復讐29話
「………」
「………」
静寂が訪れた。
初めはこんな事を言うつもりは無かった。
だが、彼女を見ているうちに、ユイトはだんだん放ってはおけなくなっていた。
もう、彼女以外にあてがない。
彼女が死ねば、ユイトは本当に孤独になってしまう。
あれを味わったユイトは、何よりも孤独を恐れた。
見渡しても、敵しかいないことへの絶望。
何故こうなったと運命を呪い、ただただ後悔する。
何もしていない筈の自分がこんな目にあうのは割に合わない。
だっておかしいじゃないか。
救ったのに、裏切られた。
守っていたのに、刃を向けられた。
こんな不条理は絶対に許せない。
俺は、もう嫌なんだ。
誤魔化しでもいい。
同じ絶望を知っている仲間が欲しい。
傷の舐め合いだと揶揄されても一向に構わない。
実際やっているのは、そう言うことだ。
「ぷっ………あははははっ!!!」
「ん?」
「いや、そんなキザなセリフ言う奴いるんだって思ったから………ふふ」
「チッ………ほっとけ」
少女は笑っていた。
そして、泣いていた。
「………本当に、見つけてくれるの?」
「ああ」
「それでも私が死にたいって言ったら?」
「そん時は俺も死んでやる。ただし、復讐だけは絶対果たす。何があろうとも俺は、あいつらに地獄を見せないと死んでも死にきれん。全員地獄に叩き落として、それでもお前が死にたいっつったら一緒に地獄に行こうぜ」
ユイトは、久々に人に笑顔を向けた。
「………わかったわ。復讐に手を貸す。私はアンタに全部を捧げる。他人なんて気にしない。一切の情を切り落として、アンタにあげる」
「俺も、お前が生きるために全部くれてやる。お前以外は全員敵だ。全員殺す。ガキだろうが、老いぼれだろうが関係ない。この国の人間は俺を裏切った。それに従った人間には一切の容赦なく鉄槌を下す」
ユイトには少女だけ。
少女にはユイトだけ。
2人が信じられるものはこの世に2つ。
お互いのみだ。
「名前、なんて呼べばいい?」
「何でもいいわよ。もう、前の名前なんて忘れてしまったの。だから、アンタが付けて」
ユイトは少し考えた。
名前なんて今までろくに付けたことが無かった。
だから、自分の名前からとった名前をつけた。
「じゃあ、唯だ」
「ユイ?」
「俺の祖国の字で“唯”って名前にたった一つのって意味が込められている。俺の名前は結ぶって意味の“結”だ。俺達にとって自分と結ばれている絆は、唯一お互いのみ。だからお前には唯って文字をつけさせてもらった。ダメか?」
「ううん、いい。それで良い」
「じゃあ、よろしくな。ユイ」
「うん、よろしく。ユイト」
ユイトとユイは小指を結び、ここに誓った。
決して裏切らない事。
国への情を全て捨て去る事。
そして、全てに復讐をする事。
「「ここから、復讐の始まりだ」」




