復讐38話
何故、こんなことに………
ユイはそう思いながら、ぶくぶくと水面で泡を作っていた。
「うふふ。ユイちゃん………だったよね?」
豊満な胸とすらっとした腰周り。
凄まじいプロポーションだと認めざるを得ない。
思わず下を見下ろし、自分にない何かを見せつけられたように感じたユイは、ついつい睨んでしまう。
だが、それ以上に不可解な状況下にあった。
「色々と聞かせて欲しいなぁ」
そう、今ユイは………
「彼を助けたって言うお・は・な・し」
パートナーの復讐相手であるはずの女と、風呂に入っているのだ。
ああ、何が何やら………
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「は? 正気?」
「当然だろ」
思わず聞き返すユイ。
それほどに、これからするユイトの行動が不可解だったのだ。
「もう一回言うぞ。今から、直接話をする」
「はぁ、だからそう言う無茶は——————」
ヌッと背後に影が差す。
どうやらユイト達の声が聞こえていたらしい。
「あの………………何が騒ぎでも………………っ!?」
「っ………………!」
ギョッとするユイ。
しまった、騒ぎすぎたと反省する。
だが、表情には見せない。
とりあえず、いつも通りの真顔を通した。
だが、彼女は、ユイトの顔を見るや否や妙な反応を見せたのだ。
そこで、ユイトの方がまずいと察知した。
マスク代わりの包帯をしていて、髪も変えている。
バレる事はないと思ったが、一つ失念していた。
探査系US保持者の対策についてだ。
「うそ………………だって………」
まずい、バレた。
しかも最悪だ。
何せここでバレたのがリーリアならばいざ知らず。
「死んだはずなのに………………!!」
そこにいたのは、一般市民。
それも付いていない事に、ユイトだとわかるUS持ちであった。
「う………裏切り者のゆ——————————」
「チッ………!!」
ユイトは躊躇なく、首を切り落とした。
しかし、直前までもそこそこ大声を出していたので、人が集まってくる。
「なんだ………?」
「裏切り者?」
「………………………おい、あれって!!」
完全にやらかしたと、舌打ちを打ち、ユイトはユイを引っ張って逃げた。
「くそッ、ツイてない!!」
「殺しだ!! 裏通りに逃げたぞ!!」
狭い通路を全速力で駆け抜ける。
しかし、いかんせん数が多く、振り切るのは難しそうだ。
加えて、大声で増援を呼ばれている。
ますますマズい事態だ。
「どうする、ユイト」
「全員殺してもいいが、それは流石にダメだ。後で大事になるのは避けたい………………くッ、多いな………………いや、待てよ。こっちなら………」
「っ………ダメ、来てる………………って、そっちは………!?」
目の前からも追いかけられ、ユイトはさらに狭い路地へ進んだ。
しかし、ユイはそれを止めようとした。
このままでは袋小路になってしまうからだ。
ただ、逃げ道が少ないのも確か。
人のいない通路は通っているここ以外になく、上からも見られている。
ユイトはさらに奥へ、その更に奥へと、どんどん屋根のついた狭い場所を進んでいく。
以前追っては途絶えないが、代わりに通路が減ってきた。
行き止まりが近い。
そう思っていると、
「!」
行き止まりにぶち当たった。
「もうダメね………戦うしか」
「いや、当たりだ」
ユイトは目の前ではなく、ある方向へ顔を向けていた。
ひっそりと、殺気を抑えつつ。
「こっちよ、ユイト」
そこにいたのは、ユイトの敵となる筈の女。
リーリアだったのだ。




