115.ピラミッドの課題
連絡を受け取った俺はクランの陣地になっているエリアから、地下通路に入る。
どこのエリアを陣地化したかは、ある程度ハルから聞いている。
あの黒いピラミッドに最も近い陣地はボスたちと出会った森エリアだ。
地下通路の中心である洞窟エリアまで来ると、沢山のプレイヤーが忙しなく動いているのが見えて来た。
どうやら洞窟エリアに他のエリアで手に入れた資源を集めているようだ。
俺達は忙しそうに動いているプレイヤーたちの間を縫うように森エリアへ続く通路を探す。
一応それぞれの通路の入り口にはどこのエリアへ続く道かわかるように看板のようなものが付いている。
俺は森エリアの通路を探し出し、地上へと向かうのだった。
地下通路から地上へと出てきた俺は辺りを確認する。
どうやら地下通路の出入り口は、森エリアのチェックポイントがあった辺りにできているようだ。
俺は果物を集めながら、森エリアの端まで向かう。
ハーメルやヌエも思い思いに食べたい果物を取りながら、俺についてきていた。
森の端まで付くと、以前見た光景とともに黒いピラミッドが遠くの方に見える。
俺は隠密スキルのアーツで気配を消しながら、戦闘しないように黒いピラミッドに向けて足を進める。
……………………。
黒いピラミッドに近づくにつれて、戦闘している場面に遭遇することが増えてきた。
残っているチェックポイントが少ない為か、プレイヤーが同じエリアに集まってきているためだろう。
第2陣のプレイヤーからすれば、経験値の稼ぎ時という事か……。
もしくは他のクランの妨害目的という事もあるだろう。
第2陣のプレイヤーたちの戦闘を避けながら進んでいると、ハルのパーティーメンバーの一人が俺たちに向かって駆け寄ってきた。
すると、周りにいたプレイヤーがそのメンバーに向かって戦闘を仕掛けるが、あっけなく返り討ちにされていた。
こういった場面を見ると、第1陣のプレイヤーと第2陣のプレイヤーのレベル差はやはり大きいものだと実感する。
……自分の戦闘ではあまり実感できないのが悲しいところではある。
ハルのパーティーメンバーと合流して、黒いピラミッドへと向かう。
ピラミッドの手前まで来ると、他のエリアと同じように課題を知らせるウインドウが現れる。
≪ チェックポイントのあるエリアに侵入しました。
課題 ピラミッドの頂上にたどり着け! ≫
課題の内容だけ見ればそれほど難しいものではないはずだ。
しかし、それでもクリアされていないという事は洞窟エリアのように何かしらの制限があるのかもしれない。
ハルのパーティーメンバーにその辺りを確認してみるが見てみた方が早いという。
そんな話をしていると上空から爆発音が聞こえてきた。
何事かと空を見上げると、フクロウのようなモンスターがポリゴンとなって消えていくのが目に入って来た。
どうやら、従魔を上空から頂上に向かわせようとしたプレイヤーがいたらしい。
だが、何かの迎撃によって撃ち落されてしまったようだ。
しかし、チェックポイントのあるエリアでは戦闘不可能では無かったのだろうか?
俺は疑問に思いながらもハルが待っている場所に向けて足を進める。
「お兄ちゃん! 来てくれたんだね」
ピラミッドのそばまで行くと、十数人のプレイヤーが集まっている区画を見つける。
そこからハルの声が聞こえてきたので、歩み寄っていく。
チラリとプレイヤーたちを見ると、何やら疲れた表情をしているプレイヤーが多かった。
「連絡があったから来てみたんだが……、今はどういった状況なんだ?」
「実はね……」
ハルの説明によるとこの黒いピラミッドがイベントエリアの中心部らしく、早い段階から沢山のクランがここの課題に挑戦していたらしい。
しかし、ウインドウに出てくる簡単そうな課題とは裏腹に、未だにどこのクランの陣地にもなっていない。
理由はピラミッドの中から出てくる防衛システムにある。
どうやらピラミッドの中や外から頂上を目指すためにピラミッドに近づくと、壁や天井からレーザーを放つボール状のカメラのような物が出てきて攻撃してくるらしい。
他にもピラミッドの中では、ピラミッドと同じような幾何学模様の入ったロボットのようなものも出てきてプレイヤーを襲うそうだ。
戦闘できないプレイヤーたちは、為す術もなく引き返すか無茶な突撃でやられているようである。
来るときに見たフクロウもカメラのレーザーで迎撃されたのだろう。
ここで疲れたような顔をしているプレイヤーたちは、何度か挑戦して疲弊しているという事なのだそうだ。
こうして話している最中にも、ピラミッドの方から爆破音やプレイヤーの声が聞こえてくる。
どうやらどこのクランも突破口を見いだせていないようだ。
俺はハルに一つ確認を取ってみる。
「第1陣のプレイヤーでも耐久力に優れたプレイヤーなら、消費アイテムを使いながらのごり押しで行けるんじゃないか? ほら、ラピスさんたちみたいなパーティーならどうだ?」
「それがね、そう簡単な問題じゃないんだよ。あのピラミッドで出てくるカメラやロボットの攻撃にはすべてにノックバック効果があってね。攻撃を受け続けると全然前に進まないんだよ……」
それ以外にも隠れる技能で進んでいってもどこかで気づかれてしまい、攻撃されてしまうそうだ。
俺は話を聞いて何となくピラミッドを眺める。
すると1人のプレイヤーが奇妙な動きをしながら、ピラミッドの外側を進んでいくのが見えた。
そのプレイヤーは直進するのではなく、何やら蛇行しながら進んでいた。
しかし、奇妙なことにそのプレイヤーに対してカメラによるレーザーが飛んできていないように見える。
「お兄ちゃん?」
「ちょっと待ってくれ」
俺が話の最中に黙り込んだことにハルが疑問を投げかけるが、俺はハルに待ったをかける。
俺は先ほどのプレイヤーに視線を移すと立ち止まり何かしているようだ。
すると、突然プレイヤーの姿が見えなくなる。どうやら隠密系のスキルを使用したらしい。
しばらく、見ていたがプレイヤーの姿が再び見えることは無かった。
しかし、何度か爆発するのが見えたことと、課題達成のアナウンスが無いことからおそらく登頂には失敗したものと思われる。
俺はプレイヤーの輪から離れて、ピラミッドの外壁に向かう。
ハルたちは俺の行動を不思議そうに眺めている。
俺は気にせず足元にあった石を拾い上げて、ピラミッドの外壁に投げつける。
石は外壁の黒い部分に当たったが何も起こらない。
俺はもう一度を拾い上げて、今度は外壁の幾何学模様に向けて石を投げつける。
すると、石が外壁に当たると同時に壁の一部からニョキっとカメラのようなものが飛び出てきて先ほど石がぶつかった場所目掛けてレーザーを飛ばす。
俺は仮説が正しいことがわかり、ほくそ笑む。
どうやら外壁を登ってくる敵については、幾何学模様の部分がセンサーの役割をしているようだ。
しかし、これだけでは空中を飛んでいたフクロウを撃ち落としたことに説明がつかない。
俺はハルたちに調べたいことがあると伝えて、一度ピラミッドに上ってみる事にした。
先ほどのプレイヤーの事を考えるに、それほど時間は残されていないだろう。
多少無茶をしなければ厳しいかもしれない。
俺はハーメルたちを連れてピラミッドの迎撃システムの調査を始める事にした。




