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読書好きが始めるVRMMO(仮)  作者: 天 トオル
1.彼がゲームをする動機
11/268

10.初クエストと出会い

旧19.20です。

 レーナさんが出て行ったあとさっそくとばかり資料室にある本を手に取って読み始める。整理している時も思ったが、総合ギルドの資料室という割には内容がモンスターの生態や素材についてのものに偏っている気がする。


 個人的にはとてもありがたいが、今回は2時間くらいこの部屋の本を読んだら、一度クエストを受けてみたいと思う。

 この部屋の本を読みつくしてからでもいいのだが、クエストを受けないとギルドランクが上がらないので、当面の目標である図書館の利用が遅れてしまうため並行してやっていきたい。

 俺としてはここの本を読みつくすのと同じくらいのタイミングでEランクに上がっておきたい。


≪読書スキルの熟練度が上がりました。≫

≪魔物知識スキルの熟練度が上がりました。≫


 予定の時間を少し過ぎてから退室申請を出して資料室を後にする。総合ギルドの中はだいぶ人が減っているのがわかる。春花が言っていた通り次の町(都市)に向かったのだろう。

 壁に貼り付けてあるクエストの中から町中でできるものを探す。

 すると、夕食前に見たクエストを見つける。


溝掃除  依頼者 総合ギルド

 居住区の周りの溝掃除

報酬 一定区画ごとに200ラーン


 試しにこのクエストを受けることにした。このゲームではゲーム内で着いた汚れはスキル・アーツで取り除くか、ログアウトすれば自動的に落ちる。

 ただし、一度ログアウトするとプレイ時間に関係なく1時間ログイン禁止である。


 今回は予定の時間いっぱいまでクエストをこなしていく予定なのでクエストの報告は次のログインの時でいいかなと思う。

 それに溝の中にはモンスターが住み着いているのではないかとにらんでいる。どれくらい汚れているか知らないが、依頼が来るくらいなのでかなりのものだと思われる。


 そうすると泥の中で息をひそめている生物がいても不思議ではない。

 クエストを受けるために紙に手を伸ばそうとすると。


≪ 町中クエスト   溝掃除    を受注しますか? YES/NO ≫

 

 どうやら受けるだけならカウンターに行く必要はなさそうだ俺はYESを押す。

 すると受注しましたとのアナウンスが流れるとともにクエストの詳細が出る。

 地図が出てきて一部が赤く点滅している。作業する区画を示しているみたいだ。

 道具についてはギルドカウンターで受け取るようだ。

 ふとカウンターに目を向けるとちょうどレーナさんの前が空いたようなので向かってみる。


「どうも、さっきぶりですレーナさん」

「はい、さっきぶりです。いかがなさいましたか?」

「溝掃除のクエストを受けたので道具を受け取りにきました」

「そうですか!ありがとうございます。こちらが道具になります」


 そう言ってどこからか鍬、シャベル、ごみ袋らしきものを取り出してきた。


「このクエストはFランククエストのために総合ギルドが請け負っているのですが、受ける人がいないと定期的にギルド職員が代わりに行うことになっているのですよ」


 「ありがとうございます」に力が入っているなと思ったらそういう理由か。そんな事話していいのかと聞いてみたら別に隠しているわけではないので別にかまわないそうだ。

 ちなみにゴミ袋はゴミ専用のマジックバックになっていて入るものを制限する代わりに大容量なのだそうだ。

 それに、制限しておけば誰かの落とし物があった場合それをえり分けることができるから一石二鳥であるらしい。


 なにやら周りの視線を感じてきたのでレーナさんにお礼をいって出ていく。

 さすがについてくることはないようだが、ちょっとギルドに入るのが面倒になってしまったかもしれない。

 クエストの現場に到着したので気持ちを切り替えて作業を始める。溝にたまった泥を鍬でかき集めてシャベルですくいゴミ箱に入れる、そのルーチンワークを繰り返していると≪掃除範囲が一定に達しました。≫とアナウンスが聞こえる。

 どうやら一定範囲を掃除するごとにアナウンスが入るようだ。


 何度目かのアナウンスを聞いてしばらく、そろそろ一区切りつけてログアウトしようかと考えていたその時、今まさに鍬を振り下ろそうとしていた泥の塊が飛び跳ねてこちらに突っ込んできた。


 むんず

 泥をまとっているからか動きが鈍く体にぶつかる前につかみ取ることに成功した。


「ヂューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」


 つかんだ物体からくぐもった鳴き声が聞こえる。

 俺はにやりと笑う。

意外と時間がかかったなと思う。


 チュートリアルで読んだ「ファースト付近の魔物の生態」で載っていたマッドラットというモンスターだろう。

 泥の中に潜み外敵から身を守りつつ、地面に落ちた木の実を食べて生活している。

 個体として弱いが増えすぎると作物に被害が出るので定期的に間引かれる。

 町の中に住み着いた場合はそれほど増えてこないので人の食べ物に手を出さない限り放置される。こいつもそういう個体だろう。


「ヂュー、ヂュー」


 何やら抗議をするように鳴いているのを見ながら、本当に雑魚モンスターにも感情AIが積まれているんだなとひとり感心していた。

 しかしここで出会ってしまった以上、倒すか仲間にするかの二択だろう。仲間にしないにしろ、俺でも倒せそうなモンスターが目の前にいるのに逃す選択肢はない。

 とりあえず説得してみることにした。


「おい、言葉が通じるかわからないが今ここで選ばしてやる。俺の従魔になるか、最後まで徹底的に抵抗するか。まぁ、こんな状態でできることもないかもしれないが」

「ヂュウ……」


俺がそういうと先ほどまでの威勢は鳴りを潜め、シュンとした態度になる。言葉はわからないが、上下関係がはっきりしたのは何となくわかった。


「そんな悲しそうな声出さなくても俺の従魔になればとりあえず死ぬことはないぞ」

「ヂュウ?」


 いまだ泥の塊なので顔は見えないが、泥の塊が回ったので、首をひねったのだろうということはわかった。


「まぁ、やってみないとわからないか。それじゃあいくぞ」


 俺はそう言うと、マッドラットだろう泥の塊を見つめながら


「テイム」


と口に出した。すると泥の塊が淡く光りだして、



≪マッドラット ♂のテイムに成功しました。名前を付けてください。≫


 そのアナウンスとともに手の中に茶色いふさふさとしたネズミが現れた。


NAME「」 

種族「マッドラット ♂」LV2 種族特性「泥」 

 HP 30

 MP 10

筋力 3

耐久力 3

俊敏力 3

知力 6

魔法力 2 

 スキル

「危険察知LV1」「泥術LV1」「隠者LV1」


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