復讐31話
「………外に出たんだ………私」
もういつ振りなのだろうか。
そんあな事を考えてみるが、ユイの頭に答えが浮かぶことがない。
記憶はとうの昔に置き去った。
残っている記憶は忌まわしい記憶のみ。
「うん、せっかく自由になったんだ。今度こそ………」
「どした?」
「ひゃうっ!? び、ビックリした………脅かさないでよね!」
「声かけただけじゃないか。怒るほどのことでもないだろう」
ユイトは扉を閉じながらそう言った。
そして、ある事に気がつく。
「………あ?」
「どうしたの?」
「いや、何か違和感があるような………何かが変わった………?」
「どうせ気のせいでしょ。第一扉の模様がポンポン変わるなんて事する?」
「そう言われればそれまでなんだが………まぁいいか」
そして、ユイトが気がつくことはなかった。
扉は変わっている。
何もない円が、髑髏の側に移動していた。
去っていったユイトにはその意味を知る由も無い。
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「ユイ」
「うん?」
「少し、無神経かも知れないが、聞きたいことがある」
ユイトはがそう尋ねると、ユイの顔が一瞬曇ったが、最終的に了承した。
「うん、良いわ。聞いて」
「じゃあ、聞く。ここでお前を拷問していたと言うのは一体誰だ?」
ゾワリ
「っ………!?」
えも言われぬ感覚をユイトは感じた。
今まで感じたことのない感覚に戸惑いを覚える。
何だこれは。
殺気………ではない。
一体何処から………
「………………わからない」
ユイは、ユイトの質問に答えていた。
それを聞いてようやく意識が戻る。
「あ、え? ………わからない?」
「うん、悪いけど私にも誰なのかわからないわ。アイツらの関係者なのは間違い無いけど………」
ここで言うアイツらとは、王宮の人間たち………つまり、ユイを裏切った連中だ。
「確かに改めて考えると気になるわ。わざわざこんなところに来るのも不可解だし、そもそもなんで城の底じゃないのって話よね………あっ」
ユイは何かに気付いたような声を出した。
「どうした?」
「いや、一つだけ、こんな事を言っていたのを………いや、言われたのを思い出したわ。でもこれは、アイツらの事じゃなくて私の事っぽい」
「何を言われたんだ?」
「たしか………『お前は“顔のない者”。哀れな予備パーツ。悲劇の代替品。故にお前はこんな目に遭う。呪うならば、己が背負わされた業を呪うが良い』って」
アンノウン………またか?
再び耳にしたその単語。
深い意味はわからない。
だが、それがユイの事を指していることは確実だ。
「………私は一体………なんなんだろう」




