復讐37話
「見えました。王都です」
運転手がそう告げた。
帰ってきた。
ついにユイトは第2の故郷に帰ってきたのだ。
ユイトは溢れ出てきそうな殺気を何とか抑えて、ステレアに微笑みかけた。
「お陰で予定より早く着く事が出来ました。本当に感謝申し上げます」
「いえ、私たちの方こそ大変助かりました」
ステレアは軽く頭を下げてそのまま付き添いの騎士の方へ行った。
ユイトはユイの隣に座った。
そろそろ始まると思うと、思わず口元が歪んでしまいそうになる。
ようやくたどり着けたこのスタート地点。
ほん十数日しか経っていないが、
絶対に成し遂げて見せると心に誓った。
「いよいよ………いよいよだ………」
流石に聞こえないようにだが、隣にいたユイはその狂気に満ちた声をしっかりと聞いた。
だが、ユイはその狂気に同調する。
手伝うと、共に地獄を歩むと決めたが故の、同調であった。
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「申し訳ありません。御世話になりました」
ユイトは例の如く別人のように振る舞いながら、いや、これは以前の顔を貼り付けているだけなのかもしれない。
ともかく今のユイトとは真逆な顔を貼り付けた笑顔で、ステレアに礼を言った。
「いえ、こちらこそ道案内大変助かりました。また縁があればお会いしましょう」
「——————っ、はい」
ユイトは表情を悟られないようにお辞儀をする。
(縁………縁か)
フッと笑うユイト。
そう、縁ならばあるだろうし、再会もするだろう。
何故なら、彼女も王族だ。
つまりユイトの復讐の対象なのだから。
「それではご機嫌よう」
ステレア達は馬車に乗って、王宮へ向かった。
馬車が見えなくなると、ユイトは振り返りいつも通りの表情に戻る。
「ああご機嫌よう。その首を吊るされるその日まで、精々安寧の日々を享受するといい」
復讐者の目で、ユイトはそう言うのだった。
「ねぇ、ユイト。これからどうする気?」
「あ? あー、そうだな………まずは挨拶といこうか」
「え?」
ポカンとするユイ。
誰か知り合いのところに行くのだろうか、と考える。
しかし、ユイトにとって、この街の民は全て敵のはずだ。
そう思っていると、
「さっき言った、第一の復讐相手のところに、直接乗り込むつもりだ」
「なっ………正気!?」
「当然。俺は至って正気だよ。だからあいつのところに向かうんだ。あいつなら、まぁ間違いなく俺を通報する事はない。自分の手元に置こうとする、か、ら………」
突然、ユイトが押し黙った。
そしてその血走った目を見開いて何かを見据えた。
見つけた、と言わんばかりにその歯を剥く。
何があったのか、ユイは一瞬で察した。
その視線の方向を見るとそこには、
「彼女は………」
「ああ、そうだ。あいつが俺の………いや、俺達が復讐を行う最初の相手。リーリアだ」




