106.Cランクダンジョンへ
総合ギルドを出た俺はラビンス行きの馬車に乗る。
結局、司書ギルドの中で見たパーティーと出会う事は無かった。
一度顔を見られただけなので、このまま忘れてくれることを祈ろう。
俺を乗せた馬車はラビンスに向けて出発する。
……………………。
ラビンスに着いた俺は一度ログアウトしてから夕食を取る。
後片づけを済ませた後、再びログインした。
本来は読書する予定だった週なのだが、面倒ごとを回避するためにラビンスに戻ってきた。
ここは予定を前倒しして、Cランクダンジョンへの挑戦とカレルの進化を同時並行で行う事にしよう。
そうと決まれば、総合ギルドの資料室で再び下調べだろう。
俺は従魔たちを連れて総合ギルドに足を運ぶ。
総合ギルドにグリモ以外の従魔を置いていき、資料室に向かう。
Dランクダンジョンの時と同じように、Cランクダンジョンの特徴を調べていく。
調べたダンジョンの中で、様子見にちょうど良さそうなダンジョンをみつける。
俺はマイルームに戻り、調べたダンジョンに挑戦するための準備をすることにした。
準備を整えた俺は、目的のダンジョンに向かう。
今回挑戦するのはパズルダンジョンというダンジョンだ。
特徴的には初級ダンジョンに似ており、階段を進むごとにフロアの特徴が変わるダンジョンである。
ただし、パズルダンジョンという名前の通り、フロアごとに決まったルールでパズルないしコースを進んでいかなければ、次のフロアに行けないのだ。
もちろんモンスターも出てくる。1階層から25階層までのモンスターは20から40レベルの強さ、26階層から50階層が30から50レベルの強さとなっているらしい。
ただし、このダンジョンには他にもう一つ特徴がある。
ランダム要素が多く難易度が高い為か、脱出用アイテムと途中再開するアイテムが存在する。
そのアイテムは決まったモンスターがドロップするらしい。
どの階層にも必ずそのモンスターは存在しており、レベルも30で固定されているようだ。
特徴的らしいので、早めに見つけて倒しておきたい。
うまくいけば1階層だけで、自分たちがどれくらい戦えるか判断ができる。
最悪、勝てない相手に遭遇した時は逃げればいいだろう。
他のダンジョンでは、旅支度のために用意したアイテムを消費する可能性が高いのでこのダンジョンを選択した。
あくまで様子を見るだけなので、極力出費は避けたいのだ。
準備を整えた俺は、総合ギルドのCランクダンジョンの入り口がある区画に向かう。
この区画には今までいたDランクダンジョンの入り口がある区画とは比べ物にならないほどの人がごった返していた。
第2陣のプレイヤーもDランクを卒業して、Cランクダンジョンに来ているプレイヤーもいるのだろう。
俺はプレイヤーたちの少ない区画に向かう。
どうやらパズルダンジョンは人気が無いらしく、入り口周りに人は疎らだった。
現在のプレイヤー達ではクリアは不可能なうえ、狙った素材を手に入れるのが難しいからだろう。
俺はパズルダンジョンに足を踏み入れる。
……踏み入れた先は目によろしくないフロアだった。
何と言ったらいいだろうか? 床や天井、壁に至るまでもがカラフルなタイルで敷き詰められていた。
ルービックキューブのような柄の正方形のフロアが視界いっぱいに広がっている。
目が疲れるが、辺りを見回してみる。
すると、真っ直ぐ進んだところに階段への入り口がある。
一見近いように見えるが、あそこに行くにはかなり大変だ。
それはこのフロアの性質による。このフロアはタイルの色が重要になってくる。
今いるタイルの色と同じタイルに移動する場合は特に何も起こらない。
しかし、違う色のタイルを踏むもしくは触ってしまうと、触ってしまったタイルと同じ色をしたタイルにランダムで転移してしまうのだ。
しかも、このフロアの難しいところはタイルの大きさが四方1mであることと、奇襲するタイプのモンスターが多い点だ。
モンスターの攻撃ではじかれてランダム転移させられやすいうえ、同じマスにパーティーメンバー全員がいるとよけるスペースがないのでバラバラになりやすいのだ。
俺はさらに辺りを見渡すと2体ほど場にそぐわないモンスターがいた。
おそらく、資料にあった脱出用ないし途中から再開できるアイテムを落とすモンスターだろう。
見た目は赤鼻のピエロのようである。身長は150cmくらいだ。
今回は次のフロアではなく、あのピエロが標的である。
ちなみにピエロのようなモンスターは攻撃してこないが、フロア中を逃げ回る。
このフロアだと追いかけるより、遠距離攻撃で攻撃した方が吉だろう。
帰るにはいいフロアかもしれないが、戦闘のテストには向かないフロアのようだ。
とりあえず、あのピエロを倒してから考えよう。
俺はヌエとカレルにあのピエロを遠距離で倒すように指示する。
最悪ランダム転移でバラバラになっても、ピエロだけ倒してさっさと帰ればいいだろう。
……この時の俺はまだ、このフロアの本当の難しさを知る由もなかった。




