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読書好きが始めるVRMMO(仮)  作者: 天 トオル
5.Dランクダンジョン攻略と第二回イベント
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116.迎撃システムの検証

 俺はハルたちと別れて黒いピラミッドに近づく。

 歩いている間に、石ころを集めておく。

 先ほどのように迎撃システムの反応を確かめるのに使用するためだ。


 俺は先ほどピラミッドを登っていたプレイヤーのように黒い部分を踏むようにして進んでいく。

 表面は本物のピラミッドのように階段状になっており、足場が確保されている。

 ただし、それほど大きくは無いので、幾何学模様をよける事の難しいエラゼムはピラミッドの近くで待機してもらっている。


 俺はハルたちの位置からしか見えない位置から登り始める。

 おそらくこのピラミッドを登っていたプレイヤーも最初は他のクランに所属するプレイヤーから見えないように進んでいたのだろうが、たまたま俺がそれを目撃してしまったというところか。


 もしかしたら、ピラミッドの下の方で失敗を繰り返しているプレイヤーがいるのはダミーかもしれないな。

 他のクランにまだ余裕があると思わせるためのフェイクが混じっているのかもしれない。

 それならば、俺がこの時点で頂上に届かないまでも攻略法は見つけないとここはあきらめるしかないだろう。


 しばらく進んでいくと、以前ファーストの図書館で経験した結界を通り抜ける感覚を覚える。

 すると、突然ハーメルが前方に反応を示す。

 

「チュウーー!」


 ハーメルの危険察知が反応したらしく慌てて結界の中から出る。

 しかし、俺の進行方向からレーザーが飛んできたので再度慌てて、回避を試みる。

 ノックバックがある攻撃だろうと予想できるので、盾で受けてしまうとそのままピラミッドを転げ落ちる可能性があったからだ。


 何とかレーザーを避ける事に成功した俺は、先ほどの結界を抜けるような感触を覚えた場所の手前まで来て考察を始める。

 大体位置はピラミッドの半分くらいを登った辺りだ。


 おそらくこれより上は下段の時と敵を検知する方法が違うのだろう。

 俺は先ほど拾っておいた石を数個、結界の中に向けて投げる。

 俺が投げ込んだ石はピラミッドの幾何学模様がある場所に落ちる。

 どうやら幾何学模様による検知はしていないらしい。

 そもそもカメラとは違う防衛システムのようだ。


 そういえば、ハルの話では、レーザーに攻撃力は無いがノックバック効果が高いと言っていた。

 しかし、俺がピラミッドに向かう時にフクロウのモンスターが撃ち落されてポリゴンに変わるのを目撃している。


 その時点でピラミッドの下層と上層では攻撃が違う事に気づくべきだったな。

 今は反省するよりもこのピラミッド上層の攻略法を考えるべきだ。

 俺は次の検証を行う事にした。


「頼んだぞ。ヌエ! ハーメル!」

「クーー!」

「チュウーー!」


 今度の検証はヌエに空から頂上を目指してもらおうと思っている。

 ただ、先ほどのフクロウの件もあるので、ハーメルに同行してもらう事にした。

 ハーメルはヌエの頭にしがみついてもらい、攻撃が飛んで来たらヌエに知らせてもらう予定だ。


 俺の指示を受けたヌエは頭にハーメルを乗せて飛び立つ。

 飛び立ったのを確認した俺はヌエのアシストをするために闇魔法のアーツを発動する。

 今回使用するのは、ブラックミストというアーツだ。


 このアーツは術者の眼前に黒い霧を発生させ、霧の中にいる生物は暗闇による認識阻害を引き起こす。

 霧の規模はアーツを発動した時の消費MPに比例して大きくなる。

 俺はそこそこのMPを消費してピラミッドの頂上に向けてブラックミストを発動した。


 俺がアーツを発動すると眼前は黒い霧に包まれる。

 ハーメルを乗せたヌエはその霧に向けて突入を試みる。

 ヌエには暗闇による認識阻害を受けなくなる種族特性、夜行性があるのでブラックミストによる視界不良は起こさない。


 先ほど目撃したプレイヤーは自らを隠すスキルを発動したものと思われる。

 しかし、普通に攻撃が行われていたことからこのピラミッドの迎撃システムには看破する機能が付いているのではないかと予想した。

 そこで隠れても看破されるなら、視界を奪う事で位置を特定させない戦法ならどうかと思ったわけだ。


「チュウーー!」

「クーー!」


 上空で従魔2匹の鳴き声が聞こえる。

 どうやらピラミッドの迎撃システムに捕捉されてしまったようだ。

 俺はブラックミストを解除して状況を確認する。


 黒い霧の晴れた先では、ハーメルを乗せたヌエが必死にレーザーを躱していた。

 俺はヌエに戻ってくるように指示を飛ばす。

 ヌエはハーメルの危険察知のおかげで何とかレーザーを躱しながら俺のそばに着地する。


「チュウ……」

「クー……」


 短時間ではあったが、かなり疲れている様子である。

 俺は2匹に果物を渡し労う。

 しかし、今の作戦でダメとなるとどうしたものか……。


 下の層ではしっかりとした攻略法があったのに、上にはそれが無いという事はないだろう。

 しかし、他のプレイヤーの動向も考えるとそろそろクリアへ動き出していても不思議ではない。

 俺は今までの状況を整理しながら、何か見落としが無いか考える。


 ……そういえば、石を投げ込んで結界を超えた時はレーザーの照射をされなかった。同じく俺が発動したブラックミストに対しても何の反応もなかった。

 しかし、認識されないように霧の中に身を潜めていたヌエとハーメルはしっかり捕捉されている。


 俺はある可能性に気づきハルに連絡を入れる。

 ハルたちに俺の推察を説明すると、ハルは他のメンバーと相談を始める。

 しばらくしてハルから妙案があると言ってこちらに来ることになった。


 そうして話し合いも終わったころ、ピラミッドの上の方から爆発音が聞こえてきた。

 どうやら他のクランもピラミッド攻略に本腰を入れてきたようだ。

 このままではハルが到着する前にクリアされてしまうかもしれない。


 俺はヌエに指示を飛ばす。指示を受けたヌエは頷きその場から飛び立つのだった。


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