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読書好きが始めるVRMMO(仮)  作者: 天 トオル
5.Dランクダンジョン攻略と第二回イベント
112/268

104.2つの面倒

修正しました。

 司書ギルドに着いた俺は、カウンターにいる職員に声をかける。

 クエスト報酬である危険図書に関する情報が来ているか確認してもらう。

 俺が声をかけた職員は、一度カウンター奥の部屋に引っ込む。


 しばらくして、数枚の紙の束を持って帰ってきた。

 どうやら、司書ギルドの本部から返信があったらしい。

 俺は職員から紙の束を受け取る。


 カウンターを離れて、簡単に内容を確認する。

 資料には、どの国の図書館にあるかと、この本に関する情報が書かれていた。

 あの本と同じシリーズと思わしき本は計5冊あるらしく、俺が決めたコース上に1冊、俺が避けようとしたコースに1冊あるようだ。


 ……これは面倒なことになったな。

 あの物語の完結を見るためには、どうしても種族間のいざこざがある地域を避けては通れないようだ。

 まぁ、そのいざこざに巻き込まれると決まったわけでは無い。何事もなくスルー出来る事を祈る事としよう。


 他の2冊の本については、どれもダンジョンランクがC以上は必要な地域にあるようなので、最初の旅が終わってから考えればいいだろう。

 そして、最後の1冊については知識の国にあるらしいのだが、何やら注意書きがあった。

 知識の国にある本については、他の本を読んで条件を満たしていないと読むことができないらしい。

 それ以外の本については、どの順番に読んでもいいと書いてあった。


 俺が選択の栞を手に入れた本に、タイトルや順番を示すものは書いてなかった。

 つまり、知識の国にある物以外はどの順番でもいいという事だろうか?

 この資料にはこれ以上のことが書いてなかったので、実物を見てみて判断するしかない。

 しかし、予想が外れたか……。全5冊だと序破急以外の本がある事になってしまう。

 とりあえず、全部読んでみればわかるか……。多少不本意なコースになってしまうが仕方がない。


 俺は資料をアイテムボックスにしまい、司書ギルドを出ようとする。

 司書ギルドの出口まで来た時、2,3人のグループが入れ替わりで入ってきた。

 服装からプレイヤーの集団とわかる。……ここの司書ギルドにプレイヤーがいるのを見るのは初めてではないだろうか?

 最初の職業に司書を選んだプレイヤーのほとんどが、ラビンスに着くまでに転職してしまうので王都の司書ギルドに、俺以外のプレイヤーがいるのは新鮮に感じる。


 多少気になるところだが、俺には関係ないのでそのまま司書ギルドを出る事にした。

 その集団の1人がチラチラこちらを見ていたような気がするが、特に声をかけられることは無かった。

 俺は司書ギルドから出て図書館に向かう。


 図書館の方に来たのだが、何やらいつもと様子が違う。

 外からではよくわからなかったが、中にいる人数がいくらか多いのだ。

 服装からしてプレイヤーの利用者が多い。

 ……何か図書館でイベントでもあったのだろうか?


 俺はいつものように小説エリアの本を取り席に着く。

 ほとんどのテーブルにプレイヤーがいるので、それとなく会話の内容が聞こえてくる。


「……おい、そっちはどうだ?」

「……いや、特に新しい情報は無い」

「……今あの本はどこにあるんだ?」

「……あっちの席にいるパーティーが読んでるな!」


 一応、図書館という事で小声を会話しているようだ。

 聞こえてくる内容から推測するに、何か目当ての情報があるらしい。


「……クッソ! 早くあの本戻してくれないかなー」

「……第1陣の奴らを出し抜くには上位種族になるのが手っ取り早いんだけどなー」

「……せっかく、上位種族の情報が見つかったっていうのに」


 成程、どうやら以前のアップデートで解放された上位種族の情報がこの図書館で見つかったようだ。

 図書館にプレイヤーが沢山来ていたのは、この為だったようだ。


「……この本の出所がわかれば、ハイエルフになれる方法がわかるかもって話だったか?」

「……前にプレイヤーが調べた時にはなかった本に、上位種族への進化方法をほのめかす内容が書かれていたって話だったはずだ」

「……確か、考古学者レービスの手記? て本だったはずだ。一体何がトリガーになったんだろうな?」


 ん? 何やら聞き覚えのある内容が聞こえてきた。


「あっ。あいつらあの本を戻したぞ!」

「……静かにしろ。司書たちにつまみ出されたいのか」

「……すまん。とりあえず、あの本取ってくる」


 すると、俺と同じテーブルにいた集団の1人が立ち上がり、本棚へ向かう。

 そのプレイヤーは1冊の本を持って帰ってきた。

 そして、待っていたプレイヤーたちと一緒にその本を調べ始めた。


 俺はチラリとその本を確認してみる。

 少し内容を読むことができた。やはりというか、お爺さんが司書ギルドに提出した手記のようだ。

 どうやら、この2週間の間にあの爺さんが持っていた手記の写本が図書館の本棚に収められたらしい。

 それをプレイヤーが見つけてこの騒ぎに発展したようだ。

 上位種族への進化に関する情報はあの手記が初出らしい。


 しかし、話の内容に気になる部分があった。

 あの話の流れならハイエルフの文字を解読しようという流れになったはずだ。

 そうなっていないのはなぜだろう?


 そこまで考えた俺は先ほど、司書ギルドですれ違ったプレイヤーの集団の事を思い出す。

 もしかしたら、あのプレイヤーたちも司書ギルドにあの手記の出所を聞きに来たのかもしれない。

 あの手記の持ち主であるお爺さんにハイエルフの文字について聞くつもりなのだろうか?


 ……なにやら面倒なことになりそうな予感がする。

 おそらく、司書ギルドの職員があの手記の出所を話すことはしないだろう。

 しかし、先ほど集団の1人が俺の事をチラチラ見ていた。

 俺があの本の資料を受け取ったところを見ていたなら、司書ギルドに関わりがある可能性を考えるかもしれない。

 

 俺がお爺さんのことを話せば、プレイヤーたちはお爺さんの所に突撃することだろう。

 お爺さんの性格を考えると、トラブルになる未来しか見えない。

 ……何か聞かれてもはぐらかす事にしよう。


 俺は1冊読み終えたところで、図書館を出る事にした。

 しばらく、王都の図書館に行くのは控えよう。あの集団の件もあるが、図書館の中が騒がしすぎる。

 おそらく、あの手記以外に種族進化の情報は無いと思うので、しばらくすれば落ち着くだろう。

 

 俺は図書館を出た後、マイルームで読書を続ける事にするのだった。


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