復讐27話
「1人………独り、か」
少女は誰もいなくなった部屋でそう呟いた。
小さな声で呟いたつもりだったが、それは木霊して部屋中に響いた。
「自分が思ってるよりは寂しいって感じちゃってるのかなぁ」
少女は独り。
裏切られ、仲間はいない。
居たとしてももうとっくに忘れられただろう。
それほど長い年月ここに居た。
あまりに長い間虐げられた。
自分というものを無くしてしまうほど長い年月だ。
名前………私は、何て呼ばれてたっけ?
頭の中はぐちゃぐちゃになっていた。
記憶に所々欠落がみられる。
でも、
あれだけは、覚えてる。
裏切られたことだけは、はっきり覚えてる………
虚ろだった表情に微かに怒りの色が見えた。
皮肉なことに、少女を少女たらしめる記憶は、もうこれ以外に残っては居なかったのだ。
復讐………でも一体誰が生き残ってるの?
私が復讐すべき相手は、残ってるのかな………?
少女が生きているのは、あるもののUSで不老の呪いをかけられたからだ。
あの子もあの子もあの子も………もう、いない。
そして少女はこう呟いた。
「だったら、もう………生きている必要もないのかな………」
返事はない。
ただ声が響くだけだった。
それでも少女は続ける。
「何で生きてたんだろう。何で我慢してたんだろう。こうなるってことくらい頭に何処かでわかっていたはずなのに………」
ここにいる間、なんども死のうと思った。
でも、死ぬことはなかった。
こうなることはわかっていた。
でも、彼女はそれと同時に、頭の何処かで死にたくないとも思っていた。
生きていたい。
人間誰しも願うことだ。
本当に死にたいと思っている人間は、わざわざに口に出して死にたい何て言わないだろう。
「ふふ………誰に言ってんのって感じだよね………あーあ、引き止めたらよかったかな」
少女はユイトの事を思い出していた。
会ったばかりで何も分からない。
はっきり言って完全に信用したわけではなかった。
………………いや、それは嘘だ。
本当は、何も疑っていなかった。
なぜなら、ユイトの瞳に宿っている闇は、紛れもなく、自分の背負っている闇と同じものだったからだ。
「名前………聞いておけばよかったな」
「——————ユイトだ」
少女は体を一瞬硬直させた。
そして、ゆっくりと上を見上げた。




