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復讐32話


 「アンノウン………」



 名無し、顔無し、知らない者、色々出てくるが、正しい答えはわからないままだ。

 だが、ユイトの中で何かが引っかかっていた。


 それは、アンノウンがUSであると言う可能性だ。


 しかし、



 「ユイはどんなUSを持ってるんだ?」


 「US………私のUS………わか、んない………でも、どんな力かはわかるわ」


 「そう………」



 結局アンノウンかどうかはわからなかったが、どうやらユイはUSをちゃんと持っているらしい。

 ユイトと違って、力を消されたわけではないようだ。



 「ちなみにどんなUSなんだ?」


 「それは——————あっ!」



 ユイが声を上げて気がついた。

 そう、モンスターだ。

 しかし、



 「………ご無沙汰だなぁ。お前は俺が真っ先に斬って殴って刻んて潰して絞ってやろうかと思っていたが、こんな姿になっているとはな………」



 以前、ユイトが洞窟に落ちるきっかけとなったオークが無惨な姿で死んでいた。



 「やはり王国の連中は俺を血眼で探しているらしい。見ろ、この跡。槍で滅多刺しにした跡だ。綺麗に刺しているという事はモンスターの仕業じゃあない」


 「王国………!!!」



 ユイは目に見えて怒りを露わにしていた。

 唯一鮮明に残った記憶が王国からの蹂躙であるせいだろう。



 「落ち着いて。まだ焦るなよ。俺たちには時間がある。そう、ゆっくりと、時間をかけて壊すんだ。そうしないと俺たちの気は済まない。そうだろう?」


 「………そうね」



 ユイも落ち着きを取り戻したらしい。



 「さて、今後の予定だが、とりあえず必要なのは変装だ」


 「変装?」


 「俺は顔が割れている。ここ数年でこの国中を旅して恐らく俺の顔はほぼ全国民に知られている。手配書も出回っているだろう。だからまず見つからないようにしなければならない」



 ユイトはスッと手を出した。


 

 「そこでこのAUSだ」


 ユイトの知っているUSでこんな物がある。

 それは、時を遅くするUS【抑スル者(サプレッサー)


 者の時間を抑制し、長持ちさせる、ワルゴ・ベルトロンと言う老人のUSだ。

 王国お抱えの魔導師で、貴重なアイテムを保管している。

 ユイトもよく装備品やアイテムを預けていたが、おそらくもう殆ど残っていないだろう。


 「………AUS【進メル者(アドバンサー)】」



 ユイトは髪に触れてAUSを発動。

 すると、見る見るうちに髪が伸びていく。


 そして、最終的に肩より下まで伸びていった。



 「うわっ、アンタ凄いわよ………」


 「思ったより邪魔くさいな………」



 いらない装備品の紐を千切って髪を括った。

 後ろで一本結びしている。



 「………思ったより似合うわね。元がそこまで男らしい顔立ちじゃ無いからかしら? 女々しいわね」


 「すっごいディスる………」



 何はともあれ変装は出来た、が、まだこれでは弱い。

 常備してあった包帯を右目に巻いて顔を半分隠す。



 「ぱっと見で、俺かどうかわかるか?」


 「ん………いいんじゃない?」



 おそらくこれでバレないだろう。

 いや、変装なしでもすぐには気づかれなかったかもしれない。


 何故なら——————




 「お、池だ」



 ユイトは、水面に顔を出した。

 一瞬大きく目を見開く。

 そして何かを諦めたように目を細めた。

 ユイトはそうやって卑屈に笑う。



 「へっ………酷ェ顔だ………」





 ——————彼の瞳にはかつての様な光が消え、ただただ闇が棲んでいたから。

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