復讐34話
王都へはそう遠くはない。
ユイトがやってきた近道を通ればすぐにでも見える。
そんな道中、ユイトはそわそわしているユイが目に付いた。
「………」
辺りを物珍しそうに眺めている。
外が久しぶりだからだろうか?
しかし、こうなったのもこの道を通り始めてからだ。
そんな理由ではあるまい。
「ユイ、どうした?」
理由はわからないので、挙動不審になっているユイに尋ねることにした。
「え………あ、いや、なんでもないわ」
何でもないと言う顔ではない。
しかし、隠しているというよりは困惑しているといった表情だった事に、ユイトは引っかかった。
尋ねてもいいが、無理に聞くと嫌がられそうだ。
とりあえず、保留にしておくことにした。
「あ、人………」
「!」
ユイトは口元を隠した。
どうやらこちらに向かっているらしい。
「どうする………?」
「いや、包帯を巻いている人は多いし、そこまで疑われないだろうからとりあえず普通にしておこう。挙動不審だと返って怪しまれる」
「わかった」
5,6台の馬車に乗ったの団体がこちらに来て、馬車を止めた。
カーテンを開けて、フードを被った女が身を乗り出す。
「あの、旅の方でしょうか? それともこの国の方?」
「この国の者です。お困りのでしょうか?」
ユイトは面のような笑顔を顔に貼り付けてそう答えた。
「よかった! あの、道をお尋ねしたいのですが、王都はどちらでしょうか?」
「王都はここから東へ10キルトほど離れた橋を通ってまっすぐ道なりにすすんだ場所です。大きな壁があるのですぐわかると思います」
1キルトは1kmに相当する。
1メルトがmで、1セルトがcmだ。
「ここからだと………あちらの方角ですね」
「あ、すみません、聞き方を変えます。あの経路を通らない行き方はありますか?」
「は?」
聞いたところ、今向こうの経路は橋が壊れていて使えないらしい。
ユイトが森に来た時使った経路は、歩行者専用の近道だった。
面倒だな………
ここは適当にごまかして逃げようと思った。
だが、あることの気がつく。
それは、
「!」
騎士風の男と目があう。
ユイトは、彼をしっている。
彼は、王国騎士だ。
「——————!!!」
しかも、彼のことをユイトはよく知っている。
彼は、ユイトの同輩で、フランクルという。
そして、この間の事件の際にユイトに罵詈雑言を吐き、傷を負った体をさらに痛めつけ、嘲るように笑っていた。
「ユ………」
ユイはユイトの目を見て一瞬で悟った。
ああ、止められない。
あれは、今にでも溢れ出る。
ユイトは湧き上がる怒りを必死に抑えようとした。
しかし、
ピリッ
僅かな殺気を感じ取った騎士が馬車から飛び出してきた。
「その殺気………貴様何者だ!!」
マズイとはもう思っていなかった。
——————決めた。
こいつだ。
こいつを使って最初の復讐をしよう。




