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復讐39話



 間一髪。

 あと数瞬遅れていたら恐らく逃げた先がバレていた。

 だが、視界から外れたが故に、この隠れ家に入れたのだ。


 ただ問題は、その家の持ち主が、件の復讐相手だったということである。



 「まさか、()が助けてくれるとはね」


 「!」



 ユイトの口調の違いに気がついた。

 どうやら、元々はそうだったらしい。

 敵意を悟られない為のカモフラージュだ。

 よく我慢していると、ユイは感心していた。

 しかし、



 「取り繕わなくれいいわ。私は、それだけ酷い事をしたんだもの」



 リーリアは、それを完全に見抜いていた。



 「………」



 ユイはユイトの様子を伺う。

 だが、読めなかった。

 この異常な状況を、一体どう考えているのか。

 仲間といえど、出会って数日。

 わからないことは多いし、もしかしたらこの女の方が多いかもしれない。

 そう考えると、少しだけモヤモヤとした。




 「………とりあえず、2人とも中に入って。詳しい話を聞きたいの」



 










———————————————————————————












 ユイトは、ここまでの出来事を掻い摘んで説明した。

 ただし、復讐のことは省いている。

 それにバレていないとは限らないが。



 「そう………そんな事が」


 「そういう事だ。俺は正直、お前も信用していない。俺が信頼しているのはユイだけだ」


 「………話し方、すっかり変わったのね」


 「お陰様でな」



 皮肉めいた返しに、リーリアは表情一つ変えない。

 ユイは、彼女もなにを考えているのかわからないのだ。

 正直、少し話についていけない様子だった。

 すると、



 「ユイ、そんな顔するな。別にこの女とわかり合ってるなんて事でもないんだ」


 「………気にしてないっての」



 どうやら、ユイトはユイの思っている事が丸わかりの様だ。



 「羨ましい………ユイちゃん………だっけ? ユイトってば、すごく大切にしてるのね」


 「ああそうだ。お前らにもそう()()()だろ?」


 「………うん。そうだったね」



 そのまま、重たい時間が流れた。

 何を言うわけでもなく、ただただ時間が過ぎていく。

 裏切り者と裏切られた者。

 その両者が同じ空間にいて破綻しない方がおかしいのだ。


 だが、ユイトはその空気を無視して、質問をした。



 「何故助けた?」


 「!」



 そうだ。

 彼女は何故、国に追われる立場にあるユイトを助けたのか。

 1番の疑問だった。



 「あの時言ったよな? “バケモノ” って。どういう風の吹き回しだ?」


 「………………言えたと思う? あの状況で」


 「何?」


 「言えるわけないでしょう………バケモノじゃないなんて!」



 突然、リーリアは口調を荒げ、大きな音を立てながら立ち上がった。

 


 「あの状況でそんな事を言えば、消されるのは私よ!? 出来ると思う!? 世界の名だたる戦士がいる間でそんな事が!!………………あ………」



 すると、ふと我に返ったように顔を青ざめさせ、ゆっくりと座った。

 ユイは確かに見た。

 あの後悔の表情を。


 だが、ユイトの表情は依然崩れる事はない。

 こちらの意思は、そんな程度で崩れるものではなかった。



 と、思っていた。



 「………そうか。確かに、お前だけは俺を殺そうとはしなかったな」


 「ユイト!?」



 何かを言おうとすると、ユイトはユイを制した。




 「けど………俺はまだお前を信じられない。それだけの心の余裕はない」


 「うん。わかってる………でも、一度だけチャンスが欲しい」



 リーリアはある紙を取り出した。

 それを見て、ユイトは大きく目を見開いた。



 「………契約魔法刻印だと………………お前、正気か?」



 契約魔法刻印とは、魔法を用いた誓約書のことだ。

 誓約書に魔力を込めることで、体の一部に小さな刻印を埋め、違反した場合その刻印が所有者の体を蝕み、最終的に殺すほどの強い効力のある誓約書だ。



 危険すぎる刻印として、普通は使うのを憚かられる代物だ。

 しかし、リーリアは危険を顧みず、刻印に魔力を込め、誓いを立てた。




 『リーリア・ヴァルティメルドは、クロガミ・ユイトの存在を一切他言せず、また一切の危害を加えないことを神の名のもとに誓います』




 その瞬間、神が炎を上げながら豪々と燃え盛る。

 炎は何も燃やさない。

 これは罪人を裁定する神の炎だ。

 誓いを破った瞬間、この炎はリーリアを焼き尽くす事だろう。

 そして炎はやがてリーリアの手の甲へ吸い込まれるように収束していった。




 「………!!」



 唖然とするユイ。

 ここまでするとは思っておらず、正直予想外にも程があると思っている。

 そしてそれを、思わず呟いていた。




 「何でここまで………他人のユイトのために!?」



 するとリーリアは、少し困った様な顔で、こんな事を言ったのだった。





 「さぁ? なんででしょうね」





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