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読書好きが始めるVRMMO(仮)  作者: 天 トオル
5.Dランクダンジョン攻略と第二回イベント
126/268

118.2日目開始とやってきた絶望

≪これより第二回イベント クラン対抗イベント「陣取り合戦」。2日目を開始します。ルールについては運営からのメールをご確認ください。≫


 日が差し辺りが明るくなってきたころ、イベントエリアに2日目開始のアナウンスが流れる。

 俺はメールで内容を確認しながら、所定の位置に向かう。

 2日目のルールについては以下の通りだ。



・2日目からは陣地の奪い合いをするため、他のクランの陣地に侵入することができる。 

・陣地を奪うには2つの条件を満たさなければならない。

1.その陣地を所有しているクランのプレイヤーを陣地から全て排除する。

2.排除したうえで、最初にチェックポイントのあった場所に入る。最初にチェックポイントに入ったプレイヤーが所属するクランがその陣地を奪う事ができる。

・奪ってから1時間は、他のクランがその陣地に入る事はできない。

・一度奪われた陣地でも再度、奪取の条件を満たせば奪い返すことができる。

・最終的な陣地の所有数やイベント内での行動でポイントが与えられる。

・ポイントに応じてランキングが作られ、順位ごとに特典がもらえる。



 ハルたちが予測していたルールと大体同じ内容なので、このまま事前に決めていた陣地に向かう。

 昨日のうちにクラン「お気楽」で作戦会議が行われて、所属メンバーの役割分担がされているのだ。


 1日目に好き勝手動いていたプレイヤーも2日目が陣地の奪い合いという事もあって、ほぼ全員がクラン全体で作戦行動をとる事に異を唱えなかった。

 俺も特に意見することも無かったので、ハルたちの作戦に従う事にした。


 メールも読み終えたところで目的の陣地に到着する。その陣地は池が広がるオアシスエリアだ。

 クラン「お気楽」のプレイヤーが獲得した陣地で、ポーションの作成などに使えるおいしい水が無限に採れる陣地である。


 ポーションは事前に準備してあるので、そこまで重要な陣地ではない。ハルも守れそうになかったら逃げてもいいと言っていた。

 戦闘が苦手な俺であるが、条件さえそろえば善戦はできると思っている。

 このエリアを獲得していると知った時、ここの防衛に立候補した。

 俺の2日目はここの防衛をすることがメインになる。


 ハルたちの作戦は簡単にいうと、少数精鋭で他の陣地を奪い大多数は陣地の防衛に当たるというものだ。

 これだけだと何のひねりもなさそうだが、この作戦にはしっかりとした理由がある。


 俺がいる陣地にはあの黒いピラミッドにいたゴーレムが数体徘徊していた。

 これがピラミッドを陣地化した時に手に入れた設備である。ずばり防衛システムだ。 

 今回の作戦はこの防衛システムと俺が手に入れた洞窟エリアの安全経路がカギになってくる。

 現在、地下通路には、ピラミッドから持ってきたゴーレムが数十体待機している。


 このゴーレムやカメラなどの防衛システムであるが、ピラミッドの中心部に魔力を注げばいくらでも生み出すことができるらしい。

 1回でかなりのMPを持ってかれるそうなので限界はあるが……。

 この防衛システムを戦況に応じて各陣地に派遣していくことになる。


 普通ならこんな作戦を実行することはできない。

 何故なら、陣地間を移動するのには、かなりの距離を戦闘しながら進んでいく必要がある。

 そのうえゴーレムやカメラは、防衛システムという名前からもわかる通り、陣地を守る時にしか戦闘できない。

 つまり、戦闘できないお荷物を守りながら運搬する必要があった。

 

 しかし、地下通路のおかげでその無理を通すことができるようになったわけだ。

 そして、ハルたちの方針としては陣地を増やす事より、今持っている陣地を守る方が有利であると判断したようである。


 本当はレーザーを放つカメラのようなものも設置したかった。

 しかし、壁にのみ設置できるという条件があり、俺が守るエリアでは配備することができなかったのでゴーレムのみ配備してもらった。


 俺はヌエに上空からの偵察を頼み、カレルには池の中で待機してもらう。

 他の従魔は戦闘態勢に入るまで陣地の巡回を指示する。

 この陣地は重要ではないこととイベントエリアの端であることから、プレイヤーは俺含めて数人だけだ。

 極力、戦闘にならないことを祈りながら俺も陣地の中を巡回していく。


……………………。


 現在、2日目も半分を過ぎたところ。

 俺達はと言えば池のほとりで他クランのプレイヤーを足止めしていた。

 攻撃力的にはエラゼム頼りである俺のパーティーだが、この陣地ならば足止めにおいては手段が豊富といえよう。

 ハーメルの泥術も、カレルの水術も使えるからだ。

 

 普段足りなくなる手数も、ゴーレムや他のプレイヤーがフォローしてくれるので問題なく撃退できている。

 拠点が重要そうに見えないので、相手クランも本腰を入れてこないことも大きいかもしれない。


 時々、他陣地の様子や攻撃部隊の様子をハルに確認している。

 ハルは攻撃部隊に加わらず、洞窟の中で防衛システムの管理を行っているためだ。

 ハルの話では防衛は順調で、攻撃側も少しずつではあるが陣地を増やせているらしい。

 このままイベントが終わってくれればそれなりにいい順位にいけそうである。

 ……しかし、そんなことを考えてしまったのがいけなかったのかもしれない。


 先ほどまで攻撃してきていたプレイヤー達を退け、従魔たちにエサを与えていると、遠くの方から戦闘音が聞こえてきた。

 そちらの方に目を向けると、見知った顔がやってくるのが見えた。

 ……できればこのイベント中には見たくなかった顔である。


「お久しぶりですね。ウイングさん」

「お久しぶりです。ラピスさん……」


 俺の知り合いでは最強であろうプレイヤー、ラピスさんが丁寧に挨拶をしてくる。

 前回のイベントでは味方としてとても頼りになったラピスさんであるが、今回は敵クランとしての対峙である。


 ……さて、俺は何分耐えられるだろうか?

 逃げてもいいと言われてはいるが、背中を向けた時点で秒殺だろう。

 ノブナガさんの時と違って、俺の強さをある程度知っているラピスさんが見逃してくれるなんてことはおそらく無い。


 俺達が会話している間にも周りでは戦闘が繰り広げられているが、こちらの敗北は確定と言えよう。

 ゴーレムを含めればこちらの方が人数は多いが、レベルとPSが向こうの方が格段に上だ。

 一応、ハルに応援を頼んではいるがそれまでに決着がついてしまいそうである。


 俺が対峙しているのはラピスさん姉妹含め4人だ。

 他の2人も以前見たことがあるので、ラピスさんのパーティーメンバーと思われる。

 ここは奇襲で足止めが吉か……。


「……ハーメル」


 俺は調教術のアーツである精神感応を発動してハーメルに指示を飛ばす。

 今、ラピスさんがいるエリアは池のほとりなので、地面は湿った砂で覆われている。

 ハーメルの泥術で拘束するには絶好のポジションと言えよう。

 俺の指示を受けたハーメルが泥術を使い、湿った砂を操作する。


 さぁ、できるだけ時間は稼がせてもらおう。


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