109.イベントの説明と1つ目のエリア
イベント説明が長めなので、必要な時に見返すのがいいかもしれません。
ボスとの会話辺りで修正を入れました。
アナウンスがあってすぐにクランルームの転移の扉がひとりでに開く。
それと同時に運営からメールが届いた。
今回はイベントの詳細をメールで送信されるようだ。
クランルームにいた全員が一斉にメールの内容を確認する。
・今回のイベントは陣取り合戦である。イベント期間は2日間だ。
・クランルームの転移の扉よりイベントエリアに転移できる。
・リスポーン地点は最初にクランルームから転移した地点になる。
・1日目は陣地の確保を行う。
・初日から戦闘可能であるが、チェックポイントがあるエリア内では戦闘できない。
・陣地を獲得するためには、各エリアの中心部にあるチェックポイントに入る必要がある。
・チェックポイントのあるエリアに入るとウインドウが現れて課題が出され、クリアすることで、チェックポイントに近づくことができるようになる。
・チェックポイントへ最初に入ったプレイヤーの所属しているクランに、その場所を陣地とする権利が与えられる。
・エリアが陣地となった時、その陣地を獲得したクラン以外のクランに所属しているプレイヤーはエリア外に強制転移される。
・陣地となったエリアにある資源、施設などは手に入れたクランのメンバーのみ使用することができる。
・2日目の陣取り合戦のルールについては、2日目のアナウンスと同時にメールにて説明する。
大体こんな説明が書かれていた。
俺が読み終えた頃には、すでに何人かのプレイヤーが転移の扉からイベントエリアに向かっている。
俺も従魔を連れて、転移の扉からイベントエリアに転移する。
転移した先は石造りの部屋だった。部屋はそこそこ広いようで、俺より先に転移したプレイヤーがたむろしていた。
転移の扉に入った人数より今ここにいる人数が少ないので、すでに辺りを探索に出かけたプレイヤーがいるのだろう。
「みんな聞いてくれ! 団体行動したいプレイヤーは俺の所に集まってくれ!」
先ほどクランルームにいたプレイヤーが大体揃ったところで、クランの副マスターであるタイヨーが全体に声をかける。
その間に俺の方に向けてハルが駆け寄ってくる。
「お兄ちゃんはこれから自由行動かな?」
「そうなるな。ハルの方はパーティーメンバーと一緒に行動するのか?」
「というか、クランメンバーで団体行動を希望した人達と一緒かな? ここからは別行動だね! 何かあったら連絡してね!」
ハルはそう言って集団の方に混ざっていった。
俺は従魔たちを連れて部屋を出る事にした。
部屋を出た先の螺旋階段を降りて外に出る。
外に出ると辺りは草原のようで、その先に森が見える。
振り返ってみると、俺達が転移してきた建物の全容がわかった。
どうやら石造りで円筒状の塔? もしくは砦と思わしき建造物のようだ。
俺は森の中でも暗い場所まで向かう。
従魔たちが基本的に迷彩スキルを持っているので、できるだけ暗い場所を進んでいくことで、極力戦闘を避けようというわけだ。
俺も隠密スキルのアーツで気配を消しながら、森の中を進んでいくことにした。
しばらく森の中を歩いているが、以前のイベントとは違い採取できるものが見当たらない。
先ほど運営から来たメールに書いてあったが、このイベント中に新しいアイテムを手に入れるためには陣地を獲得する必要がある。
2日目のクラン対抗戦を有利に進めるためにも、できるだけ多くの陣地があるといいだろう。
先ほどの砦に近いからか、他クランのプレイヤーには遭遇していない。
さすがに陣取り合戦のイベントで、それぞれのクランの初期拠点が近いという事は無い様だ。
俺はとりあえず、チェックポイントのエリアに入るまで隠れながら進んでいくことにした。
俺がしばらく進んでいると、俺が進もうとしている先から金属がぶつかる音が聞こえてくる。
どうやら、チェックポイントより先にプレイヤー同士の戦闘に遭遇してしまったようだ。
一応、戦闘は極力避けるつもりだったので、音のする場所を迂回するように進むことにした。
音のする方を離れるように進んでいくと、唐突にウインドウが現れる。
≪ チェックポイントのあるエリアに侵入しました。
課題 エリア内にある果物を全種類集める。 0/10 ≫
どうやら、この辺りからチェックポイントのあるエリアである。
課題的にもテイマーに有利そうなので、このエリアから挑戦してみる事にした。
とりあえず、木の上にある果物からスタートする。
……………………。
しばらく森の中を探して、6種類の果物を集めることができた。
集めている果物がアイテム扱いではないようで、アイテムボックスにしまうことができなかった。
その為、果物の大部分はエラゼムに持ってもらっている。
どうやら他のパーティーもこのエリアの課題に挑戦しているようで、いたるところでプレイヤーを見かけるようになった。
「あんた、ちょっといいか?」
俺がエリア内をさまよっていると、男性プレイヤーから声をかけられた。
エリア内では自分のクランメンバーかどうかわかるように、頭の上に所属クランの名前が出る。
このプレイヤーの頭上には、俺と同じクラン名が表示されているので、同じクランのプレイヤーらしい。
「何ですか?」
「いや、お前の従魔が持ってる果物くれないか? お前、俺と同じクランだろ?」
男性プレイヤーはエラゼムの持つ果物を要求してきた。
……一体何を言っているんだろうか? 同じクランに所属していることと何の関係があるのだろうか?
俺がいぶかしんでいると、男は何か気づいたような顔をする。
「そういや、自己紹介してなかったな。俺の名はボスってんだ。今回のイベントに参加するために『お気楽』ってクランに入ったんだ。詳しい話はチェックポイントに向かいながら話そう」
俺も自己紹介をした後、歩きながら話を聞く。
どうやら、ボスはパーティー単位でクランに加入しているようで他のメンバーも果物を探しているそうだ。
そして、エラゼムが持つ果物の中に最後の一つがあるらしく、それを譲ってもらえれば全て揃うので、果物を譲ってほしいそうだ。
今回のクラン対抗戦は陣地をより多く持っていた方が有利だ。
ここで俺が果物を渡さなくても、残り一つであるこの人のパーティーの方が早くそろえるだろう。
それよりもここで渡さなかった事で、他のクランにこのエリアを取られる方が問題か……。
最初に声をかけられたときはただのカツアゲかと思ったが、話し方が悪いだけでボス自身は悪い奴じゃないようだ。
俺はボスの提案を了承して、果物を渡す。
せっかくなので、エリアが陣地化する瞬間を見るためにボスとともにチェックポイントについていくことにした。




