復讐33話
「ユイト………どこにいるの………?」
リーリアは、かつて仲間だった少年を想った。
彼は今行方知れず。
裏切られ、傷つけられ、絶望し、どこかを彷徨っている。
そう、彼女は後悔しているのだ。
『近づかないでバケモノ!』
「っ………!」
自分が言ったあの言葉はおそらく彼に想像もつかない傷を残しただろう。
あの時の少年の顔を彼女は忘れない。
絶望、憎悪、憤怒、あらゆる負の感情をぐちゃぐちゃに混ぜたあの表情を。
彼女はその時、長年騙し続けた罪悪感が一気に弾けた気がした。
「ああ………ユイト………私はなんて事を………」
彼女は疑問に思っていた。
何故、こうまでして彼を追放しようとするのか。
国民全部を巻き込んでここまでする理由がわからない。
彼女は他の連中とは少し違う。
結論から言うと、リーリアはユイトを追い出したくはなかった。
その理由は仲間だからとか、可哀想だからとか、そんな理由じゃあない。
「折角………王女様がいなくなったのに」
彼女は、純粋にユイトを慕っていたのだ。
物心ついた時から惚れっぽい性格である自覚はあった。
その中でも、ユイトは特別であったのだ。
4人パーティで世界を回っているとき、彼女はずっとユイトに恋焦がれていた。
でも、それが叶わぬ恋である事は自分でもよくわかっていた。
何せ相手は一国の王女。
加えてユイトは勇者だ。
魔王を倒してしまえば、世界を救った美男美女のカップル。
これ以上なくお似合いの組み合わせであろう。
だが、王女はユイトではなく、ユージンと関係を持っていた。
そして、いつかユイトを切るつもりであることを知ったのだ。
チャンスだと思った。
しかし、結果はどうだ?
ユイトは国を追われ、更に自分は傷心のユイトに止めを刺すような言葉を言ってしまった。
今、彼は誰の助けも得られずに途方に暮れている事であろう。
では自分はどうするべきか。
「………………………」
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「ユイト、どこに行くの?」
「王都だよ」
「え………でもさ、アンタ今行ったら流石に顔バレするんじゃ………それに、そもそも入れるの?」
当然の疑問だ。
確かに、王都の門は検問が厳しくなっているだろう。
顔をかなり知られている。
しかしユイトも馬鹿ではない。
「顔は隠せばなんとかなる。侵入に関しては隠し通路を使えば問題ない」
「へぇ………そんなのがあるんだ………王族のでしょ?」
「いや、王族の通路からさらに別の通路を作ってある。隠し通路があればいつか俺が使うと奴らは踏んでいただろうからな。王族の通路は使えないんだ」
ユイトが王城から逃げる時に作った急ごしらえの通路だ。
隠し通路なだけあって派手な捜索はしたくないだろうから、と考えたのだ。
「でもなんで王都に行くの?」
「目に焼き付けて置くためだ。俺が復讐すべき国の心臓を………この眼に」
こうして、ユイトたちは王都へと足を運んだ。




