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読書好きが始めるVRMMO(仮)  作者: 天 トオル
6.魔物使いの国
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129.次なるイベント

 俺がabundant feasibility onlineで魔物使いの国パラティに着いた頃。

 現実では冬期の長期休暇に突入しようとしていた。


「期末テストで赤点とったやつらは冬休み中補習があるから、必ず出席するように。来年には受験があるんだからな! この時期に赤点とるやつはみっちりしごかれると思え!」


 ホームルームを終え、騒ぎ出す生徒たちに担任がくぎを刺す。

 周りではゲームの話をしているクラスメイトも多いが、担任の言葉もあり来年の受験についての話もチラホラ聞こえてくる。


 俺としてはすでに行きたい大学、学科は決めている。

 一応、今の成績をキープしていれば余裕でAO入学できるはずだ。

 以前の進路相談では担任からもっと偏差値の高い大学を勧められたが、やりたい職業はすでに決まっている。

 それに大学4年間を勉強漬けの日々にするのはおそらく耐えられないだろう。

 自らの展望を考えながら、答案用紙を片付けている俺に冨士崎さんが声をかけてきた


「北条寺君は相変わらずゲーム内で読書してるのかしら?」

「ああ、長期休暇中はゲームにログインしていることが多いと思うよ。俺が目指している大学にはAOで入る予定だし少しずつ準備は進めているからな」

「そう……。私の方はあの子も実家に帰っていったし、受験が終わるまでは勉強漬けかしらね。……ゲーム内で」


 abundant feasibility onlineがサービスを開始してからしばらくして、外部のデータをゲーム内に持ち込めるようにアップデートがあった。

 しかし、1か月1GBギガバイトごとに十数万円持ってかれるらしい。


 オンラインのサーバー内に個人のデータを保存するため、多くの人が利用するとゲームの運営自体に支障が出る可能性があり、高い料金に設定しているらしい。

 そのうえ持ち込んだデータを取り出すときは、ゲーム内のクエストや隠し要素が書かれていないか確認される。

 そのような内容が書かれていた場合は書き込まれる前に復元されるとの事。

 それでも、時間延長は魅力的なのかかなりの利用者がいるようだが……。


 冨士崎さんの場合は両親と相談して、長期休暇の間だけこのサービスを利用することにしたようだ。

 そこそこ偏差値の高い大学を目指しているようで、この冬期休暇から追い込みをかけると言っていた。

 

「なぁ、北条寺! お前ってさ、abundant feasibility onlineやってるのか?」


 冨士崎さんとの会話が終わり、教室を出ようとしたところで声がかかる。

 振り返ると、THE運動部といった感じのクラスメイトが俺に向かって手を挙げていた。

 日焼けした顔で白い歯をのぞかせ笑う彼は、確かラグビー部エース岸嶋キシジマ マモルだったか。


「岸嶋か……。一応サービス開始時からやってはいるが、それがどうした?」

「いやー偶然、お前と冨士崎さんと話している内容が聞こえてきてな! お前ら二人ともゲームやるような奴じゃないから珍しくてな!」


 岸嶋はそう言いながら再びニカッと笑う。


「それを言うならラグビー部で日々汗を流しているであろう岸嶋の口からゲームの話が出てくるのも意外だと思うぞ。というか、俺がゲームを始めたのは夏休み前だぞ? なんで今さらそんなことを聞くんだ?」

「フッ……。俺の夏はラグビーの練習に捧げていたからな! ゲームの事なんてこれっぽっちも考えていなかったんだ。珍しいやつがゲームをやっていたとしても、そんな情報は右から左だ!」


 岸嶋は特に誇るでもないことをサムズアップしながら宣言する。


「それで? 俺がゲームをやってたのが珍しくて声をかけて来たのか?」

「確かにそれもあるが本題は別だ! 少し頼みたいことがある」


 話の流れからゲームに関することだろうが、それほど話したことが無い岸嶋からの頼み事の想像がつかない。

 俺は教室の出入り口から引き返して、自分の席に鞄を置く。

 岸嶋もそれに合わせて、俺の席の前までやってくる。


「実はな。俺の姉もabundant feasibility onlineをプレイしているんだが、次のイベントに向けてメンバーを募集しているらしくクラスメイトでプレイしている奴がいたら誘ってほしいと頼まれたんだ……」

「あれ? もう次のイベント情報が公開されてたのか……。けど、それなら普段あまり話さない俺なんかより親しい友人に声をかけた方がいいんじゃないか?」


 俺がそういうと岸嶋は困った顔をする。


「俺の知り合いにゲームをしている奴が少なくてな……。やってるやつらもほとんどクランに入ってるらしくて難しいと言われたんだ」

「……とりあえず即答はしかねるな。今の俺はクランに所属しているわけでは無いが、妹のクランに誘われる可能性もある。それ以上にイベントの内容がわからないからな……。とりあえず連絡先の交換をして後で連絡しようか?」

「おっ、本当か? 助かる。今の所全滅だったからなー。このまま帰ったら姉さんになんていわれるか……」


 ラグビー部のエースも姉には頭が上がらないらしい。

 まだ、協力すると決まったわけでもないのにとても感謝されてしまった。

 岸嶋と連絡先を交換した俺は帰宅した後、端末からabundant feasibility onlineのサイトを開いてイベント情報を確認する。


 どうやら今回のイベントは今までと趣向が違い、ある程度長い期間で行われるイベントらしい。

 その為、毎回イベントの時に行われていた時間延長などは行わないようだ。


 イベントの期間中は各地で限定モンスターが出現するようになり、討伐数でポイントが入るらしい。

 そのポイントで個人・パーティー・クランごとにランキングがつけられるという。

 それ以外にも、イベント期間中は様々な特別クエストが発生するようになっているそうだ。


 今回は行動に応じたランキングは無いようで、純粋に討伐数のみで競う事になっているようだ。

 おそらく岸嶋の姉が所属するクランは人手不足なのだろう。

 クランに所属していようがいまいが個人のポイントには影響がないので、岸嶋の頼み事を引き受けるかどうかは春花次第になるだろうな……。


「お兄ちゃんに予定があるならそちらを優先しても大丈夫だよ!」


 俺が帰宅してすぐに春花も帰ってきたので、今回のイベントはどうするか確認をとった。

 春花の話では第2回イベントでそれなりに名前の売れたクランなので、人数不足の心配は無いという。

 春花達が問題ないというなら、岸嶋のお願いを聞いてもいいだろう。


 俺は岸嶋に連絡を取り、頼みごとを受ける事とゲーム内でどのように落ち合うか確認する。

 岸嶋はほとんどゲームをしていなかったため、始まりの町ファーストから動いていないらしい。

 俺は魔物の国パラティに着いたばかりなので、移動はしたくない。

 そこで、今まで使ってこなかったネーム検索を用いてフレンド登録することにした。


 今回のように友人と距離が離れている場合、直接会ってフレンド登録をすることは難しい。

 ネーム検索は読んで字のごとく相手のプレイヤーネームを入力して、遠距離にいるプレイヤーにフレンド登録申請を飛ばすことができるシステムだ。


 フレンド登録しているプレイヤーの招待さえあれば、そのプレイヤーが所有ないし所属しているルーム・エリアに転移することができる。

 今回はこれを使ってゲーム内で落ち合う事になった。


 いつ落ち合うか聞いたら「明日でも大丈夫か?」と聞かれたので問題ないと返した。

 今日もログインする予定だが、大きな移動はしないつもりだったので特に不都合はない。

 岸嶋への連絡を終えた俺はカプセルの中へ入るのだった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] ラグビーで大事なのは冬だから冬の方がピリピリしてると思う笑 逆に夏はあんまり大事な大会はない
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