表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/40

復讐27話


 「1人………独り、か」



 少女は誰もいなくなった部屋でそう呟いた。

 小さな声で呟いたつもりだったが、それは木霊して部屋中に響いた。



 「自分が思ってるよりは寂しいって感じちゃってるのかなぁ」



 少女は独り。

 裏切られ、仲間はいない。

 居たとしてももうとっくに忘れられただろう。

 それほど長い年月ここに居た。

 あまりに長い間虐げられた。

 自分というものを無くしてしまうほど長い年月だ。

 


 名前………私は、何て呼ばれてたっけ?



 頭の中はぐちゃぐちゃになっていた。

 記憶に所々欠落がみられる。

 でも、



 あれだけは、覚えてる。

 裏切られたことだけは、はっきり覚えてる………



 虚ろだった表情に微かに怒りの色が見えた。

 皮肉なことに、少女を少女たらしめる記憶は、もうこれ以外に残っては居なかったのだ。



 復讐………でも一体誰が生き残ってるの?

 私が復讐すべき相手は、残ってるのかな………?



 少女が生きているのは、あるもののUSで不老の呪いをかけられたからだ。



 あの子もあの子もあの子も………もう、いない。



 そして少女はこう呟いた。



 「だったら、もう………生きている必要もないのかな………」




 返事はない。

 ただ声が響くだけだった。


 それでも少女は続ける。



 「何で生きてたんだろう。何で我慢してたんだろう。こうなるってことくらい頭に何処かでわかっていたはずなのに………」



 ここにいる間、なんども死のうと思った。

 でも、死ぬことはなかった。


 こうなることはわかっていた。

 でも、彼女はそれと同時に、頭の何処かで死にたくないとも思っていた。


 生きていたい。

 人間誰しも願うことだ。

 本当に死にたいと思っている人間は、わざわざに口に出して死にたい何て言わないだろう。



 「ふふ………誰に言ってんのって感じだよね………あーあ、引き止めたらよかったかな」


 

 少女はユイトの事を思い出していた。

 会ったばかりで何も分からない。

 はっきり言って完全に信用したわけではなかった。

 ………………いや、それは嘘だ。

 本当は、何も疑っていなかった。

 なぜなら、ユイトの瞳に宿っている闇は、紛れもなく、自分の背負っている闇と同じものだったからだ。



 「名前………聞いておけばよかったな」


 「——————ユイトだ」



 少女は体を一瞬硬直させた。

 そして、ゆっくりと上を見上げた。


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ