13.テイマーギルドへ
旧25.26です。
総合ギルドを後にした俺はレーナさんの勧めもあったのでテイマーギルドに向かうことにする。
総合ギルドで受けたクエストは時間制限のないものだったので後回しにすることにした。
テイマーギルドは一応戦闘ギルドに属するので、前にギトスさんに教えてもらった方向に向かう。
ここで「気殺」の効果が切れる。どれほど効果があったかわからないが、後をつけられたりはしてないようなので良しとしよう。
そうして戦闘ギルド区画に入っていく。剣の看板や拳の看板等、ザ・戦闘職というような看板が並ぶ。
だがどの建物もそんなに大きくはない。どうやら、ほとんどが登録の為だけにある施設のようで必要最低限しか設備がないらしい。
しばらく歩いていると異彩を放つ建物を見つける。
他の建物の数倍の規模であることもそうだがデザインがなんともファンシーで、デフォルメされたモンスター?たちが輪になっている看板がかかっていた。
……おそらくここがテイマーギルドだろう。男には少し抵抗のあるデザインだ。
そんなことを思いながらその建物に入る。
「いらっしゃいませ~」
なんとも気の抜ける挨拶とともにゆるふわロングの女性が迎えてくれる。
「どのようなご用件で~……。あ~かわいいネズミさんですね」
「チュ、チュ!」
間延びしたしゃべり方からは想像できない速さでハーメルを持ってかれる。
総合ギルドから今の今まで寝ていたハーメルも、突然のことに眠気も吹き飛ぶ驚き様だ。
……いくら俊敏力が初期値だとは言え、おっとりしてそうな人の動きに反応できなかったのはいかがなものか。
次のレベルアップでは俊敏力に振ろう。
俺がひそかに決意を固めていると。
「チュウ~~~」
ハーメルの情けない声が聞こえてくる。やれやれ。
「すいません。そろそろそいつを離していただけませんか?」
「あ~。すいません~久しぶりに小動物系を連れてきた方がいらしたので~つい暴走してしまいました」
そう言ってハーメルを俺の手に乗っける。
ハーメルはすごい勢いで俺の頭に上っていきプルプル震えていた。
「あ~~。怖がらせてしまいましたね~。すいません~。私は~ここテイマーギルドの支部長モーフラと申します~」
俺もマイペースだと自負しているが俺以上かもしれない。
「俺はプレイヤーのウイングと言います。こいつはマッドラットのハーメル、俺の従魔です。総合ギルドで従魔の話をしたときにテイマーギルドへの加入を勧められたので来ました」
俺がそう言うとモーフラさんはパーっと笑顔になり
「やっぱりそうですか~。見ない顔だと思ったので~そうじゃないかと思ってたんですよ~。プレイヤーの方は~、みなさん最初に狼さんや鳥さんばかり連れてくるので~そういう決まりでもあるのかと思っていましたが~そういうわけではないのですね~」
おそらくβテスターたちの情報からおすすめの従魔でもあったのだろう。確かに戦闘に積極的なウルフ系や空から索敵できる鳥系は重宝するだろう。
だが、俺以外に小動物系はいなかったのだろうか?かわいい物好きなら率先してテイムしそうだが。
「俺以外にはいなかったのですか?」
「そうですね~。プレイヤーの方のほとんどが~迷宮都市を目指すじゃないですか~。
そうすると小動物系より~戦闘に役立つ従魔を優先するようなのですよ~。それにプレイヤーさんは最初~お金に余裕がないそうじゃないですか~」
従魔には食費がかかる。与えなくても死なないが親愛度が下がりだんだん指示を聞かなくなっていく。
最終的に契約解除まであり得るそうだ。そしてテイマーギルドの懲罰処分が待っている。従魔を大切にしない主人への処置だそうだ。
そのため定期的にエサを与える必要がある。
実は俺が総合ギルドで受けたクエストは、報酬の物品がマッドラットの好きな木の実だったので受けることにしたのだ。
つまり、ただ飯ぐらいを飼う余裕が今のプレイヤーに無いのが原因のようだ。
「それではウイングさんの登録手続きを~。始めさせていただきますね~。」
ようやくか。なんか必要以上に疲れた気がするな。とりあえず、目的を達成しよう。
「それでは~。説明させていただきますね~」
モーフラさんの説明をまとめると以下の通りである。
1.ギルド登録できる者の条件として従魔が1匹以上いることと、称号に「従魔がいたもの」がないこと。ただし、ギルドの更生プログラムを受け、称号が消えた場合はその限りではない。
2.テイマーギルドで受けられるクエストは特殊なものが多いので、自分の従魔に合わせて選びましょう。
3.ギルド貢献度の上げ方にはテイマーギルド発行のクエストを達成する以外にも、従魔の生態を報告することでも得られる。ただし報告が重複する場合はもらえる貢献ポイントは下がる。(ウルフ・鳥系はダダ下がり中とのこと)
4.職業テイマーやスキル「調教術」などの進化先、派生アーツの報告でも貢献ポイントを得られる。(条件は従魔の情報と同じ)
5.ギルド所属者の従魔がトラブルに巻き込まれた場合は、テイマーギルドが仲裁に来て公平な立場で判断する。
6.総合ギルドがあるところには必ずテイマーギルドの支部がある。
7.従魔が増えた場合は必ず最寄りのテイマーギルドに報告すること。
主に大事なところはこの辺だろう。大体レーナさんが言っていたことの補足といったところか。
入会条件にある称号「従魔がいたもの」は従魔に逃げられて1匹もいなくなったものに付く称号のようだ。
ちなみに双方納得して契約を解除して従魔が0になった場合、この称号は付かないそうだ。
それで従魔が0匹になっても退会はしなくていいそうだ。
「ご清聴~ありがとうございました。それでは登録作業をするので~、ギルドカードを出してください~」
そう言われたので俺はメニューを開きギルドカードを取り出す。
「それでは~、始めさせていただきますね~」
モーフラさんはそう言って何やら紙を取り出して読み上げ始めた。
「イニシリー王国、「始まりの町」ファースト。テイマーギルド支部長モーフラがプレイヤー、ウイングの入会を認めます」
先ほどまでの間延びした話し方ではなく、きりっとしたできる人のしゃべり方をする。
……そんなしゃべり方もできたんだと失礼なことを考えていると
≪テイマーギルドに入会しました。ギルドカードを確認してください。≫
とアナウンスが来たので、手に持っているギルドカードを見る。
ギルドカード
総合ギルド F 1P
テイマーギルド F
所持金 5000ラーン
ギルドカード表示にテイマーギルドの項目が増えていた。
それと貢献ポイントの表示も出ている。0ポイントだと表示はないようだ。
「これで~、ウイングさんはテイマーギルドの一員になれました~。これからは~同志としてがんばっていきましょう~。後~、ハーメルちゃんの生態調査の報告を~待ってますね~♪」
これでここでの目的は達成できた。……最後のセリフはモーフラさん個人の願望だろう。今のセリフでやっと落ち着いてきたハーメルがまたプルプルしだした。
「また何かありましたらここに来ますので、これで失礼しますね」
「そうですか~。残念です。いつでもいらしてくださいね♪」
と言いつつ目線はハーメルに向いていた。これ以上はハーメルがかわいそうなのでテイマーギルドを出ることにするのだった。




