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読書好きが始めるVRMMO(仮)  作者: 天 トオル
5.Dランクダンジョン攻略と第二回イベント
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110.最初の陣地獲得

 ボスは歩いている間に仲間に連絡を入れていたようで、仲間はすでにチェックポイントで待機しているようだ。

 俺はボスについていく形でエリアの中心部へ向かう。


 俺達が中心部に向かっていると、前方にいくつかの果物を持っているパーティーが待っているのが見えて来た。

 ボスもそのパーティーを視界にとらえたようで、声を張り上げる。


「おーい! みんなー! 最後の果実が手に入ったぞー!」


 その声に反応して前方にいるパーティーが一斉にこちらを見る。

 ボスの事を見つけたところで、手を振ろうと手を挙げて俺を視界にとらえたところで全員が固まった。

 そこにいた全員が驚愕の表情を浮かべているのを見て、今度は俺の方が首を傾げる。

 すると、いち早く立ち直った1人が走ってこちらに向かってきた。


「お、おい! ぼ、ボス! 果物が手に入ったって言うから全員集まったんだが……」

「おう! こっちにいるウイングが果物を譲ってくれることになったんだ!」


 ボスがそういうと、話しかけていた男性プレイヤーが天を仰ぐ。


「ボス……。なんて言ってこちらのウイングさん? に果物を譲ってもらえることになったんですか?」

「うん? そりゃー。そのまま果物譲ってくれって頼んだんだが?」

「うん、状況は分かった! とりあえず一緒にウイングさんに謝ろう!」


 ボスと話していたプレイヤーは俺に頭を下げてきた。


「うちのボスがすいません! こいつしゃべり方がキツいところがあるんですが、悪いやつじゃないんです! こいつには後で言っておくんで今回の事は許していただけないでしょうか!」

「お、おい。なんだよ! 俺はちゃんと譲ってくれって頼んで、来てもらったんだぞ!」


 ボスが男性プレイヤーの態度に慌てていると、他の仲間たちも立ち直ったようで俺に向けて頭を下げだした。

 仲間たちが頭を下げだした状況を見て、ボスはさらに慌てだす。

 なにやらボスが気の毒な事になってきたので、助け舟を出すことにした。


「あの、そんなに謝らなくても大丈夫ですよ。ボスさんが言った通り果物を渡すように頼まれて、受け入れたのは俺ですし……」

「ほらな! ちゃんと頼んでついてきてもらったんだ!」


 ボスの得意げな発言に男性プレイヤーはいぶかしげな顔をして俺を見る。

 俺はボスさんの発言に最初に会った時の事を思い出す。

 あの時のやり取りを端から見たら完全にカツアゲだろう。


 俺が遠い目になったことで何かを察したのか、再びボスさんの仲間たちは頭を下げてきた。

 このままでは話が進まないと思った俺はチェックポイントに向かいながら話をしようと提案した。

 俺の提案を受け、ボス含めその場にいた全員が慌ててチェックポイントに向けて歩き出す。


 歩きながら、最初に謝りだしたプレイヤー、ヤクさんと話をする。

 どうやらボスさんとは幼馴染らしく、子供のころからつるんでいるらしい。

 ボスさんは根は良いが、物言いが高圧的な事が多く誤解されやすいタイプだそうだ。

 そのせいで、よくトラブルを起こすのでその仲裁をよくやっているんだとか。

 それでも一緒にいるのは楽しいので、今でもこうして一緒になって遊んでいるそうだ。


 他の仲間も昔なじみのメンバーだそうだ。

 年齢的には大学生らしい。

 ボスさんは周りの人間に恵まれているようである。

 ……ちなみにそのボスさんはというと、他の仲間の人に俺への態度についてお説教を受けていた。


 そうこうしているうちにチェックポイントに着いたようで、何やら薄く光るドームのようなものが見えてくる。

 ヤクさんが言うには、ここがチェックポイントらしい。

 条件を満たさずに入ろうとすると弾かれて、≪条件を満たしていません≫とウインドウが出るらしいので間違いないだろう。


 チェックポイントの手前まで来たところで、ボスさんに果物を渡す。

 すると、ボスさんの前にウインドウが現れる。

 ボスさんがウインドウを操作した後、チェックポイントに入っていく。

 どうやら、チェックポイントに入るプレイヤーは1人でいいようだ。


 ボスさんの体がチェックポイントに入ると、辺り一帯が白い光に包まれる。

 光が収まると同時に俺を含めた全員の目の前にウインドウが現れた。


≪このエリアはクラン「お気楽」の陣地になりました。クラン「お気楽」に所属するプレイヤーはメールにてエリアの詳細を確認することができます。クラン「お気楽」以外に所属するプレイヤーはエリア外に強制転移されます。≫


 俺は早速、このエリアについての説明が書かれたメールを確認する。

 このエリアは果物が沢山採れる食材エリアのようだ。

 手に入るものは先ほど集めた10種類の果物の他に、木の実なども集めることができるらしい。

 これで、俺やハーメル、ヌエのごはんの心配はいらなくなった。


「あっ! 思い出した!」


 俺がメールの内容を確認していると後ろの方でそんな声が聞こえた。

 振り返ってみると、ボスのパーティーの一人が俺を見て何かを思い出したような顔をしていた。

 その思い出したような顔をしたプレイヤーは、ボスたちを集めて何か話し合いを始める。


「……あの人、司書ギルドで何かの紙束もらってた人じゃない?」

「……前に司書ギルドへ行ったときに見たって人?」

「……そうそう」


 ……そういえば、メンバーの何人かに薄っすら見覚えがあるような気がする。

 先ほどまで頭を下げてばかりだったので顔が見えなかったが、どこかで見たことがある人が2,3人いた。

 俺が思い出そうと頭をひねっている間も、ボスさんたちは話し合いを続けている。


「……わりぃ奴じゃなさそうだし、聞いてみればいいんじゃね?」

「……ボスは黙ってて! 情報を持っていたとしても対価が無いでしょ!」

「……もう少し親しくなってから、一度聞いてみる事にしよう。都合のいいことにこのイベント中は同じクランにいるみたいだし」


 今すぐに思い出せそうになかったので、とりあえず考えるのは後にしよう。

 ここの陣地化はできたので、ボスさんたちとはここでお別れだ。

 俺はボスさんたちに声をかける。


「陣地化も終わったようなので、俺はここを離れようと思いますが皆さんはどうしますか?」

「えっ? そ、そうだね。僕らも次のエリアを目指して進もうと思う。どうだろう? 一緒に行動しないかい?」

「いえ。単独行動しようと思っているので、俺はここで……」

「そうか……。今回のイベント中は同じクランの仲間だから、また何かあったら協力しよう!」


 俺はヤクさんとそんな話をしてから別れる事にした。

 後ろにいる人たちが何か言いたそうにしていたが、特に声をかけられることは無かった。

 ボスさんたちと別れた俺は、先ほど進んだルートをそのまま歩いていく。


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