復讐25話
「………っっ………! ここ………は………?」
「やっと起きたの?」
ユイトが気がつくと、少女がユイトを見下ろす形でそこにいた。
「みおろ、して、る?」
「何目をパチクリさせてんのよ………ひ、膝枕してるからに決まってるじゃない」
少女は恥ずかしそうにそう言った。
「き、ずは………?」
「アンタの懐に入っている薬草を借りたわ。まともに話せるくらいには回復できたわね」
「………そ、か………俺の、ぶん、は?」
「どうも、アンタのステータスじゃ、薬草なんか使っても意味がないっぽいのよ。物凄く強いのね」
ユイトはしばらく考えて、回復系のAUSが使えないか考えてみる。
「………毒………アイツ、はそっち、のUS………だった、な」
あの日城に来ていたやつの中に、状態異常を引き起こすUS使いがいる。
レレンド・ワーカーと言う男だ。
US《侵蝕者》
触れた者のHPをどんどん奪っていくと言うUSだ。
かつてパーティを組んだ事もあり、その時は和気藹々と話していた記憶がある。
気さくな人だった。
巨大モンスター討伐に一緒に出向いて活躍してたと思う。
しかし、あの“声”を聞いた時に混ざっていたやつの言葉は、
“あんなバケモン、二度と来ないで欲しいモンだね”
“気持ち悪い”
と言ったものだった。
「ど、どうしたの? 顔怖いわよ?」
「いや、何でもない。胸糞悪いものを思い出しただけだ」
ユイトは目を瞑ってAUSを発動させた。
AUS《修復者》
触れた者のHPを徐々に回復させる能力。
《侵食者》と相殺させることが出来る。
ユイトはこれで、少女の傷を癒した。
「あ………傷が少しずつ治ってる………って、アンタの方が重症なのに何で——————」
ユイトは唇に指をあてるジェスチャーをした。
「いい、から………黙、って、ろ」
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しばらく回復を続けて、漸く話せる程度になったユイトは、改めて少女と会話をした。
「ふぅっ………話せる程度には、回復したな。一先ず礼を言う。ありがとう」
「べっ、別に大したことしてないしっ………」
少女は仄かに顔を赤らめてそっぽを向く。
「いや、大したことだろ。虚勢を張ってまで俺を元気づけようとしてくれてるんだからな。無理、してるだろ?」
そう、少女の表情には、明らかに影が差していた。
「………虚勢でも、元気は元気よ………そうでもしないと私………っ」
「………そっか。なら何も言わんよ」
「………………うん」
ユイトはそれ以上何も聞かなかった。




