103.新スキルとクランの状況
≪従魔カレルがレベルアップしました。≫
2週間、カレルのレベル上げと資金稼ぎをしていた。
カレルのレベルも、もうすぐ20に届こうかというところまで来ている。
あの後、結局水槽の類は買っていない。
何度かカレルを連れて露店を物色したのだが、特にカレルが気に入るものが無かった。
カレルの進化も近いので、後回しにすることにした。
2週間の間にラビンスで行われていた、第2陣プレイヤーの勧誘合戦も落ち着いてきている。
最近は勧誘したプレイヤーの強化が目的なのか、Dランクダンジョンに入っていくパーティーが増えている。
一度、山登りダンジョンに入ろうとする俺を、第2陣のプレイヤーと勘違いしたらしいパーティーからクランに勧誘されたりもした。
そういった誘いには、もうクランに所属していることを伝えて丁寧に断った。
戦闘の方では、カレルの成長が目覚ましい。
レベルが2ケタに届いた後は、渓流の中から戦闘に参加してもらっている。
カレルは淡水の中なら100%の力を発揮できるので、経験値の獲得は格段に楽になった。
カレルは渓流の中を縦横無尽に泳ぎまわりながら戦闘していたためか、「水泳」「疾走」という新たなスキルを覚えた。
「水泳」スキルはスキルレベルに応じて泳ぐときに、俊敏力に補正が入るパッシブスキルである。
「疾走」スキルはスキルレベルに応じて俊敏力に補正が入るパッシブスキルだ。
状況を限定しているため、「水泳」スキルの方が補正値は高い。
他の従魔は新しいスキルを覚える事は無かったが、既存のスキルのレベルが上がった。
ハーメルに至ってはDランクダンジョンのモンスターでは視認することも難しいらしく、相手モンスターの足元にいたりしても気づかれることが無くなった。
カレルの進化を迎えたら、一度Cランクダンジョンに挑戦しようと思う。
しかし、2週間も戦闘メインで頑張ってきたので、そろそろ王都の図書館で読書に没頭したい。
それに、お爺さんのクエストのクリア報酬である危険図書に関する情報もそろそろわかっているころだと思う。
俺は一度ログアウトした後、再びログインして王都行きの馬車に向かう事にした。
……………………。
≪習得度が一定に達したため、スキル「空間魔法」を習得しました。≫
王都に向かう馬車の中で、空間魔法の教本を読み終えた。
読み終える少し前に、空間魔法のスキルを覚えることができた。
俺は自分のステータスを開き、スキルを確認する。
「空間魔法」LV1 アクティブスキル
アーツ
・LV1 アポーツ 消費MP10~ ・・・消費MP10ごとに自分を中心とした半径1mにあるものを引き寄せる。引き寄せられるものは大きさで四方50cmまで。ただし、生物及び自分以外の所有物になっているものを引き寄せる事はできない。
どうやら、物を引き寄せるアーツであるようだが、どのように引き寄せるかわからない。
四方50cmの大きさの物というとそれなりのものを引き寄せられるだろう。
俺はスキルのテストをするため、馬車の中を見渡す。
すると、視界の先に爆睡中のハーメルが映る。
ハーメルは以前、常時装備していたパジャマに着替えており、俺が座った席の反対側でミーシャに作ってもらった布団にくるまって、寝息を立てている。
ハーメルそのものや装備品は引き寄せる事はできないが、布団については俺の所有物扱いだ。
俺は少しイタズラ心が疼いてしまい、ハーメルの布団に向かってアポーツを使用することにした。
「アポーツ!」
「チュウ!」
俺がアポーツを使用すると、ハーメルがくるまった布団が一瞬輝き、その場から消える。
すると、俺の掌にハーメルの布団が現れる。
突然暖かい布団を奪われたハーメルは驚いて目が覚めたようで、驚きの声を上げていた。
俺は苦笑しながら、ハーメルに布団を返す。
「悪かったよ、ハーメル。ちょっとスキルのテストをしてたんだ」
「チュウ! チュ、チュウ!」
ハーメルは抗議の声を上げた後、俺から布団をひったくる。
再び、布団を敷き直して眠りについていた。
どうやら、相当に眠いらしい。ちょっと悪いことをしたかもしれない。
俺は爆睡しているハーメルの頭を指でなでながら、心の中でハーメルに謝るのだった。
……………………。
王都に着いた俺は一度ログアウトして昼食をとる。
春花に近況を聞くと、次のイベントに向けてクラン総出で消費アイテムの準備を進めているらしい。
今回のイベントはアイテムの持ち込みが可能だ。そこで、クランメンバー全員に行き渡るくらいのアイテムを集めているらしい。
前回のイベントでそこそこ知名度があったからか、ハルのクランには多くの第2陣プレイヤーが売り込みに来たらしい。
おかげで、より多くのアイテムが必要になり大変なようだ。
ちなみに、アイテムを受け取るクランメンバーの中に俺は含まれていない。
そもそも今回のイベントでは単独行動を明言しているのに、アイテムだけもらおうなどとは思っていない。そのことは春花経由にクランに伝えてもらっている。
春花も俺が断る事はわかっていたようで、先に断ってくれていたらしい。
余計な時間を取らせなくてよかったと思う。
昼食を食べ終えた俺は再びログインする。
マイルームから出て、総合ギルドを後にした。
読書の前にクエスト報酬がどうなったか確認するため、司書ギルドに向かう。




