93.クラン一時加入
修正しました。
話の流れには大きく影響しません。
「お兄ちゃん! こっち、こっち!」
俺が転移の扉から出てくると、ハルが声をかけてくる。
従魔たちを連れてハルがいる方向に向かう。
周りにはイベントで一緒に行動したプレイヤーもいた。
「クランへの登録はどうすればいいんだ?」
「ここにクランの副マスターもいるから、ここで全部済ませられるよ!」
ハルがそういうと後ろにいたメンバーが1人、前に出てくる。
身長が3m越えで大きな斧を持った男性だ。
確か、名前はタイヨーという巨人族のプレイヤーだったか?
「お久しぶりです。自分の事覚えていますか?」
「それは問題ないです。ゲーム内では3か月たっているかもしれないが、現実世界では1か月くらいしかたっていません。さすがにそれで忘れたりはしませんよ」
「ははは、それは良かった。先ほど、ハルからも紹介があったように、自分がクラン『お気楽』の副マスターです。クランのモットーがそのままクラン名になっています」
タイヨーさんが苦笑いしながら、クランの名前を教えてくれる。
俺はクラン加入手続きをしながら、タイヨーさんの話を聞く。
「自分たちのクランはゲームを楽しむことがモットーなので、クランのためにノルマを課すことはしません。時々、集まって一緒にクエストを受けるくらいの緩いクランです。もし、気が変わって、クランの正式メンバーになってもいいと思ったらいつでも歓迎しますよ」
「そうですか。お気持ちはありがたいですが、今の所どこのクランにも正式に所属するつもりはありません。基本的に1人で趣味に走ることが多いので」
俺がそういったところで突然、タイヨーさんが首を傾げながら俺と従魔たちを見つめる。
「すいませんがマイルーム等に待機している従魔はいますか?」
「なぜですか?」
「パーティー単位でクランへの加入申請をするときは、人数も表示されるのですが5人と表示されているのですが」
俺はその言葉に合点がいき、手に持っていたグリモを紹介する。
「俺のパーティーは5人で合ってますよ。最後のメンバーはこいつです」
「!」
「この本ですか?」
「はい。見た目はただの本ですが、インテリジェンスブックという魔物の一種なんです。名前はグリモと言います」
グリモの紹介をしていると、隣で見ていたハルが俺に話しかけてきた。
「へー。そんなモンスターがいるんだー。よろしくね、グリモちゃん!」
「!!」
「書いている文字が変わるんですね。そうやってコミュニケーションをするわけですか」
グリモに書いている文字が変わったのを見て、ハルが何か思いついたような顔をして俺にお願いしてくる。
「ちょっと、グリモちゃん貸して?」
「ん? なんでだ?」
「いいから、いいから」
そう言って俺の手からグリモを持って行ってしまった。
まぁ、悪いようにはしないだろう。
俺は再びタイヨーさんとの話に戻る。
「えーっと。これでパーティーが5人である理由はわかっていただけましたか?」
「はい。ありがとうございます。では、手続きを再開します」
しばらくして、タイヨーさんはウインドウの操作を終える。
俺がステータスを確認すると、所属クランの欄が増えている。
その後ろにクラン名である『お気楽』と書いてあった。
「これで手続きは終わりになります。ご足労ありがとうございました」
「そうですか。クランに加入した時の注意事項と、イベントまでもしくはイベント中についてはどうすればいいですか?」
俺がそういうとタイヨーさんは説明を始めた。
「そうですね……。特にクランとしてやってほしい事はありません。先ほども説明しましたが、楽しむのがメインのクランです。もしかしたら、イベントの詳細が判明した時、ハルに伝言を頼んでどうするか確認するかもしれません」
「わかりました。その辺はハルに確認しておきます」
話し合いも終わったところで、グリモを返してもらうべくハルの元へ向かう。
ハルはグリモを連れて、総合ギルドの外に出ていた。
出入口から少し離れた場所にしゃがみこんで、地面に何か書きながらグリモに話しかけていた。
俺はそんなハルに声をかける。
「おーい、ハル。こっちの用事は終わったから、そろそろグリモを返してもらっていいか?」
「ん?おー、お兄ちゃん。クランの加入手続きは終わったんだね。わかったよ!グリモちゃんを返すね!」
俺はハルからグリモを受け取る。
「グリモを連れて何をしていたんだ?」
「んー。それはグリモちゃんに聞いてくれればわかると思うよ」
「グリモにそんな細かい表現はできないはずなんだが」
「いいから、いいから」
俺はハルに言われたとおりに、グリモのページを開いて確認してみる。
「 (≧▽≦) 」
グリモは顔文字を覚えた。
「グリモちゃんがビックリマークばっかり使ってたから、感情伝わりにくいかと思って顔文字を教えてあげたんだよ! まだ、教え切れてないから、時間があるときにまたグリモちゃんを貸してね!」
俺が唖然としているとハルが胸を張って宣言する。
「 (`・ω・´) 」
なにやらグリモも得意げだ。
確かにグリモの気持ちがわかりやすくなったので、ありがたいと思う。
「わかった。ありがとう、ハル。グリモも良かったな」
「 (*´▽`*) 」
「今度はイベント開始直前くらいかな?またよろしくね!グリモちゃん!」
「 (`・ω・´)ゞ」




