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幕間ー4

 幸いなことに、土方勇志提督と野間口兼雄大将の独断専行は大問題にはならずに済んだ。

 実際、当時、辛亥革命後の中国国内の混乱を嫌って、かなりの中国人が日本国内に亡命してきていたのだが、やはり外国人と言うことで色眼鏡で彼らは見られており、更に尼港事件から悪印象を持たれていた。

 そうしたことから、大震災後の不安からまき散らされた流言飛語の標的と中国人はなり、大阪等、東京以外の地で発行されていた新聞の多くにまで、中国人が大震災に乗じて、日本人を殺したとか、毒を撒いたとかいう記事が載った。

 そして、日本各地で中国人が暴行を受ける例が多発し、中には殺された例や、中国人と誤解された日本人が暴行を受けた例まで起きた。

 そういったことを徐々に秩序を取り戻した日本の治安機関は厳しく取り締まり、横須賀海兵隊はその一員として奮闘した。

 だが、最終的には中国国民党政府は、日本全体で中国人数千人が虐殺されたと主張し、このことが後に中国での排日運動の過激化につながることになる(ちなみに、当時の日本国内に中国籍の人は1万人余りで、暴行死によると推定される中国人は、どう多く見積もっても数十人に止まる。)。


 こういった大混乱に対処するには強力な内閣が必要だと考えられた。

 そこで、元老の山本権兵衛が乗りだし、挙国一致内閣を組織することになった。

 9月2日に山本権兵衛は首相に任命され、直ちに秩序回復のための戒厳令を関東地方全体に敷いた。

 そして、山本内閣は精力的に動き、被災者の救援等を行い、震災直後の混乱回復に成功した。


 山本内閣は、挙国一致内閣と言うことで強力な人材を揃えていた。

 高橋是清政友会総裁を蔵相に迎え、加藤高明憲政会総裁を外相に、犬養毅革新倶楽部総裁を文相兼逓相に迎えた。

 そして、後藤新平を内務大臣に迎えて、帝都東京の復興の陣頭指揮に当たらせることになった。


 最終的に山本内閣が把握した帝都東京を中心とした関東大震災の被害は重大なものがあった。

 約190万人が被災し、当初は約14万人が亡くなったとされた(後に約10万5000人と下方修正される。)。

 地震発生が午前11時58分頃であったことから、昼食の準備のために火を使っていた家庭が多かったことが、火災を多発させ、折からの強風に炎が煽られ、大火災となったことが被害者を増大させた。

 一説によると死者の8割以上が、地震後に発生した火災によるという。

 また、津波やがけ崩れ等の被害も相当に及んだ。


 これに対する外国からの救援は盛んに行われた。

 英仏米からは、世界大戦で共闘した仲ということもあり、義捐金や救援物資が大量に集まり、日本の外債応募に英仏米の銀行団が特別に低利で応じ、英仏米政府が連帯保証するという異例の対応が取られた。

 韓国政府からも同盟国と隣国の誼で、多くの物資や資金援助があった。

 また、他の欧州、アジア、中南米諸国からも官民を問わず、物資や資金援助があった。

 特にベルギーからは世界大戦時に祖国解放のために日本軍が奮闘していたことから、国に見合わない物資や資金が上は国王から下は庶民まで、日本に送られた。

 変わった所では、旧清朝の皇帝、溥儀からも多額の義捐金(20万ドル相当)の提供があった。

 ちなみにこの縁もあり、後に溥儀は日本に亡命して、日本で最期を迎えることになる。


 山本首相は、後藤内相に帝都の復興計画の大枠を任せて、思う存分、腕を振るわせることにした。

 諸外国からの義捐金、英仏米の銀行団による特別な低利の外債の引き受け、高橋蔵相のバックアップ、「大風呂敷の男」と謳われてきた後藤にとって、これ以上ない程の状況が整っていた。

「帝都を大復興させて見せる」

 後藤は固く決意した。

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