け取りください。≫
≪貢献ポイントがテイマーに3ポイント溜まりました。≫
報告クエストを終えた俺は、一度カウンターから離れて再び初心者用のクエストボードに向かう。
先ほど確認した時にエサの調達があり、マイルームに保管してあったものが複数あったので受注して納品しておくことにした。
「あんちゃん、本当に初心者なんだな! まっ、頑張れよ!」
……この人の前に列が少ないのは、見た目だけではない気がするな。
明日は岸嶋と合流する予定だ。ログインするタイミングは連絡があるのでそれまでのんびりするとしよう。
クエストを終えテイマーギルドを出た俺は、マイルームに戻りそのままログアウトした。




